世界的な人気を誇る007シリーズの最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が2021年10月1日に公開され、現在も大ヒット公開中だ。今回ももちろん見せ場のカーアクションシーンに新旧様々なクルマが多数登場する。
前作に続いて名車アストンマーティンDB5をはじめ、シリーズにゆかりのある車も登場。その見どころをご紹介しよう!
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文/渡辺麻紀、写真/ユニバーサルスタジオ、Aston Martin
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■新たなジェームズ・ボンド像を作り上げたダニエル・クレイグ
アストンマーティン DB5など、クレイグ最後のボンドに花を添えるように数々の名車が登場
当初の公開時期が丁度、新型コロナ蔓延時期と重なってしまい、延期を余儀なくされた『007』シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。この10月、コロナ禍の収束に伴い、やっと公開にこぎつけ、日本では22憶円、ワールドワイドで6億ドル(約680億円)を上回る興行成績を記録する大ヒットとなった。
本作は、シリーズ21作目『カジノ・ロワイヤル』(2006)からジェームズ・ボンド役を務めるダニエル・クレイグの最後の作品ということでも注目を集めていた。
スパイのカリカチュアだったり、コミックっぽかったりしていた最近のボンド・キャラクターに血を通わせ、リアルなスパイを創ろうとしていたクレイグが、最後にどんなジェームズ・ボンド像を見せてくれるのか? 世界中が注目していたからだ。
その結果は、これまでのシリーズでは到底、考えられない大胆不敵な結末となっていたが、クレイグらしいボンド像でもあった。『スカイフォール』(2012)、『スペクター』(2015)、そして本作を3部作と考えたからこその終わり方だったからだ。
■クレイグボンドに花を添えるアストンマーティン
数々のスパイギミックが装備され、スパイカーのイメージを形作ったアストンマーティン DB5
ということはさておき、今回のカーアクションである。前作『スペクター』の最後は、お馴染みのボンドカー、アストンマーティンのDB5に、愛する女性マドレーヌ・スワンを乗せて走り去ったボンドだったが、本作はその直後から始まる。
MI6を辞めたボンドは、マドレーヌを連れてイタリア南部の古都マテラを訪れる。その様子は新婚旅行のカップルのようで、まさにラブラブ状態。ところがそこに、何者かが放った刺客が現れ、ボンドはアストンマーティンで応戦する。
言うまでもなくこのDB5は本家本元のボンドカー。『スペクター』のときはただ走るだけだったが、本作ではスパイカーの本領を発揮。
2台のジャガーXFに乗った敵をDB5で交わしながら、迷路のような古都の路地や広場、石畳を疾走する。スモークを焚き、鉄びしを巻き、マシンガンをぶっ放すと、まさに絵に描いたようなスパイカーっぷり!
はっきりいって、DB5がこれだけ大活躍するのは『ゴールドフィンガー』(64)以来。もちろん、カーチェイス・シーンも用意されていて、本作で最後となるクレイグからのDB5ファンへのはなむけ? なんて深読みしたくなるくらいだ。
撮影現場を訪れたチャールズ皇太子と記念写真を撮影するダニエル・クレイグ。右にアストンマーティン V8、左にDB5と、人も車も豪華な顔ぶれだ
この撮影で使用されたDB5は10台。アップ用には、『007』の製作会社イオン・プロダクションが所有する、『ゴールデンアイ』(95)、『トゥモロー・ネバー・ダイ』(97)、『スカイフォール』、『スペクター』で使われた由緒正しきDB5と、その仕様とまったく同じもの。
アクション用に使われた8台はアストンマーティン社の自動車技師が本作のためだけに作ったレプリカだという。
ちなみにアストンマーティンは、アクション以外のシーンにも登場していて、『リビング・デイライツ』(87)でボンド役のティモシー・ダルトンが乗っていたV8サルーンが、ボンドのロンドンで乗る車として。
また、DBSスーパーレッジェーラが、007のコードナンバーを引き継いだ女性エージェント、ノーミ(ラシャーナ・リンチ)の車として登場。
アストンマーティン DBSスーパーレッジェーラ
さらに、Q(ベン・ウィショー)のラボに置いている車が、22年発売予定という最新モデルのハイパーカー、ヴァルハラになっている。このヴァルハラ、お値段のほうはおよそ1憶5000万円で500台の限定だとか。
また、この古都マテラでは、土地の高低差を活かしたバイクアクションもあり、ボンドがバイクで大ジャンプを決めてみせる。このとき使用しているバイクはトライアンフのスクランブラー1200。同社は同じデザインの限定モデルを世界で250台、日本で20台発売したという。お値段は259万円だそう。
■充実のカーアクションはクルマ好きも楽しめる
アストンマーティン ヴァルハラ。2022年発売予定で、500台限定で、お値段は日本円でおよそ1憶5000万円
これらの大規模で派手なカーアクションは前半。後半のカーアクションのハイライトはランクルプラドとレンジローバーの大チェイスになる。
ボンドが、人里離れたマドレーヌの実家を訪れるシーンではトヨタのランドクルーザープラドに乗り、その車をチェイスするのがレンジローバースポーツSVRという設定。雑木林の道なき道を走り、ハイウェイを駆け抜けるのはSVRだからこそ。
ちなみにランドローバーは『オクトパシー』(83)から『007』シリーズとパートナーシップを結んでいて、前作『スペクター』でも雪道のカーチェイスシーンで大活躍していた。
一方、そのレンジローバー相手に決して負けてないどころか、めちゃくちゃ強い走りをみせるのがランクルプラド。
同社の車が登場するのは、もしかしたら『二度死ぬ』(67)のトヨタ2000GT以来かもしれない。このとき、車を運転していたのはボンド(ショーン・コネリー)ではなかったので、もしかしたらボンド自身がハンドルを握るのは今回が初めて!?
今回のアクションは地味目という印象なのだが、それでもこうやってカーアクションは充実。新旧のアストンマーティンが競演して、トヨタの車も大活躍。車ファン的にもダニエル・クレイグは満足できる幕引きを演出してくれたのではないだろうか。
●解説●
愛するマドレーヌとの平穏な生活を求めて<007>のコードナンバーを捨てMI6を辞めたジェームズ・ボンド。
だが、マドレーヌとは、彼女の過去を巡って決裂。ジャマイカでひとり悠々自適の生活を送るボンドを、かつての仲間、CIAのフィリックスが尋ねる。誘拐されたロシアの細菌学者を救出して欲しいというのだ。一度はそれを断るボンドだったが……。
今回、メガホンを取ったのはキャリー・ジョージ・フクナガ。TVシリーズ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(14)等で知られる日系の監督で、作品に妙な日本テイストがあるのはそのため? という意見もある。
ボンドの前に立ちはだかる謎のテロリスト、能のお面を被ったサフィンを演じているのは『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー主演男優賞を獲得したラミ・マレック。映画でははっきりされていないが、どうも彼のルーツに日本が関係しているようだ。
また、本作で、昔からのシリーズファンがもっとも燃えたのは、パロマという新米エージェントとボンドがパーティに潜入し、大暴れするシーン。パロマを演じた『ブレードランナー2049』(17)等のアナ・デ・アルマスがめちゃくちゃキュートな上に、イブニングドレスをまとってのアクションがセクシーだったからだ。
リアルかつシリアスなボンドもいいが、やっぱりこういうシーンもないとね!
* * *
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
2121年10月1日(金)公開
配給:東宝東和
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