2008年、BMW1シリーズは5ドアハッチバックに、2ドアクーペ、カブリオレをラインアップに加え、充実したバリエーションを持つモデルとなっていた。エンジンは直列4気筒1.6Lと2L、直列6気筒3Lと3L直噴ツインターボの4種類、トランスミッションも6速ATと6速MTを揃えていた。BMWが1シリーズをいかに重要なモデルと位置づけていたかうかがえるが、それぞれのモデルにどのような持ち味があったのか。個々の性格と魅力を検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)
3種類のボディと4種類のエンジンをラインアップ
このところ、BMWのニューモデル攻勢には目を見張るものがある。やはり年間180万台を目指すメーカーともなると、同じ車種を数多く売るのではなく、多くの車種を用意しなくてはダメだということだろう。さらに台数を稼ぐには小さいクルマが有利ということで、1シリーズのボディバリエーション、エンジンバリエーションが豊富になった。
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現在、日本で購入できる1シリーズを見てみよう。ボディは5ドアハッチバック、2ドアクーペ、カブリオレの3種類。エンジンは、直列4気筒1.6L、直列4気筒2L、直列6気筒3L、直列6気筒3L直噴パラレルツインターボの4種類。基本は6速ATだが、3Lモデルには6速MTも用意される。
5ドアハッチバックは116i、120i、130i Mスポーツ。すべて6速ATとなるが、130iでは6速MTも選択できるから4種類だ。クーペは、パラレルツインターボエンジンを搭載する135iクーペ Mスポーツ。6速MTと6速ATの2種類から選択できる。カブリオレは、120iカブリオレの6速ATのみである。
これらに、MスポーツパッケージやiDriveナビゲーションパッケージ(ともに130i Mスポーツ/135iクーペ Mスポーツには標準装備)などのメーカーオプションを加えると、選択肢はさらに増えるが、ボディ、エンジン、トランスミッションから選ぶ基本は7種類である。
今回、この企画のために揃えたのは116i、120i、130i Mスポーツ、135iクーペ Mスポーツ、120iカブリオレという5モデルだ。全ボディタイプと全エンジン、2種類のトランスミッションが揃っている。これから、それぞれの特徴と持ち味を引き出してみよう。
主として異なるのは装備、116iと120iの特質
5ドアハッチバックには3種類のエンジンがあるが、この中からどれを選べばいいのだろうか。
もちろん、基本に価格という問題があるが、最近利用者が急増している残価設定型のバリューローンを使うと、何とかなってしまうのも事実。116iと120iの58万円の車両価格の差が、月々の支払いだと数千円の違いとなれば、これは悩むところだろう。
116iと120iは、まずエンジンの差である。116iのエンジンは小さいから走らないと思っている人が多いようだが、実は市街地なら116iでも十分に元気よく走ることができる。ボクはアウトバーンで、ウインタータイヤを履いた116i(6速MT)で200km/hオーバーで巡航したことがある。加速には時間がかかるが、ストレスなく元気よく走れた。
ただし人がたくさん乗る機会が多いとか、ハイスピードクルージングが多いのなら、120iの方がいいだろう。基本的にはどのスピード域を使いたいのかによって決めればいい。現在の日本の高速道路を、ちょっと速い流れに乗って走る程度なら、116iでも問題ないと思う。
もうひとつ選ぶ要素は、装備品である。120iでは標準装備になるバイキセノンヘッドライト、レインセンサー(オートワイパー)/オートライトシステム、ライトパッケージ、電動シートなどが116iには装備されない(ただしオプションで選択可能)。装備の違いは他にもあり、価格の差がエンジンの差だけではないことを感じる。しかし夜間のドライブがメインではなく、ひとりで乗ることが多いのならば116iで十分だと思う。
もし夫婦二人で運転するなら、電動シートが標準になる120iをお奨めする。それはリモートコントロールキーを有効に使えるからだ。BMWのリモートコントロールキーにはキーメモリーが組み込まれている。夫婦で120iを使うなら奥さんは奥さん用、旦那さんは旦那さん用のリモートコントロールキーを使う。奥さんのキーでドアを開けた場合には、奥さんが使っていたシートポジション、ミラーの位置、エアコン、オーディオの設定になる。
iDriveのナビゲーションパッケージをメーカーオプションで付けたのなら、ナビの設定まで奥さん用になる。もちろん旦那さんが旦那さん用のキーで開けたなら、旦那さんのポジションになる、というものだ。
これは116iにも付いている機能ではあるが、電動シートだとそのありがたみがより大きい。具体的にはドライブの途中で運転を交代するときにも、キーを挿し換えることでそれぞれのシートポジションが呼び出される。こんな場面でも、電動シートのメリットが発揮されるのだ。
しかし、BMWの標準装備品はかなりレベルが高く独自のものだから、116iでも必要十分ではある。
一般的にはESCと呼ぼうとしている横滑り防止装置のDSC(ダイナミックスタビリティコントロール)、深い新雪や泥濘地から脱出するときに使うDTC(ダイナミックトラクションコントロール)、定員5人分のヘッドレスト&3点式シートベルト、燃費計測やクルマの走行情報を呼び出して見ることができるオンボードコンピュータ、リモートコントロールキーでクルマの外から操作する窓ガラスの開け閉め、パンクしてもしばらく走れるランフラットタイヤなどは116iにも標準装備になっている。
バネ下の軽さから、乗り心地が良いのは116iだ。195/55R16 87Hという116iに対して、120iは205/55R16 91Vという、幅広でスピードレンジが高いタイヤを履いている。このタイヤサイズを比較しただけでも、路面の凹凸に対してタイヤが振動を吸収する能力も116iの方が高いのがわかる。
豊潤な力感を求めるなら130iか135iクーペ
次に130i Mスポーツに話をそう。最大トルクで比べてみると116iの150Nm、120iの200Nm、そして130iは315Nmで、なんと116iの2倍以上の力を発揮する。これでもわかるように、130iのパワーとトルクは通常の使い方ではいわば過剰なものである。それを使い切れないことがわかっていても、その余裕を欲しがる人はたくさんいる。
走行中にアクセルペダルを踏み込んだときに、そのストロークが小さくても十分な加速力を感じられると嬉しいからだ。またこれは、決してアクセルペダルの踏み始めだけレスポンスをシャープにしているわけではない。ちょっと踏んだときでもグイッという加速力があるが、もっと深く踏み込んでいくと最初の反応に比例した鋭い加速が出る。これは反応がリニアだということで、アクセルペダルの踏み始めだけの瞬間芸ではないのだ。
エンジンのシリンダーブロックやヘッドカバーなどをマグネシウム合金で作った直列6気筒は、普通のV6エンジンより軽いのもメリットだ。バルブトロニックシステムの採用や、電動ウォーターポンプ採用でフリクションロスを小さくするなどの先進技術が注ぎ込まれている。
BMWの社内でも、この「N52B30A」と呼ばれる直列6気筒NAエンジンが好きだというファンが多い。それはターボエンジンに対して、アクセルペダルの反応がとても自然だからだ。またアクセルペダルを踏み込んでいったときにタイムラグはなく、その音の変化も楽しめる。吸気音がよく聞こえるし、排気音もタコメーターが要らないくらいエンジン回転数がわかる正確なサウンドを聞かせてくれるからだ。
6気筒モデルになると、タコメーターの目盛りの周囲にスリットが設けられていて、タコメーターのゼブラゾーンが下がってきて、始動直後や冬期などにはエンジンがまだ暖まっていないことを示す。つまり、エンジンの許容回転数はここまで、と知らせているのだ。冬真っ盛りの関東地方だと、ゼブラゾーンは4500rpmくらいにまで下がる。だがこの下がったゼブラゾーンまでの範囲でも、ごく普通に運転できる。つまり、通常の走りでは4500rpmまではいかない。だからエンジンが冷えていても通常通りに走れるということだ。
135iクーペの6速MTは、AT免許ではないドライバーなら誰にでも乗れるクルマだ。それはあまりにもエンジンに力があり、クラッチペダルの操作もしやすいからだ。クラッチペダルの操作はリアルタイムで動いてくれないとなかなか難しくなるが、135Iクーペのクラッチペダルはリニアな動きで扱いやすいのだ。ちなみに6速ATモデルは、やや遅れての登場となっている。
それに、ターボなのにターボらしさは微塵も感じられないエンジンに仕上がり、純粋に大排気量のNAの感じで運転できるところがいい。2002tiiの再来といわれているが、それはボディデザインだけでなく、インパクトのある速さを持っているからだろう。
この135iクーペは、クーペのボディ形状を持ちながらも、居住性も満足できるレベルだ。後席に2人が乗れ、ボクのように胴が長くてもヘッドクリアランスもレッグスペースもしっかりある。
全ラインナップ中でも独自の意義あるカブリオレ
そして、120iカブリオレだ。このモデルがBMWの全ラインアップの中でどの位置にいるのか、これはマーケティング上の説明を受けなくてもわかる気がする。6シリーズカブリオレ、3シリーズカブリオレとは別の生きる道を与えられているのだ。それは、3シリーズカブリオレが去年のモデルチェンジでメタルトップになったからだ。
6シリーズカブリオレがソフトトップだからといって、1シリーズカブリオレと競合することはないだろう。もし3シリーズカブリオレがソフトトップだったら、少しだけ小ぶりの1シリーズカブリオレに流れてしまうことも考えられる。しかし、メタルトップはメタルトップとして独自の生きる道を与えられたのだ。
BMWは、1シリーズでもエントリーモデルという位置づけではなく、BMWクオリティを備えた小さいモデルなだけである。だからキーメモリーもRESTボタンもDSCもオンボードコンピュータも標準で装備される。
今回、改めて5台の1シリーズを走らせて、ますますクオリティが高まったことを実感した。とくに135iクーペの仕上がりがよく、全体にしっとり落ち着きながらも、ガチッとしたボディ剛性による安心感が素晴らしい。それに引かれるように116iや120iの5ドアハッチバックもクオリティが上がっていることも実感させられた。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年6月号より)
BMW 116i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1750×1430mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1596cc
●最高出力:115ps/6000rpm
●最大トルク:150Nm/4300rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:297万円(2008年)
BMW 120i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1750×1430mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1390kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:156ps/6400rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:355万円(2008年)
BMW 130i Mスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1750×1415mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1450kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:265ps/6600rpm
●最大トルク:315Nm/2750rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:495万円(2008年)
BMW 135iクーペ Mスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4370×1750×1410mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1530kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:306ps/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:538万円(2008年)
BMW 120iカブリオレ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4370×1750×1410mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1530kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:156ps/6400rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:434万円(2008年)
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