昨今のSUVブームにのり、各自動車メーカーからは、SUVが次々に登場している。なかでも、ここ2~3年の流行りが、トヨタ「C-HR」やマツダ「CX-30」のような、クーペスタイルのSUVだ。クロスオーバーSUVとも呼ばれる。
通常のSUVよりもスタイリッシュではあるが、クーペスタイルになっていることで、AピラーとCピラーが寝た形状となり、その結果、どうしてもキャビンも荷室も小さくなる。
【ライズ、ハスラー、マツダ2…】 掴んだぞ2020年SUV&コンパクト重要新車戦略!!
海に川に山に、荷物をガンガン積んで出かける、という本来のSUVとしての魅力を手放してしまっているのだ。なぜ、SUVらしからぬSUVが、これほどまでに増殖しているのだろうか?
今回はそのワケを紐解いていく。
文/吉川賢一
写真/TOYOTA、NISSAN、MITSUBISHI、MAZDA、Porsche
【画像ギャラリー】よりスポーティに進化した、注目クーペスタイルSUVをピックアップ!
■クーペスタイルのSUVにはどんな車種がある?
クーペスタイルのSUVは、SUVとスポーツカーの「クロスオーバー」と呼ばれる。このクロスオーバーは、特にAピラーの傾斜が強いものが多い。
現時点販売しているクルマでは、トヨタ「C-HR」、日産「ジューク」、マツダ「CX-30」、三菱「エクリプスクロス」、メルセデス「GLCクーペ」「GLEクーペ」、BMW「X4」、アウディ「Q8」、アルファロメオ「STELVIO(ステルビオ)」、ポルシェ「カイエンクーペ」、ランドローバー「イヴォーク」、ジャガー「I-PACE」、ランボルギーニ「ウルス」などが挙げられる。
これらのクルマはどれも、Aピラーの傾斜がきついために、ドライバーの頭上スペースが狭まり、またヒップポイントは下方へと沈み込むため視界のよさもスポイルされる。さらには、傾斜したAピラーと合わせて、ルーフラインも下げるため、荷室容量も少なくなる。
クーペスタイルと言いつつ、ドアは4枚あるので使い勝手は、クーペよりも優れる。ただAピラーの角度がきつく、Cピラーも寝ているので室内空間は通常のSUVと比べると劣る
一見、SUVとしてのありがたみの多くを、手放しているようにも思えるが、実際にC-HRがバカ売れしたことなどを考えると、「需要と供給」のバランスは保たれているのだろう。
そして、実際にそうしたクルマへ乗ってみると、まるで、「車高の高いセダン」に乗っているような印象を受け、決して悪くはない。むしろ、セダンよりも乗り降りがしやすく、そしてタイヤも扁平率が高いため、乗り心地もよく、ロードノイズも静かで、運転姿勢もセダンと同じ様な印象だ。
■何故、クーペスタイルのSUVが増殖するのか?
しかし、これほど多く同じようなコンセプトのSUVが増殖した理由は何なのだろうか? その答えは、背の低い、いわゆるスポーツカータイプのクルマが売れなくなってしまったことと関係がある、と筆者は考える。
世界中のマーケットを見渡しても、背の低い、いわゆる従来のクーペボディをもつクルマの売り上げは、年々減少している。クーペの王様、ポルシェは、2019年1~9月の世界販売台数で新記録となる20万2318台を売り上げたのだが、そのうちのなんと約67%が、2台のSUV(マカンが7万3967台、カイエンは6万2022台)、というのが現実なのだ。
ポルシェだけでなく、ランボルギーニ、ランドローバー、ジャガー、アルファロメオといった欧州メーカーもクーペSUVを発売。日本よりもその数は多い
いくら速く走れても、「狭い」、「乗り降りしにくい」、「乗り心地が悪い」、「ノイズがうるさい」などネガが起きやすい背の低いクーペは、一部のマニアックな顧客にのみとなり、今後も、衰退の一途をたどることになるのだろう。
そこで、背の高いSUVに、背の低いスポーツカーの走りのイメージを持たせ、本来は鈍重なイメージのSUVをスポーツカーのようにきびきびと走らせる。こうした方向性に、各自動車メーカーが次々とクルマを投入したのではないだろうか。
デザイナーさんが、ひと筆書きでルーフラインを描くプロモーションビデオが多くある。滑らかなボディラインは、「無駄がなく美しい」と思う方が大半であろう。
■国内市場では今何が売れている?
2019年11月のSUVジャンルの売上TOPはライズ(7484台)、2位はC-HR(5097台)、3位はRAV4(4988台)、4位はロッキー(4284台)、5位はヴェゼル(2909台)であった。このなかで、「クーペスタイルSUV」はC-HRのみであるが、注目なのが、6位のCX-30(2690台)だ。これまでマツダのSUVといえばCX-5(1321台)であったが、その台数を(11月単月では)抜いたのだ。
マツダ3も登場後、数カ月経ってから売上台数が伸びてきた。10月末に登場したばかりのCX-30もまた同じく、徐々に売り上げを伸ばす可能性は十分にあるだろう。さらにマツダは、今後MX-30というクーペスタイルのEV-SUVも投入予定だ。これらがヒットすれば、マツダは急激に盛り返すことができるだろう。
2020年9月に登場予定のマツダのピュアEV「MX-30」。CX-30とプラットフォームを共用して開発されたクーペスタイルのSUV。CX-30とは異なり、後席ドアが観音開きになっている
ちなみに2018年の4WD SUVジャンル売り上げNO.1のエクストレイルはたったの1919台で、SUV全体で7位、という状況。エクストレイルももはや商品力が尽きる寸前、日産OBである筆者としては、2020年の日産に期待している。
将来的には、日本メーカーの得意な、コンパクト車のパッケージを生かした「奇策」を生み出せれば、また新たなカテゴリへジャンプを起こすのではないかと、期待している。
環境問題や技術の発達、人々の生活や意識の変化、多様化など、時の流れとともに重要視されるもの必要とされるものは変わって当然である。時代の流れとともに進化するクルマに、今後も期待している。
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みんなのコメント
今時の人はそこは気にならないんだよね。