タフな運動性能にスポーティさをプラス
2018年のシーズンにはWRC(世界ラリー選手権)において復帰2シーズン目にしてマニュファクチャラーズタイトルを獲得。WEC(世界耐久選手権)シリーズにおいても、ル・マン24時間レースを制するなどトヨタのモータースポーツ部門GAZOO Racingの活躍は目覚ましいものがあった。2019年も年明け早々にハイラックスがダカールラリーで総合優勝を飾るというビッグニュースが飛び込んで来た。昨年ハイラックスは誕生して50周年を迎えている。ダカール優勝は願ってもないタイミングでの勝利となったわけだ。
8代目が日本で復活! あの有名映画にも登場したトヨタ・ハイラックスの歴史を振り返る
そして今回レポートするのはハイラックス誕生50周年を記念すべく設定された特別仕様車である「Z ブラックラリーエディション(以下Z BRE)」だ。ハイラックスは国内はもとより世界180カ国以上の国や地域で販売され、これまでに累計販売1870万台を記録するメガヒットのピックアップトラックだ。1968年に初代が登場し、現行モデルは2015年に発売開始(国内は2017年9月~)された8代目となる。強固なラダーフレームにダブルキャビンと最大積載量500kgを誇る荷室デッキで構成される。
素人目にはトラックにしか映らないが、Z BREでは車体各所を華飾装飾しスポーティさと堅牢さをアピールする魅力的な外観に仕上げられている。オリジナルのZをベースとしアルミホイールやフロントグリル、バンパーなどを専用のデザインとしブラック塗装で統一。同じくブラックの樹脂製オーバーフェンダーも装備され格好いい見栄えとなった。
Z BREに搭載されるのは2.4リッター直4ディーゼルターボの2GD-FTV型エンジンで、6速のスーパーECTオートマティックトランスミッションが組み合わされている。もちろん4輪駆動のパートタイム4WD方式を採用して高い走破性を確保しているのだ。
悪路走破性は申し分なしのパフォーマンスを披露
まずは悪路のテストコースとして名高い愛知県猿投市にあるオフロードコースを走行する。運転席に乗り込むとモダンなインテリアデザインに驚く。ダッシュボードやステアリングなどは、カローラスポーツのようにハイセンスでスポーティに仕上げられ、ピアノブラック調の華飾が各所にみられ華を添えている。
エンジンを始動すると、ノイズやバイブレーションが低く抑えられ室内の快適性が高い。エンジンマウントなど進化していて従前のトラック然とした印象がまったくなく、乗用車のキャビンとして普通にすごせる質感だ。
オフロード走行に備えトランスファースイッチを操作し、4WD状態で走り始める。トランスファーや4WDのHi & Loおよびリヤデフロックの3段階があり、よほどの悪路や急坂路でなければ4WDのHiで事足りる。カタログ値的には最大地上高が215ミリとなっているが、これはリヤアクスルのデフケースの一番下端の数字であり、実質的には車体最下端は272ミリもあるという。
そのため人の歩行が困難なほどの岩場やモーグル路も難なく走破できる。傾斜角が30度近くにもおよぶような急坂路の下りでは、ダウンヒルアシスト(一般的にはヒルディセントと呼ばれる)を作動させればドライバーはアクセルもブレーキも操作する必要がなく、ステアリングだけに集中して安全な速度で下りることが可能。
前後輪の1輪ずつが地面から浮き上がってしまい空転するようなシチュエーションでは、A-RTC(アクティブトラクションコントロール)が作動。通常のTC(トラクションコントロール)時よりも強めの駆動力を与えて脱出を補助してくれる。それでも足りない場合はリヤデフロックを起動することで脱出が可能になる。こうした悪路では車体やフレームに大きな応力が加わり、サスペンションやフレーム、キャビンや室内の立て付け部などがギシギシと音を発するのが常だが、Z BREはミシリとも異音を発せず静かで快適だ。
猿投のテストコースレベルは、ハイラックスにとっては日常的な路面コンディションとでも言えるかのような高い走破性を示してくれた。
次は一般道に出て舗装の良路を走らせてみる。舗装路では後輪2輪駆動状態に設定しスムースな走行を試した。
後輪こそリジットアクスルでバネ下が重く快適性確保には難しいはずだが、ハイラックスのそれは意外なほどにスムースなロードホールディングを示した。フロントサスペンションがトラックベースとしては贅沢なダブルウイッシュボーンの独立サスペンションを採用していることもあって前輪バネ下重量は普通乗用車と大差なく、強固なラダーフレームに装着されキャビンへのNVHが遮断されていることも奏功してか意外なほどの快適さが保たれているのだった。
悪路での逞しさに一般道での快適性と取り回しの良さ、そしてスタイリッシュな外観が組み合わせられたZ BREはハイラックスの50周年を飾るに相応しい魅力を身につけていることがわかった。
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