役付きレア車の極み、ハイエンドなコラボ仕様たち
さて松の内も明けてウィークデイが戻ってくると、正月気分もさすがにすっ飛んで身体が重いことこの上ない。そんな時節柄、ふと想いを馳せたくなる(?)のが、小粒ながら伝統の大看板を背負い、走りも内装もひと癖ヴィヴィッド、そんな出世魚ライクなスモールカーだ。
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階級社会の欧州では経済車をあえてハイブロウ仕立てで楽しむという、上から目線なスモールカーが昔からあった。とはいえ2010年前後はその伝統を踏まえつつ、「グループ内コラボ」視点でドメスティックまたはグローバルに突っ走ってみる、という雰囲気があった。
今や中古で転がっていたら即買い! なレア車であることは間違いないので、2022年の引きの強さに期待しつつ、総ざらいしておくのもオツだろう。
アバルト695トリブート・フェラーリ
元はチューナーで往年の小排気量クラスの雄だったアバルトと、大排気量かつ総合カテゴリーの王者だったフェラーリ。ともにイタリアのモータスポーツの伝説ながら、同じフィアット・グループ傘下ゆえに実現したイタロ・イタリアーノな夢のコラボは、2009年フランクフルトショーで発表された。
当時もっとも戦闘的だった「フェラーリ430スクーデリア」同様、黒い縁どりのあるシルバーの2本ストライプとオバフェンボディ、4ポッドキャリパーのブレンボブレーキが奢られている。アセットコルサ同様のギャレット製ターボ、エキゾーストシステムにはレコルト・モンツァを採用、1120kgの車重で180psを絞り出した。ふんだんにカーボンを用いたインテリアのみならず、ナポリのトラモンターノがあつらえたトラベルバッグ×2個が付くところまで、フェラーリ顔負けの仕様だった。
日本で2010年に導入された当初の価格は569万5000円。レッドのほか、イエローにブルー、シルバーが計150台導入されたが瞬く間に完売した。2012年には日本限定の「695トリブート・フェラーリ“トリブート・アル・ジャポネ”」(609万5000円也)が50台のみ追加され、売上の一部が東日本大震災の復興支援に寄付された。
アバルト695エディツィオーネ・マセラティ
先述のアバルト×フェラーリの好評を受け、もうひとつのイタリアン・レーシング・レジェンドとのコラボが2012年パリサロンで発表された。フェラーリのときは「トリブート(=トリビュート、捧げるの意)」というネーミングだったが、マセラッティのときは「エディツィオーネ(=エディション、~版の意)」に。
スパルタンな仕上がりだった前者と対照的に、マセラッティ版はカブリオをベースに、モデナ生まれの由緒正しくパワフルかつ瀟洒なグランツーリスモの雰囲気を再現。ベージュのポルトローナフラウ製レザーシートに、スモールカーらしからぬ3コート仕上げ塗装の深みあるボルドーが、ため息を誘った。
2ペダルのMTモード付5速シーケンシャルMTAと180psのパワーユニット、4ポッドキャリパーブレンボに305mmローターという仕様は695トリブート・フェラーリと同じ。全世界499台限定で日本での価格は499万円、100台も割り当てられたが即完売。2年後に50台限定でグレーが追加されたが、このときは日本に正式導入されず、だった。
アストンマーティン・シグネット
当時ニュルブルクリンクのレースを走っていたアストンマーティンCEO、ウルリッヒ・ベッツとトヨタの豊田章男社長の、ピットでの友人トークから始まったといわれる「アングロ・ジャパニーズ」企画が「シグネット」。だが、欧州CAFE規制の厳格化を見越して、大排気量スポーツしか展開していなかったアストンマーティン側が、ラインアップ内での相殺オフセットできるモデルを検討していたことは確か。グローバル時代を象徴するような白羽の矢が立ったのが、非軽自動車枠の4人乗りスモールとして注目されていたトヨタの野心作、「iQ」だったのだ。
高岡工場で生産した完成車を英国に送って、分解してからアウターパネルや内装などをアストンマーティンが組み付けたため、ノーマルiQより生産コストは相当にかかっていた。マスクだけアストン化したように見られがちだが、じつは外観の共通部品はドアとリヤフェンダーとルーフのみ。遮音材が追加されエンジンマウントも強化されている。
欧州では2011年に市販され、価格は約3万1000ポンド(現在のレートで約486万円)だった。日本にも少数が導入され、475万円~という価格だった。2013年の早々に生産は打ち切られるが、5年後の2018年、アストンマーティンのビスポーク部門である「Q byアストンマーティン」の手により、4.7Lの480psユニットをスワップした「V8シグネット」も製作されている。
ミニ・インスパイアード・バイ・グッドウッド
2011年に上海モーターショーで発表された。先代「ニューミニ」ことR56世代をベースに、同じBMWグループ内のロールス・ロイス・モーターカーズのデザイナーや職人が仕上げた、まさしくテイラーメイド・ビスポーク的なミニだった。内外装にロールス・ロイスでしかありえない特徴が数々施されている。
まず外装色のダイヤモンド・ブラック・メタリックからして、いかにもロールス・ロイスな、英国式アンダーステイトメント(ここでは豪華だがごく控え目であること)。ベースは「クーパーS」なのにボンネットはわざわざクーパーDのエアスクープ無し、つまり地味なものが採用されていた。エンジンは1.6Lツインスクロールターボの184ps/240N・mで、オーバーブースト時に260N・mというスペックはクーパーS同様だった。
目を見張るのは内装で、足元はまずラムズウールの毛足の長いカーペットに、ダッシュボードやドアハンドルにはウォールナット・バーというロールス・ロイスならではの最高品質のウッド、そしてブラックのフルグレインレザー張り。シートやドアの内張りレザーには、コーンシルクというこれまたロールス・ロイス専用色で、温かみあるナチュラルなベージュの諧調だった。しかも天井はカシミア張りである。
発表の翌年2012年に全世界1000台限定でオーダーが受け付けられ、日本での価格570万円は、ベースのクーパーSの2倍だった。
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みんなのコメント
こんな文章、よく恥ずかしげもなく書けるもんだなぁ(笑)
でも、イナガキ氏はボンボンでしたね。