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【検証】大きすぎるグランエースはアルファード/ヴェルファイアの上級車種として君臨するのか?

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【検証】大きすぎるグランエースはアルファード/ヴェルファイアの上級車種として君臨するのか?

 アルファード&ヴェルファイアが君臨している上級ミニバンカテゴリーに、殴り込みをかける格好で登場したのが「グランエース」だ。そのデザイン、そのボディサイズから現在注目を集めている。

 しかし、気になるのはそのポジションだろう。上級ミニバンとして登場はしたが、トヨタにはアルファード&ヴェルファイアがいる。車体サイズだけで見れば、グランエースが大きいが、上級か否かを決めるのはその中身だ。

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 今回は、グランエースがアルファード&ヴェルファイアを超える最上級ミニバンなれるのか検証する。

文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、編集部

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■上級ミニバンに求められる強さ、存在感

上級ミニバンとして、現在不動の人気を誇るアルファード&ヴェルファイア。グランエースがその牙城に挑む

 トヨタからグランエースが登場すると「アルファード&ヴェルファイアと比べて、どちらが上級なのか?」という疑問も生じるだろう。上級ミニバンを買いたいユーザーは、選択に迷うかも知れない。

 そこでまず考えるべきは、Lサイズミニバンにおける上級の要件だ。外観のカッコよさと存在感、内装の質、車内の広さ、走行性能、乗り心地、価格まで、さまざまな要素が想定される。

 これらのうち、Lサイズミニバンで重視されやすいのは、外観の存在感だ。ミニバンの機能とは関係ないが、初代(先代)ヴェルファイアのTV・CMコピーに「偉い人間より、強い人間になりたい。その高級車は、強い。」というフレーズがあった。

 価値観やセンスのよし悪しは別にして、ヴェルファイアの販売促進には効果的なCMであった。Lサイズミニバンに「強い」雰囲気を求めるユーザーがいることは確かだろう。

 そのためか、初代ヴェルファイアのCMで使われた車両のボディカラーは、深みのあるボルドーマイカ(紫色)であった。第46回東京モーターショーに出展されたグランエースもブラックで、両車とも強いというか、怖い雰囲気を感じさせる。

■顔の強さはアルファード&ヴェルファイア、体格の威圧感はグランエース

 グランエースと現行アルファード&ヴェルファイアのフロントマスクを比べると、純粋なデザインについては後者の存在感が高い。強さを強調するため、何度も変更を加えてきたからだ。

 2010年代に入ると、ライバル車のエルグランドとオデッセイの売れ行きが伸び悩み、Lサイズミニバンはアルファード&ヴェルファイアの天下になった。

 そうなると姉妹車同士で比べられ、先代型の時点では、アルファードのフロントマスクはヴェルファイアに比べてインパクトが弱く販売も低調だと指摘された。そこでアルファードは、現行型で仮面のようなフロントマスクを採用して、インパクトを強めた。

 それでも前期型の登録台数はヴェルファイアが多かったが、2017年12月のマイナーチェンジ後は逆転している。アルファードの顔立ちがさらに派手になったからだ。

2017年12月のマイナーチェンジでフェイスリフトを果たしたアルファード。この変更が姉妹車の勢力図を変えた

 販売店の数は、アルファードを扱うトヨペット店が全国に1000店舗、ヴェルファイアのネッツトヨタ店は1600店舗と差がある。アルファードは販売網で不利なのに、一部を手直しするマイナーチェンジで勝敗を一変させたのだ。Lサイズミニバンにとって、強いと感じさせる顔立ちが、いかに大切かを物語っている。

 このような経過を経たアルファード&ヴェルファイアの顔立ちは、いわば筋金入りで含蓄もあるから、デザインを比べるとグランエースよりもインパクトが強い。

 ただしボディはグランエースが大きい。フロントマスクに影響を与える全幅はグランエースが120mm広く、全高も40mm高い。しかもグランエースは後輪駆動で着座位置も高いから、ボンネットの位置が少し持ち上がり、フロントマスクは上下方向の厚みもタップリしている。顔立ちはアルファード&ヴェルファイアに比べて少し大人しいが、全長も350mm長いから、体格で圧倒するのだ。

 嫌な例え話になるが、グランエースとアルファード&ヴェルファイアがすれ違いのできない狭い道で鉢合わせした時、引き下がって道を譲るのは後者になるだろう。

 「そんなことはどーでもいい」と思う読者諸兄も多いだろうが、アルファードとヴェルファイアの売れ行きがマイナーチェンジを境に逆転したことを考えると、Lサイズミニバンを買う一部の人達には大切なことのようだ。

このデザインと、体格の大きさからくる威圧感はかなり強い

■グランエース6人乗りは、最上級になれる実力ありだが、使い方次第

 そしてグランエースが実際に発売されると、ディーラーオプションのモデリスタなどに、さらに派手なグリルやLED装飾が用意されるだろう。怖い感じに化粧することはいくらでも可能だから、Lサイズミニバンの外観を重視するユーザーにとって、グランエースはアルファード&ヴェルファイアの上級車種になり得る。

 またグランエースの6人乗りは、2/3列目のシートがアルファード&ヴェルファイアのエグゼクティブパワーシートに準じた豪華な造りになる。前席も相応に快適だから、6名で乗車した時に全員が満足できる。

グランエース(6人乗り)の室内。全席、エグゼクティブパワーシートに準じた豪華な造りで座り心地は抜群だ

 その点でアルファード&ヴェルファイアの3列目は、左右に折り畳める方式だから、1/2列目に比べて造りが簡素だ。床と座面の間隔が不足して足を前方へ投げ出す姿勢になり、座面のサポート性もよくない。

 アームレストもサイズが小さく、内側だけに装着される。国産ミニバンの3列目では快適な部類に入るが、グランエースの6人乗りに比べると大幅に見劣りする。

アルファード&ヴェルファイア(6人乗り)。グランエースに比べると、3列目の造りは見劣りしてしまう

 従って5~6名で乗車して、長距離を移動する機会の多いユーザーにとって、グランエースはアルファード&ヴェルファイアよりも上級だ。

 逆に4名で乗車して、自転車のような大きな荷物を積みたい場合は、グランエースは上級とはいえない。6人乗りの3列目は、エグゼクティブパワーシートと同様で、格納して荷室に変更できないためだ。グランエースの積載性は大幅に下がる。

 同じグランエースでも、4列シートの8人乗りなら4列目の座面を持ち上げて前方へ寄せられるが、このタイプはマイクロバス的な仕様だから各シートの足元空間が狭い。ビジネス向けで一般ユーザーには不向きだ。従って4名以内で乗車する用途では、グランエースはムダが生じて荷室の使い勝手も悪い。

グランエース(8人乗り)は6人乗りに比べて、前後のスペースがかなり狭くなる。4列目シートは造りも簡素だ

 このほか自宅周辺の道路や車庫が狭い、ハイブリッドが欲しい(グランエースのエンジンはクリーンディーゼルターボのみ)といったニーズにも、グランエースは対応できない。

 従ってグランエースの購買層は限られるが、そのために上級と受け取られる効果も生じるだろう。アルファード&ヴェルファイアは人気車だから、街中で頻繁に見かけるが、グランエースは大量に売られるクルマではなく一種の希少性も伴う。

 グランエースがアルファード&ヴェルファイアの上級グレードと同等の価格、つまり600万円前後で販売されたら「とにかく大きくて目立つクルマに乗りたい」ユーザーには割安かも知れない。「大きくて派手なクルマはエライッ!」という考え方は、昭和から平成を通じて、令和の時代にも受け継がれているようだ。

モデリスタやTRDなどからドレスアップパーツも発売されると考えられるグランエース。派手なクルマが好きというユーザーからは、それなりのニーズがあるだろう

 ちなみにこの価値観の基礎を築いたのは、カローラ/コロナ/マークII/クラウンというヒエラルキーを確立させたトヨタであった。ミニバン時代の今は、シエンタ/ヴォクシー&ノア/アルファード&ヴェルファイア/グランエースとなるわけだ。

 カテゴリーがセダンからミニバンに移っただけで、本質はほとんど変わっていない。トヨタは相変わらず、ユーザーの本音を突いた商売が巧みだ。

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