この記事をまとめると
■最新型11代目ホンダ・アコードに中谷明彦さんが試乗
2024年日本導入決定の「ホンダ・アコード」を実車で確認! いまわかっている情報全部みせ
■新型アコードはステアリング操舵フィールが軽くて応答性にも優れた味付けとなっている
■アクセル踏み込みに対するエンジン回転の高まりがリニアになった
日本仕様の新型アコードはタイから輸入される
生産地から「川越ベンツ」と形容された初代アコードセダン。FFミドルサイズセダンとして瞬く間に世界中で人気を博し、ホンダを代表する車種となった。
その最新型が11代目となって登場した。この新型は北米や中国、タイで生産されるもので、国内にはタイから輸入されるので「輸入車」扱いとなる。とはいえ右ハンドル仕様で装備類も国内仕様となっていて、いわれなければ国内工場で生産されたと思い込んでしまいそうだ。
先代モデルも同様にタイ生産車であり、その品質や質感、信頼性において何もネガティブな要素がないことは実証済みだ。
今回、新旧アコードをクローズドコースの「伊豆サイクルスポーツセンター」で比較試乗することができた。
まずは旧型から試す。アコードを走らせるのは久しぶりだ。エクステリアデザインはシビックとも似通っていて、近年のホンダデザインの潮流に則っている。とくに北米や中国などでは大人気のヒット車として知られている。
運転席に乗り込むと、とくに派手な演出はなく、ダッシュボード中央の液晶モニターも小型で時代を感じさせるが、実用的な機能性で過不足なく仕上げられている。e-HEVシステムを採用していて、走り出すと静かで質感の高い乗り味が印象的だ。
「アコードって、こんなにいいクルマだったんだ」と改めて認識させられたのだった。
次に新型を試す。外観の意匠はホンダデザインの流れを引き継いでいるものの、フロントまわりは大幅に変更され、新しい顔が与えられている。SUVが市場を席巻する現代において、クルマ好きなら誰でも好感をもつような優雅で先進的なデザインとなっており、セダンの存在感を高めている。
インテリアデザインも大幅に変更された。水平基調のダッシュボードデザインは現行ヴェゼルやシビックを彷彿とさせるが、質感の高い素材が採用され見栄えがよく高級感にも溢れている。
システムを起動し、センターコンソールのDボタンをプッシュすれば走り出せる。先代からプッシュボタン式のシフトセレクターが採用されており、新型にも継承されている。
走り始めてすぐに感じられたのは、ステアリング操舵フィールが軽く、応答性にも優れた味付けとなっていることだ。近年、急速にトレンドとなって採用例が増えているデュアルピニオン式パワーステアリング。アコードは先代から採用しているが、新型はより操舵フィールにこだわったセッティングが施されている。ステアリング操舵初期の応答性が高まり、シーンによってはゲインが強すぎると感じることもあったが、とくに北米で好まれる味付けとなっているようだ。
電気的CVTの緻密な制御による自然でスポーティな走行感覚
今回の新型はパワートレインの改良も大きなトピックとなっている。
基本的にはガソリンエンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステムとなっているが、内燃機関にも電動モーターにも大幅な仕様変更を行い、極めて効率が高くドライバビリティにも優れたパワートレインとなっている。
ガソリンエンジン部分は2リッター直列4気筒エンジンを直噴化し、アトキンソンサイクルで稼働させている。これに最高出力135kW、最大トルク335Nmの駆動用モーターを組み合わせ、さらに発電用ジェネレーターモーターとして120kW、68Nmのモーターをパラレルにマウントし、2モーターとして構成している。エンジンが発電専用として稼働するシリーズ方式と駆動モーターと混流しアシストし合うシリーズパラレル方式ハイブリッドドライブ、またエンジンだけで走行するエンジンドライブモードが最適制御で切り替えられる。
初めはEVモードで走りはじめ、バッテリーの充電が十分になされていれば最大3.5kmほどEVモードで走行可能だという。
バッテリー充電量が不足するとエンジンが始動し発電モードに切り替わるが、その際のエンジン振動は少なく、またその時点での走行パターンに違和感を与えないような回転数で稼働するので、ハイブリッド車特有のエンジンが過回転するような現象は見られない。
逆に、アクセル全開でフルパワーを引き出す場面でもエンジン回転数は自然に高まる印象で違和感がない。これは新開発のジェネレーターモーターが効率よく発電できること、また電気的CVTとして意図的に変速モードを演出できるようになったからだ。従来のようにエンジン回転だけが先行し、速度があとから高まってくるというようなCVT的制御が陰を潜めたため、よりスポーティな走行感覚が得られるようになったわけだ。
電気的CVTと呼ばれているが、それは一般的なベルトドライブのCVTトランスミッションを備えているわけではない。駆動モーターを電気的に操り、変速しているかのような制御としているだけで、実際には変速ギアシステムがあるわけではない。他社でも同様なシステムが多いが、クルマ好きから敬遠されがちなCVTトランスミッションをあえて名乗る必要はないのでは、と感じるところだ。
ノーマル、エコ、スポーツといったドライブモードの変更でアクセルレスポンス、トルクピックアップ特性などが変更するが、スポーツモードで全開加速するとエンジンサウンドがスピーカーから創出され、迫力ある左右ウンドとして聞こえてきた。また、エンジン回転数にも意図的にステップ比が刻まれ、さも変速しているかのような感覚を得られる。
乗り心地に関しては、路面の継ぎ目や段差通過時にハーシュネス(突き上げ)が強く感じられ、先代の上質な乗り味とは異なっていた。これが意図的な乗り味なのか、タイヤやサスペンションの変更によるものなのかは不明だが、感触としては先代の乗り味に一日の長があるように感じる。
SUVが市中に溢れ、ホンダ車のラインアップからもセダンが失われつつあるが、新型アコードはセダンの復権を果たせるのか、今後の動向を注視していきたい。
なお、新型アコードの販売目標は200台/月で、価格は544万9400円となるそうだ。
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