モーターマガジン社より「スーパーカークロニクル・完全版」が好評発売中だが、その中から主だった車種をダイジェストで紹介しよう。第6回は2011年から現代までの「第5期スーパーカー」の中から、ランボルギーニ アヴェンタドール、フェラーリ812スーパーファスト、ダラーラ ストラダーレ、ホンダNSXをお届けする。
現代(第六期)のスーパーカーは超弩級の高性能で魅力あふれる
ランボルギーニ アヴェンタドール(2011~2018)「ランボルギーニのフラッグシップとして伝統のV12を受け継ぐ」
アヴェンタドールのワールドプレミアは、2011年のジュネーブ モーターショー。ひと目でランボルギーニのフラッグシップとわかる独特のスタイリングは自社で手がけた。地を這うような独特のフォルムやV12エンジンをミッドに搭載するなど、基本はカウンタックから引き継いでいるようにも見えるが、中身は高度に進化している。初めてボディにカーボンファイバー製のモノコックを採用したことや、サスペンションもピュアレーシングカーのようなプッシュロッド式を採用した。
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だが、最大の進化はエンジンを新開発したことだろう。カウンタックから先代のムルシエラゴまでは、創業以来のV型12気筒を基本的に使い続けてきたのだが、新設計のものに置き換えられた。排気量は6498ccで、デビュー当初のモデルは車名「LP700 ー4」が示すとおり最高出力700psと最大トルク690Nmを発生した。
トランスミッションはマニュアルは設定されずセミAT(シングルクラッチのAMT)のみとなる。駆動方式も4WDのみで、前後の駆動力配分は0:100から40:60まで可変する。公称の最高速は350km/h以上、0→100km/h加速は2.9秒以下とアナウンスされていた。
2016年にはビッグマイナーチェンジで「アヴェンタドールS」へと進化する。車名の最後の「S」は、イタリア語のスピント(Spint)の略で、音楽用語で歌や演奏が盛り上がった様子を意味するが、それが転じてチューニングを意味している。
最高出力は40psアップされて、740psとなり、その発生回転数も8250rpmから8400rpmに引き上げられている。組み合わされるトランスミッションはシングルクラッチの7速AMTのままで、4WDシステムも継承されている。
また、ランボルギーニのカタログモデルとしては初めて4WSシステムを搭載した。低速時には逆位相、高速時には同位相に転舵して利便性と安定性を向上させている。公称のパフォーマンスは、最高速が350km/h、0→100km/h加速が2.9秒とアナウンスされた。
2018年のペブルビーチコンクール デレガンスでは、さらに上をいく高性能バージョンとして、「アヴェンタドール SVJ」が発表された。SVはスーパーヴェローチェの略で、Jはイオタ(Jota)を表し、かつてミウラの特別バージョンとして作られたイオタと同様に、レース走行への熱い思いが込められている。
ミッドに搭載されるV型12気筒 DOHCの排気量は6498ccとアヴェンタドールSと変わらないが、最高出力は30psアップの770ps、最大トルクは30Nmアップの720Nmと、デビュー当時は歴代のランボルギーニV12エンジン搭載量産車では最強だ。
フェラーリ812スーパーファスト(2017~2024)「800psを誇るフラッグシップ的FRスポーツ」
それまでのフラッグシップであったF12 ベルリネッタの発展モデルともいえる812スーパーファストだが、デザインも含めて全方位的に進化している。812という車名は、最高出力800psを発生する12気筒エンジン搭載を意味している。
ロングノーズ/ショートデッキのファストバッククーペだがリアエンドはキックアップしたハイテールを採用し、フェラーリ的には「デイトナ」と呼ばれた名車、365GTB/4をインスパイアしているという。とはいえ、ヘッドランプには最新のフルLEDが採用されており、またリアコンビランプには丸型4灯を採用するなど、伝統と革新を融合したスタイリングといえるだろう。
フロントミッドシップ搭載されるパワーユニットは、65度のV型12気筒 DOHCと形式こそF12ベルリネッタのものと変わらないが、排気量は234cc拡大されて6496ccとなり、最新の直噴システムも採用。最高出力は800ps、最大トルクは718Nmを発生。F12ベルリネッタより60psもパワーアップされ、自然吸気で8500rpmまで吹け上がる。しかも、3500rpmから最大トルクの80%を発生している。公称の最高速度は340km/h、0→100km/h加速は2.9秒とされている。
操縦性に関しては、フェラーリ初の電動パワーステアリングを採用し、これを車体電子制御システムと連携させている。その電子制御システムとは、従来からの「サイドスリップコントロール」の最新版や、後輪操舵システムの「バーチャルホイールベース 2.0」で、ドリフト走行をアシストするなど、フェラーリのフラッグシップにふさわしい痛快なドライビングを演出する。
2019年には、デイトナ スパイダー以来50年ぶりにV12エンジンをフロントに搭載したフェラーリのオープンモデルとなる、リトラクタブル ハードトップの「812GTS」が追加設定された。車速が45km/h以下なら走行中でも14秒でトップの開閉が可能だ。
レーシングコンストラクターが磨いた最高性能
ダラーラ ストラダーレ(2017~)「ダラーラがレースで培った技術をフィードバックしたロードスポーツ」
ダラーラ アウトもビリはインディカーや日本のスーパーフォーミュラなどで、多くのレーシングカー用シャシを供給している、イタリアのレーシングコンストラクターだ。
そのダラーラ アウトモビリが、初めて手がけたロードモデルが「ストラダーレ」だ。ストラダーレとはイタリア語で「道」を意味し、まさに公道走行が可能なレーシングカーといった車名。第1号車は2017年11月、創業者であるジャンパオロ・ダラーラの元に届けられた。
シャシとボディパネルにカーボンファイバーや複合材を用いて乾燥重量はわずか855kg。基本ボディはドアはもちろんサイドウインドーはおろかフロントのウインドスクリーンもない、2シーターのバルケッタスタイル。軽量化と高いボディ剛性を追求した結果、このシンプルだが美しいスタイルにたどり着いた。
それでもフロントウインドー、タルガフレーム、ガルウイング式に開くサイドウインドー、さらには大型のリアウイングといったパーツがオプションで用意され、バルケッタ~タルガトップ~クローズドクーペと、好みのボディタイプに数分の作業でトランスフォーム可能だ。
パワーユニットはフォード製の直4 DOHCターボをチューンしたものを横置き搭載。トランスミッションは6速MTが標準、オプションでパドルシフト付きロボタイズドATも設定されている。パワースペックは最高出力が400ps、最大トルクが500Nmと、スーパースポーツカーとしては控えめだが、軽量ボディのおかげで最高速は280km/h、0→100km/h加速は3.25秒というパフォーマンスを発揮する。
インテリアも走るための機能性を重視したものだが、カーボンとエコレザーを用いた質感の高いもので、エアコンも装着している。シート後ろやエンジンルーム後方にはラゲッジスペースが備わり、思ったよりは実用性が高い。
ホンダ NSX(2016~2022)「モーターによるトルクベクタリングを実現したスーパーカー」
15年以上にわたって生産され、日本初の本格的な量産ミッドシップスーパーカーとして人気を博した初代NSXだったが、惜しまれつつ2005年末に生産を終了した。その後継車の登場が待たれたが、その存在を具現化した「NSXコンセプト」は、2012年のデトロイトモーターショーで公開された。
そのときに詳細なスペックや3年以内に発売するというステートメントも発表され、世界中のホンダファンは色めき立った。その言葉どおりまずは2016年に北米で生産と販売が始まり、日本でも2016年夏に発表、翌2017年から発売が開始された。
スタイリングのイメージは初代NSXを踏襲している。初代でも特徴的だったミッドシップ車特有のボディサイドのエアインテークはCピラーと一体化して大型化され、フローティングCピラーを形成している。
ボディと面一化されたドアハンドルやステーの長いアウターミラーなど、空気抵抗低減を追求していることも見逃せない。サイズ的には初代より40mm長く、130mm幅広く、45mm高くなったのは安全性も含めて自然な流れといえるだろう。
シャシにはアルミニウムを中心とした複合素材によるスペースフレームが採用され、ボディパネルにも軽量化や歩行者保護の観点から、アルミニウムやカーボンファイバー、耐熱プラスチックなど、さまざまな素材が使い分けられている。
パワートレーンは、V6 DOHCエンジンをミッドシップ搭載するのは初代と同じだが、排気量は3.5Lにアップされてツインターボを装着。しかも、前輪に2基、後輪に1基の電気モーターも組み合わせて4輪を駆動する世界でも稀なハイブリッドシステム、「スポーツハイブリッド SHーAWD」システムを採用した。走行状態に合わせて左右前輪のトルク配分を自在に制御する異次元のコーナリング性能を実現したのがこのクルマの最大の特徴だ。
エンジンとモーターを合わせたシステムの最高出力は581ps、最大トルクは645Nmというハイパフォーマンスを与えられ、ヨーロッパのスーパースポーツカーと比べても遜色のないパワースペックを実現した。しかも、トランスミッションはストレスフリーの9速DCTでシームレスな加減速を実現した。
インテリアも視認性に優れたTFTメーターやホンダ インターナビなどの充実した装備、さらには先代同様に十分な広さを持ったトランクスペースを確保するなど、実用性を高めているのが日本のメーカーらしい。
日本仕様も米国の工場で生産される。2021年には、内外装をモディファイし、システムのパワースペックを529psと667Nmにアップした「タイプS」を発表。これが最終モデルとなり、2代目NSXは2022年11月に生産を終了した。
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