5月27日、静岡県の富士スピードウェイで開催されているENEOSスーパー耐久シリーズ第2戦NAPAC富士SUPER TEC 24時間レースの決勝を前に、トヨタ自動車佐藤恒治社長、マツダの次期社長に決定している毛籠勝弘取締役専務執行役員、スーパー耐久機構の桑山晴美事務局長、そしてル・マン24時間を運営するACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長が出席し、記者会見が行われた。このなかでフィヨン会長は、2026年からル・マン24時間の最高峰クラスに、水素エンジン使用車、燃料電池車の参加を認めると公式に発言した。
スーパー耐久シリーズのシーズンのハイライトでもある富士SUPER TEC 24時間レースは日本でも唯一の24時間耐久レースで、同時に、今回は液体水素を使用し世界で初めてレースに参戦するORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptのデビュー戦となる。
ACOピエール・フィヨン会長が富士で水素エンジンを積むカローラ・クロスH2コンセプトに試乗
そんな一戦に向け、ル・マン24時間を運営するACOのフィヨン会長が来日し、記者会見に姿をみせた。今季ル・マン24時間は100周年を迎えるが、そのなかでフィヨン会長はトヨタ佐藤社長、マツダ毛籠次期社長、桑山事務局長からのコメントを聞いた後、「次の未来に向けて」質問を受けた際に、こう切り出した。
「我々は今季、過去100年を振り返る壮大な計画を立てているが、同時に次の100年に向けても期待している。今回、富士24時間のなかで私の心を捉えた一台がある。それは液体水素エンジンを積んだGRカローラで、エントリーを祝福したい。我々も2018年からレースの世界に水素を導入する取り組みを行っており、24時間レースで水素クラスを導入していることを目指している」とフィヨン会長は語った。
ACOでは、『ミッションH24』という水素を活用したプロジェクトを進めてきたが、「水素システムは大きな進歩を遂げており、そのポテンシャルから燃料電池を選んだが、それは今でも正しい選択だと信じている。現在、水素内燃機関もその可能性のひとつとして提示されている」と燃料電池、水素エンジンが将来に向けた可能性として存在するとフィヨン会長は続けた。
さらに「ル・マン24時間レースのレギュレーションは、常に自由と多様性を提唱してきた。ル・マン24時間レースの水素クラスへの参戦を希望するメーカーには、燃料電池と水素内燃機関の両方の技術を公認することをここに公式に発表したい」と、今後燃料電池車、水素エンジン車の参戦を認めると世界に先駆けて富士から発表した。
■突然の発表にトヨタ自動車佐藤社長も驚き
参加は2026年から可能で、「ル・マンのトップカテゴリー=ハイパーカーに水素内燃機関車も参戦できるようにする」とフィヨン会長。これはかなりサプライズに近い発表だったようで、横で聞いていたトヨタ佐藤社長も驚いたような表情を浮かべた。
佐藤社長に確認すると「事前に水素についてのネゴシエイトは行ってきましたが、予想以上にはっきりとおっしゃったので驚きました」という。当然、期待されるのはトヨタとしての水素エンジンでの参戦だろう。
サプライズで質問を振られた佐藤社長は「ACOは水素エネルギーの可能性に対して非常に前向きにかつ実践的な取り組みをして来られていて、これまでも我々も学びとさせていただいています。これまでのコミュニケーションの中で、我々も水素に取り組んでいることはお伝えしてきましたし、水素エンジンのもっている魅力と課題を現地現物を通じて理解をしてこられています」と語った。
「今日このような発表をいただいたというのは非常に大きな意味をもつと思いますし、非常に前向きに受け止めています。今日、具体的なことを申し上げられませんが、近い将来笑顔で良い発表ができるようにしていきたいと思います」
その後もフィヨン会長は質疑応答のなかで、水素内燃機関車、燃料電池車が2026年からハイパーカークラスと「同じ舞台で争い、勝敗を決することになる」と答えている。さらに、それぞれのエネルギーに対するテクノロジーに、バランス・オブ・パフォーマンス(性能調整)を施すと語った。
さらに「ル・マンは常に自動車にとって多様なテクノロジーを試してもらえる場としてやってきた。これを100年続けてきたし、今後もそれは変わることはない。考え方として2026年から水素活用をスタートさせ、そこからどんどん幅を広げたい」とフィヨン会長。2030年にはさらにトップカテゴリーをすべて水素活用車両で争うことにするという。
「ここ富士スピードウェイにおける24時間が素晴らしいレースになることを祈っている。そして2週間後にル・マンで100周年のレースが開催され、そして9月にはまたWECがここ富士に戻ってくる。私は耐久レースにおいてもエネルギーのサステナビリティは非常に大切だと考えており、富士においてもル・マンにおいても、レースカーがいずれは100%化石燃料を使わず、再生可能エネルギーで走るということを夢見ている」
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