ラリーアート復活 テーマは「継承」
撮影:Toshikazu Moriyama(森山俊一)
【画像】トライトンはジャンプ披露【伝説のパジェロ・ラリーカーなど「オフロード試乗会」の様子】 全43枚
富士ケ嶺オフロードコースで開催された三菱のオフロード試乗会に参加した。
新型車が用意されているわけではないが、オフロードコースでアウトランダーPHEVやデリカD:5を試乗できるらしい。
だが会場に着いてみると、スポンサーのステッカーを貼った派手なラリーカーが目に入った。
2002年にパリ・ダカール・ラリーを制したワークスカーのパジェロだ!
しかもその傍らにはこのクルマをドライブしたカリスマ、増岡浩さんがいた。そして今回、氏の口から「ラリーアート復活」という嬉しい一言が聞けたのだった。
三菱は11月21日から26日までタイ~カンボジアで開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)2022にピックアップトラックのトライトンで参戦するという。
そのチーム名「チーム三菱ラリーアート」からもわかるとおり、ラリーアートという三菱の伝統的な名称が7年ぶりの復活を果たす。
増岡浩さんはチームの総監督を務めるという。
「かつてのラリーアートは会社でしたが、今度は三菱の中のいちブランドのようなかたちになります。ラリー参戦やドレスアップパーツの開発からはじめて、ゆくゆくはラリーのノウハウを盛り込んだ市販車のリリースなどスケールの大きなことに繋げていきたいです」と増岡さん。
「チーム内には経験豊富なベテランと若手がバランスよく在籍して、技術の継承がおこなわれています。いいクルマは人が作るもの。だからわれわれは人を育てなくてはなりません」
クイックに走る「ラリーカー」の原石
この日最初のメニューはトライトンの試験車の同乗試乗だった。
「このクルマは見た目はわりときれいですが、北海道のテストコースを徹底的に走り込んで耐久性を確認したクルマです。今日ドライバーを務めるシステム実験部の小出一登とわたしで20分ごとに交代して600kmを走りました」と増岡さん。
ラリーカーの試験車といってもキャビンは普通に5人乗り仕様でロールケージもなし。小出さんいわく、デフとショックアブソーバーが強化品に交換されているだけだという。
小出さんの容赦ないドライビングでデコボコ道の急こう配を駆け上がっていくトライトン。コースを2周したシメとして大ジャンプまで披露してくれた。
驚くべきはラダーフレーム+ボディという構造であるにもかかわらず、大きな入力があってもボディがミシリともいわないこと。
ジャンプの着地でも一切バタつかない。クルマ全体が想像以上に引き締まった印象で、ハンドリングもクイックそう。
「ラダーフレーム車ですけど、かなり機敏に曲がるし、しっかりしているでしょ? それが三菱のクルマなんですよ!」と自信ありげな増岡さん。
「ウチは市販車のみならずモータースポーツ参戦車もすべて自分たちで開発しています。まあ規模が小さいからできるわけですけどね」
「だからモータースポーツと市販車の垣根が低いんだと思います(笑)。今回のAXCRはまずは完走すること。2台はインドとタイのドライバーがドライブします。楽しみですね」
三菱AWDの真骨頂 見た目以上にタフ
トライトンの同乗試乗の後はアウトランダーPHEVとデリカD:5をドライブした。
コースはトライトンが駆け上がった急こう配ではないにせよ、この日の富士ケ嶺は雨が降り続いていてぬかるんでいるので簡単ではなさそうだ。
アウトランダーPHEVはでこぼこのオフロードをゆっくりと走っている間、エンジンは停止したまま、前後のモーターで走っている。
エンジンよりもスロットルに対するツキがリニアなので断然コントロールが楽。
片輪が浮いてしまうようなシチュエーションでもスリップを感じさせず、滑らかに走破できた。
さきほど増岡さんが言っていた「お客さんがどこへでも安心してアシを伸ばせるクルマ。それが理想的だと思うんです」という言葉が、まさに当てはまると感じた。
一方デリカD:5は、いかつい顔は新鮮だが、クルマ全体としては決して新しいという印象はない。
だがそのワンボックス的なボディ形状からは想像もできないほどのスタビリティの高さで、オフロードコースを進んでいく。
エンジンは2.2L直4ディーゼルターボなのでアウトランダーPHEVのツインモーターほどにリニアな感じはしないが、8速ATや電子制御のAWDシステムと相まって、ぬかるんだ急こう配でもタイヤが空転しなかった!
普段づかいではなかなか経験できないようなタフなコンディションだが、タイヤに頼っていないAWD技術はさすが三菱だと感心させられた。
ラリーアート復活を含めた、新たな三菱のアクションに期待せずにはいられない。
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