「ボ、ボ、ボクらは少年探偵団・ヤングタイマー探訪記第2部」のはじまりです。1980年代、1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。今回は、探偵の生まれ年である1989年に登場した日本車を取材。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)とGQ JAPAN編集部のイナガキ(少年I)のふたり。取り上げるのは、今はなき「ユーノス」ブランドのオープンカー「ロードスター」(初代)だ。
参考にしたのは日本の伝統芸能や古典美術
29歳、フェラーリを買う──Vol.117 自動車保険の見直し
少年O 今日思い立つ旅衣。今日思い立つ旅衣帰洛をいつと定めん。
少年I 今日は、ずいぶん華やかな衣裳を着ての登場ですね。立烏帽子に……やや、お面かぶっているではないですか!
【前話】スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)
少年O これは小面(こおもて)という能の面(おもて)であります。「船弁慶」の静御前のマネ。
探偵 なぜそんな格好を?
少年O 今日とりあげるユーノス・ロードスター(1989年発表)は、日本の伝統芸能や古典美術からディテールのモチーフを採用して構成されたことでも話題になったのです。フロント・マスクは、まさにこの“小面”だというんです。
少年I いまのボルボが北欧神話の雷神「トール」をモチーフに使っているのとちょっと似ていますね。トールが持つ、柄の短いハンマー「ミョルニル」が、ヘッドランプに組み込んだポジションランプのデザインモチーフですから。
探偵 なるほど。自動車のデザインって、意外に文化的な“コンテクスト”(背景となる文脈)があるんですね。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ
マセラティ・ギブリ(2代目)
少年I そういえば、同時期にデビューした日産「プレセア」(1990年発表)も、“和”を意識したデザインが特徴でした。桐島かれんさんを起用した広告では、菱川師宣作の『見返り美人図』をモチーフにしていたのも印象的でした。
あ、おなじ日産の「インフィニティQ45」では、インパネまわりの加飾に漆塗りも選べましたね。
少年O ボディ側面のラインは、やはり能の面「若女」を横から見たところなんだそうです。シート表面は畳表の模様、リアコンビネーションランプは江戸時代の両替商が使った分銅がモチーフ、と、当時発表されていました。アウタードアハンドルにしても、茶室のくぐり戸から入る際の緊張感に通じるものをねらったんだとか。
少年I むずかしすぎて、頭のなかの砥石が暴れる……。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
メルセデス・ベンツGクラス(2代目)
アルファロメオ・スパイダー(初代)
軽い、楽しい、爽快!
探偵 それはそれとして、今回の赤色の初代ロードスター、ずいぶんいい状態で保管されていますね。走行距離も2万kmちょっとですし。
少年I おほん。このクルマには”物語”があります。ある女性が還暦のお祝いに、と、購入されてから、ずっと大切に乗ってきたのですが、90歳におなりになってさすがに乗り続けるのはちょっと……と 、マツダに寄贈してくれたんだそうです。それをマツダがレストアしたんです。出来るかぎりオリジナルを保ちたいと、ETC車載器も付いていません。それをお借りしてきました。
少年O 偶然、埋もれていた、いいものと出合う、って世の中の“あるある”ですからね。手に入れた古家のふすまの下張りから名作が見つかったりします。
少年I ???
少年O おっと『四畳半襖の下張』は、少年Iにはまだ早いかな。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
日産PAO
スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)
探偵 話を進めましょう。ユーノス・ロードスターは、デビューした1989年に生まれた私にとって、今でも新鮮な驚きをくれるクルマです。“操る楽しさ”を存分に味わえました。マツダの開発陣が大事にしていたクルマづくりのコンセプトである“手の内感”が、実際に乗ると、「なるほどこういうことか」と、よくわかります。
少年I こう見えて、おなじく1989年生まれの私も同様の感想です。2015年登場の現行ロードスター(コードネームND)も十分軽い(990kg)けれど、初代(同NA)は940kgと、もっと軽くて楽しいんです。
探偵 軽いし、幌を下げれば開放的だし、とにかく運転していて楽しいですね。さっきもずっとオープンで運転しましたが、爽快でした。
少年O 当時のことをひもとくと、日本車をはじめ、世界中でクルマが、大排気量化かつ大パワー化していて、マルチバルブは当たり前、ツインスクロールターボチャージャーとか電子制御サスペンションとか4輪操舵システム(4WS)とか、さまざまな先進技術を盛り込むのがトレンドだったわけですよ。そこにいきなり、マツダがとにかくシンプルなロードスターを発表したんですから。みんな驚きました。
少年I 基本プラットフォームはロードスター専用につくったそうですが、これはマツダの“賭け”だったそうですよ。結果的に、その賭けは見事にアタリ、大ヒットしました。
少年O 青天の霹靂、と、誰よりも強く思ったのは、世界中の自動車メーカーだったでしょうね。“むずかしいこと、しなくてもいいんだ”と。といっても、それがむずかしいんですが。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ
マセラティ・ギブリ(2代目)
探偵 初代ロードスターといえば、リトラクタブル・ヘッドライトの“目玉”が可愛いですよね。オーナー同士がすれ違うと、この目玉を開閉し、挨拶するというのを聴きました。
少年I “ウインク”もできるそうですよ。何度も開閉操作を繰り返すと、左右の開閉タイミングがずれるそうです。
少年O スタイリングは、さきに「小面」うんぬんという話をしましたが、当時は、英国のライトウェイトスポーツのエピゴーネンみたいに言われました。でも、アストンマーティン「DB4GTザガート」からアルファロメオ「ジュニアZ」まで、大小スポーツカーを数多くデザインしてきたイタリア人のエルコーレ・スパダ氏が、フランクフルトの自動車ショーでこの、あちらの名前では「MX-5」とか「ミアータ」とか呼ばれた初代ロードスターを見たとき、「いいねぇ。こういうデザインもアリですよ」と言ったというエピソードを聴き、マツダはすごいもの作ったんだと、あらためて思いました。
ロードスター誕生の背景
探偵 なぜ、こんなにユニークなコンセプトを持つロードスターが誕生したのでしょうか?
少年O 下からの提案型のプロジェクトだったと聞いたことがあります。日・欧・米のマツダのデザインスタジオが競うように、小型ロードスターの開発にしのぎを削ったんですよね。それも、自動車好きにとっては夢のような話です。クルマって、1990年前後から開発にめちゃくちゃコストがかかり“1台でも販売不振車を作ったら会社がつぶれる”って言われるようになりました。でも、ロードスターは、「オレたちはこんなクルマが欲しい!」という、作り手の熱い気持ちから生まれた人間くさいクルマってとこが、いい時代のシンボルともいえます。
少年I その熱い思い入れもいささかいきすぎていて、マツダの開発陣は、フロントのナンバープレートについても、自動車の審査を担当する陸運局(運輸支局)とやりあったとか。作ったかたたちは、フロントの真ん中に日本のあの、うすらデカいナンバープレートをぶら下げたくなかった、と。米国では州によるけれど、フロントにナンバープレートつけなくてもいいし、欧州も当時、フロントは小さかったですし。日本の規格はデザイナー泣かせですよ。少なくとも橫にずらしたかったけれど、結局通らなかったそうです。
少年O いまだとBMWの新しい4シリーズクーペとかもそうですね。フロントのナンバープレートが新しいキドニーグリルの意匠を殺している。でもたとえば北米ではデザイナーの意図どおりで乗れる。日本って規制が変わらないまま、なんだか世界に取り残されている感があります。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
アルファロメオ・スパイダー(初代)
日産PAO
スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)
伝説のM2
探偵 そういえばさっきふたりが話していた「M2(エムツー)」とはなんのことですか?
少年I マツダが1991年に東京・世田谷区の環状八号線ぞいに作った「M2(エムツー)」ですね。建物は現存していますよ。
少年O 新古典主義とか当時言われた建築ですね。設計は隈研吾さんの、ひょっとしたら黒歴史かも。いや、私は好きですが。コリント式の列柱をモチーフにした建物。なんだかいきおいがあっていいじゃないですか。
少年I いまはセレモニーホール(斎場)になっていますね。
少年O 当時、M2では、顧客のためにワンオフのクルマまで作っちゃおうという計画でした。あるいは、スペシャルにチューニングした限定車を開発して販売するとか。ロードスターをベースにしたモデルとしては「M2 1001」「M2 1002」そして「M2 1028」といった軽量化を主眼に開発したものがあり、限定で販売されました。安くはないけれど、あっというまに売り切れたとか。1028なんか10点ロールケージでしたよね。こういうやりかたも、継続……は、していないので、いま復活させてもらいたいものです。クルマ好きとしては、マツダがロードスター以降やってきたことは、どれもハートに刺さるんです。
少年I 何処までも御供とこそ思いしに。
探偵 また静御前ですか。でもたしかに、そのとおりですね。静御前は義経に、ファンはメーカーに、いつまでも、ついていきたいと思うものです。それを裏切らないでいてくれるメーカーこそ、ほんとうのファン思いですよね。
少年I ですよ。では、みなさん、次回をお楽しみに。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
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【プロフィール】
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)
1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。
<出演情報>
冬木克太役で出演した終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(NHK総合/2021年8月13日放送)に、未公開シーン14分を追加した拡大版(89分)が2021年9月4日(土)夜10:30~11:59にBSプレミアム/BS4Kで放送。2021年10月スタートの土曜ナイトドラマ『言霊荘』(テレビ朝日)に中目零至役で出演。まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア・松本明男 メイク・中村了太
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