モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、1987年の全日本ツーリングカー選手権を戦ったST162型の『トヨタ・セリカ』です。
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みなさんは本ページ掲載の写真のトヨタ・セリカといえば、なにを思い浮かべるだろう。
グループA規定時代の世界ラリー選手権(WRC)においてカルロス・サインツのドライブでチャンピオンとなったマールボロカラーのラリーカーか、映画『私をスキーに連れてって』に登場した白いセリカか。
いずれにしても、この型はフルタイム4WDだったST165型のGT-FOURのイメージが強いことだろう。
だが写真のセリカは、サーキットレースを戦ったグループA仕様で、しかも4輪駆動ではないST162型のFF車だった。今回はそんな1台を紹介しよう。
ST162型がラインナップされていたST160系(4A-G搭載モデルもあった)の4代目のセリカは、1985年に市販車が登場したモデルで、全日本ツーリングカー選手権(JTC)を戦い始めたのは、市販車の発売からおよそ2年後となる1987年のことだった。
セリカをJTCへと導入したのは当時、グループCカーで競われていた全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)においてポルシェ962Cを走らせていたトラストレーシングチームだった。
トラストは2.0リッターNAエンジンの3S-GEを搭載するFFのトップグレード『GT-R』をベースにレーシングカーを製作。エンジンはチューニングによって200馬力程度にまでパワーアップしていたほか、車重も930kgにまで軽量化されていた。
そんなトラストが仕立てたセリカは、1987年のJTC第2戦西仙台ハイランド戦において『トラストFFセリカ』のエントリー名でデビューを果たす。
セリカが参戦したのは排気量1601~2500ccのマシンが対象のディビジョン2というクラスで、その時点では同クラスのライバルが少なかったこともあり、初陣にていきなりクラス優勝を達成した。
さらに、2戦目の第3戦筑波サーキットラウンドでもディビジョン2を制し、クラスチャンピオンも視野に入れていた。
しかし、第4戦のスポーツランドSUGOラウンドにおいて、同クラスにBMW M3が参入。この強力なライバルの登場によって、セリカは一気に劣勢となってしまい、上位クラスをも食う速さを見せたM3にタイトルを奪われてしまった。
セリカはデビュー戦以後、専用タイヤの開発やそのタイヤに合わせたサスペンションの導入、さらに240馬力程度まで出力を上げたエンジンも用意されていたというが、M3と対等に争えるほどのポテンシャルには至らず。結局、セリカはこの1987年の1年限りでJTCの舞台から去ることとなってしまった。
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