初代から300mm長くなった3代目カントリーマン
新しいミニ・カントリーマン(旧クロスオーバー)は、もはや「ミニ」のイメージを継承していないように見えるかもしれない。先代までは、小さなハッチバックへ通じる雰囲気が漂い、サイズも大きかったとはいえ、まだ小ぶりと呼べた。
【画像】4.4mを超えても「ちゃんとミニ!」 新型カントリーマン 競合クラスのSUVと比較 全103枚
確かに、モデルチェンジを経て、カントリーマンは4433mmへ全長を伸ばした。先代から120mmも成長し、初代と比較すると300mm以上も長くなっている。
とはいえ、サイズがすべてではないことを知った。ブランドのスピリットを現代的に体現し、明るく楽しい体験を与えてくれるからだ。ちゃんと「ミニ」している。
この3代目は、ミニがバッテリーEVへのシフトを加速するタイミングで登場した、最初のモデル。電動クロスオーバーのエースマンは、間もなく登場予定にある。まったく新しい電動の3ドアハッチバック、クーパーも控えている。
ただし、内燃エンジン版もまだ廃盤にはならない。3ドアと5ドアのハッチバックには、大幅なアップデートが施されることになる。
成長したカントリーマンは、収益を得やすいクラスに相当することになった。先代までは、ファミリー・ハッチバックと比較されがちなサイズ感だったが、3代目はファミリー・クロスオーバーの領域へしっかり踏み出している。そのぶん、ライバルは多い。
プラットフォームは、複数のパワートレインへ対応したBMWグループのUKL2。BMW X1やX2と共有し、製造もBMWのライプツィヒ工場で行われる。ミニとしては、初めてのドイツ製だ。
モダンさとレトロさを巧妙に融合した車内
今回試乗したカントリーマンは、トップグレードのジョン・クーパー・ワークス(JCW)。300psと40.7kg-mを発揮する2.0L 4気筒ターボガソリンを搭載する、最もホットな仕様となる。
よりファミリー向けの設定として、1.5L 3気筒ターボもある。前輪駆動に加えて、四輪駆動も選べる。
現代のミニを作るうえで課題となるのが、1959年のオリジナル、モーリス・ミニ・マイナーを思い起こさせるスタイリングを与える方法だろう。カントリーマンは、オフローダー的に角ばらせつつ、巧みにそれが表現されている。
他方、Cピラーは太く、ルーフラインは後方へ長い。実際に目の当たりにすると、数字以上に大きく感じられた。
JCWでは、専用のフロントグリルとエアロキットを装備し、CピラーがJCWのエンブレムで飾られる。同時に、きらびやかなクロームメッキ・トリムは排除。無駄を削ぎ落とした美しさと、リサイクル素材の利用へ意識が配られている。
インテリアは、モダンなシンプルさとレトロな風合いを、巧妙に融合。従来のミニ・ファンの期待にも応える仕上がりだろう。明るく開放的で、適度に高級感も備わる。他に流されず、楽しさを演出できている。着座位置は高めで、視界は広い。
ボディの拡大に合わせて、車内空間も広がった。フロントシート側はもちろんだが、リアシート側も130mmスライド可能で、身長の高い大人でも窮屈に感じることはない。荷室容量は460L。現行の日産キャシュカイ(旧デュアリス)より大きい。
思わず見惚れる円形タッチモニター
ダッシュボード表面は、リサイクルされたポリエステル素材で覆われ、ツートーンのコーディネートが華やか。トリムグレードに合わせて、多様なデザインが設定されるという。JCWの場合は、レッドとブラックの2色になる。
中央には直径9.4インチの、丸いインフォテインメント用タッチモニターが突き出ている。ミニによれば、OLEDタイプの採用は量産車初だとか。初めて乗ると、大きなスピードメーターが美しく描き出され、思わず見惚れてしまう。
少し時間が過ぎると、メーター用モニターが備わらず、ダッシュボードに殆どスイッチが存在しないことへ気付く。モニターの下には、イグニッションとオーディオ、シフトセレクター、エクスペリエンス・モードのハードスイッチが並ぶ。
さらに下部には、スマートフォン用のワイヤレス充電パッドと、カップホルダーが2つ。小物入れも備わる。JCWではヘッドアップディスプレイが標準装備で、速度などが投影される。
インフォテインメント・システムは、BMWのiドライブがベース。円形モニター用に改良を受けており、ミニ独自のアプリも実装する。画面上部はメーター用エリアで、ヒーターなどのインターフェイスが周囲にレイアウトされる。
試乗車ではソフトウエアの動作が遅くなる場面があったが、アップデートで改善されることへ期待。エアコンの温度などはスライダーで表示され、タップすると拡大されるものの、実際に押せるハードスイッチの方が操作はしやすい。
ミニらしい操縦性のゴーカート・モード
音声操作システムが実装され、パーソナルアシスタントとして、スパイクと名付けられた犬のキャラクターが反応する。子どもには喜ばれそうだ。
先述したエクスペリエンス・モードには、8種類がある。タッチモニターのグラフィックやドライブモードを統合したもので、その名の通り運転体験に変化を与えてくれる。
例えばゴーカート・モードを選ぶと、JCWではブラックとレッドのグラフィックになり、タコメーターが描かれる。タイムレス・モードでは、クラシックなグラフィックのスピードメーターが描かれ、カラーもセピア調に変化する。
モードを切り替えると、サウンドロゴも鳴る。スーパーファミコンからサンプリングしたような、デジタル音が。
またゴーカート・モードでは、エンジンのレスポンスやサウンド、サスペンションなどがスポーティに。シャープな走りを味わえる、いわゆるスポーツ・モードだ。同様にコアはノーマル、グリーンはエコと考えるとわかりやすい。
このゴーカート・モードは、特にミニらしい操縦性を体現したものだろう。同社の開発技術者と会話を交わすと、必ずといっていいほど「クラシックなゴーカート・ハンドリング」を提供したい、という考えを口にする。
SUVにとって、簡単な要求ではないかもしれない。それでも、ステアリングホイールを握ってみると、確かにダイナミック。遊び心を感じ取れる。
個性的で望ましいクロスオーバーの選択肢
ステアリングの反応は、ダイレクトでクイック。素早い旋回を軽々と披露する。印象としては、X1よりシャープでファン。それでいて、操縦系には適度な重み付けもあり、安定性も疎かになっていない。
JCWの場合、サスペンションが通常より引き締められ、乗り心地は硬め。我慢を強いるほどではないが。試乗車は20インチ・ホイールを履いていたが、段差の衝撃は充分になだめていた。
四輪駆動システムは、トラクションのバランスを高めながら、カーブでの落ち着きに貢献。タイヤサイズは2代目からワイドになり、グリップも充分以上といえた。
BMW譲りの4気筒ターボガソリンは、パワフルでレスポンシブ。0-100km/h加速5.6秒を疑わない勢いがあり、トルクも太く粘り強い。質感もプレミアムだ。
車内で聞こえるエンジン音には、レーシングカーへ影響を受けたという、人工音が重ねられる。JCWを名乗るホットハッチ的な気分を高める、と感じる人もいるだろう。
とはいえ、ドライバーズカーと呼べるわけではない。楽しさがプラスされるJCWであっても、カントリーマンは実用的なファミリー・クロスオーバーだといえる。
しかし、ミニらしいプレミアム感や若々しい雰囲気は大きな魅力。実用性も悪くなく、サイズは合理的なもの。ライバルモデルへ埋もれない、個性的で望ましい選択肢が誕生したといえる。ミニと呼べる大きさではないが、確かにミニだと感じた。
ミニ・カントリーマン・ジョン・クーパー・ワークス ALL4スポーツ(欧州仕様)のスペック
英国価格:4万425ポンド(約752万円)
全長:4433mm
全幅:1843mm
全高:1656mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.6秒
燃費:12.0-12.8km/L
CO2排出量:177-188g/km
車両重量:1660kg
パワートレイン:直列4気筒1984cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps
最大トルク:40.7kg-m
ギアボックス:7速オートマティック(四輪駆動)
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