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リンカーン・コンチネンタル生産終了へ……消えゆくアメ車セダンへの小川フミオの思い

掲載 更新 6
リンカーン・コンチネンタル生産終了へ……消えゆくアメ車セダンへの小川フミオの思い

リンカーンの4ドア・セダン「コンチネンタル」の生産終了が発表された。このニュースを聞いて小川フミオが、“アメ車”のセダンについて考えた。

突然の”お休み”宣言

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アメリカ車のなかでもっともエレガントなブランドが「リンカーン」ではないだろうか。とりわけ、リンカーンを代表するモデルといえるのが、優美なスタイルを持つセダンの「コンチネンタル」だ。ところが、そのコンチネンタルがついに姿を消すという。

ショッキングなニュースが流れたのは、2020年7月だ。米国の自動車メディアの報道では、2020年内にコンチネンタルの製造に終止符が打たれるという。コンチネンタルの名は長い歴史を有している。

2018 Lincoln Continental2020 Lincoln Continental2020 Lincoln Continental2018 Lincoln Continental2020 Lincoln Continental2020 Lincoln Continental最初のコンチネンタルは、当時フォードの社長だったエドセル・フォードが「徹底的にコンチネンタル(欧州大陸ふう)なスタイルでデザインしてくれ」と、デザイン部長に注文した1939年のワンオフ(エドセル・フォードのためだけに作られたモデル)だった。

タイヤをリアに背負ったような半円形のふくらみのトランクリッドを持ったスタイルも、このときに考案され、その後、1978年の「コンチネンタル・マークV」で復活し1990年代まで続いた。

1964 Lincoln Continental1962 Lincoln Continental convertible私がもっとも好きなコンチネンタルは、1961年に登場した4代目である。特徴は観音開きのドアと、センターピラーをもたない、いわゆるハードトップスタイルだ。なにより、全長の長いプロポーションを活かした、一見シンプルながら力強さを感じさせる面作りが最大の魅力である。

コンチネンタルと聴いただけで、そんな自分の好みをすぐに連想してしまう私にとって、今回のコンチネンタルの”お休み”宣言(報道した米国のメディアは"go back into the vault"(vaultは金庫とか納骨室の意)と表現)は、ショックだった。

1966 Lincoln Continental1963 Lincoln Continental ad1966 Lincoln Continental大幅に縮小するアメ車のセダン

2017年に登場した10世代目になる最新のコンチネンタルはサイズこそ全長5116mmと、さきに触れた1961年登場の4世代目コンチネンタルの5.5m前後(モデルイヤーに応じて変化)に及ばない。いっぽうで、まさにコンチネンタルの名のとおり、米国版ジャガーサルーンといったおもむきを特徴としている。

2020 Lincoln Continental強い個性はないものの、端正なプロポーションと、品質感のあるディテールの合体により、マーケットでもそれなりのポジションを築くのではないか? と、メーカーが期待したのにもうなずける。昨今のリンカーン・プロダクトは、エレガンスとスポーティさをうまくバランスさせたところに個性を持っている。その路線に乗っていたと思う。

米国の自動車ショーにいくと、キャデラックの競合であるだけにリンカーンのブースは大きく、そして美しく、私は足を運ぶのが好きだった。以前はコンチネンタルが主役だったものの、最近では大型SUVにその座を譲るようになったのは事実だ。

2020 Lincoln Navigator Reserve with Monochromatic PackageSUVに向かう市場の動向に、リンカーン・ブランドも無縁ではいられなかったということだ。欧州だったら、たとえば、ジャガーとランドローバーがひとつの傘の下に共存できているものの、SUV志向が支配的な米国では、結局、コンチネンタルが生き残る余地がなくなってしまったのだ。残念。

米国市場でセダンが縮小しているのはまぎれもない事実。トラック(ピックアップトラック)とSUVが伸びるいっぽう、セダンの市場シェアは30%台にまで落ち込んでいる。

4ドアだけにしぼると、リンカーンの親ブランドであるフォードは「フュージョン」のみ。ゼネラルモーターズはキャデラックのみ気を吐いていて「CT4」「CT5」それに日本にも導入されている「CT6」をラインナップしている。

2020 Fusion Titanium2020 Ford Fusion2020 Fusion Titaniumキャデラックのデザインディレクターのアンドリュー・スミスは、「ラグジュアリーブランドの本質的なモデルは、SUVでなくセダン」という趣旨の発言をしている。

クライスラーには2004年に発表された「300」が存在する。当時ダイムラー・クライスラーとして提携関係にあったメルセデス・ベンツの「Eクラス」(1995年登場の2代目EクラスであるW210)のサスペンションパーツなどを流用したモデルだ。

本国では2011年にモデルチェンジを受けた。発表当時は、乗り味もよくて、感心したものの、年次変更も限られていて、いまやメーカーのやる気はあまり感じられない。

2020 Chrysler 300C2020 Chrysler 300 Radar Red Interiorセダンの市場を支えているのは、テスラだ。2019年には36万台以上を販売し、前年の200%で、2017年と比較すると300%と、大きな伸びを示してきた。

米国では、キャデラックがCT6にプラグ・イン・ハイブリッドを設定したように、これからの時代は電動化が避けられないだろう。ただし、電動化によって静粛性が上がるなどすれば、それは快適な移動を求めるセダン・ユーザーへの福音となるだろうし、また人気が盛り返すことになっても不思議はない。

2018 Cadillac CT6 Plug-In Hybridアメ車ならではの世界観

アメリカ製のセダンに、日本で乗る意味はあるか? もちろん、どこの国で作られたからどうこう、というのでなく、個性を求めるならば、その価値は充分ある。欧州製セダンとは違う世界観を楽しめるからだ。左ハンドルのみというのはネックかもしれないが、それも個性だ。

とはいえ、かつての“アメ車”と比べれば随分マイルド。ボディサイズも、それほど大きくはない。日本で乗るにも、なんら問題はなさそう。

2020 Lincoln Continental個人的には、以前のキャデラック「フリートウッド」のようなビッグサイズのクルマを作ってもらいたいし、それを日本でも乗りたい。時代に逆行しているかもしれないが、あえて今、米国のメーカーが作ったら、どんな世界観を提供してくれるだろう……大いに気になる。

建築やホテル、レストランなどの商業空間のインテリアでは米国的な美意識の人気は高いからおもしろそうだ。

コンチネンタルが一刻も早く、vaultから出てきてもらいたい、と、そういうわけで、私は思うのだ。

文・小川フミオ

文:GQ JAPAN 小川フミオ
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みんなのコメント

6件
  • まぁアメ車の歴々を見れば分かる通り、アメ車の基本思想はアメリカの国土でいかに快適に乗れるか。

    あの国はどんな街でも、少し離れるとありえないほど広大な平野や自然が広がってて、住宅地ですら道幅も広いし、建屋もデカいし間隔も広い。
    アメリカ人にとって車とはそういう環境にマッチする乗り物。

    そのためのツールと思ってるから、デカくてゴッツいのが多い。
    この感覚はオーストラリアなんかを除くとほかの国の国民にはあまり見られない。

    当のアメリカでもこのところはSUV志向だし、デカさが命のセダンは他国では売れないんだから仕方ないよね。

    個人的にはある種のノスタルジーが感じられて好きだけど。
  • セダン派です。記事に出たCT6に乗っていますが、超快適で、カッコイイねと良く話しかけられます。
    意外と知られて無い事実ですが、バンパー下の高さは今の都会派SUVと大差ないです。エアロの付いたハリアーとかCHRの方が気を遣う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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