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なぜトヨタはやらない!? e-POWERで脚光の「ワンペダル」 意外なメリットと日産の狙いとは??

掲載 更新 292
なぜトヨタはやらない!? e-POWERで脚光の「ワンペダル」  意外なメリットと日産の狙いとは??

 ペダルひとつで加速も減速も思うまま! 日産 e-POWERの普及で脚光浴びた「ワンペダル」ドライブの狙いとメリット、デメリットとは?

 日産は2020年12月、新型ノートe-POWERを発売。従来設定のあった純ガソリン車を廃止し、エンジンで発電し、モーターで駆動する「e-POWER」専売となった同車は、発売後約1か月となる2月1日時点で2万44台を受注。月間販売目標の2.5倍に達するなど人気も好調だ。

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 そんなe-POWER独自の特徴が冒頭の「ワンペダル」感覚のペダル操作。アクセルペダルを「踏んで」加速させるだけでなく、「放す」ことで大きく減速できるワンペダルのメリット・デメリット、そして他社が追従しない理由とは?

文/御堀直嗣 写真/NISSAN

【画像ギャラリー】e-POWERの申し子!! 純ガソリン車を廃止した新型ノートを写真で見る!

■リーフから始まった「ワンペダル」は独特で新鮮な運転感覚

2016年、先代ノートに初搭載された「e-POWER」。エコカーとしてだけではなく、ワンペダルの新鮮なドライブ感覚も話題を集めた

 日産自動車は、独自のハイブリッドシステムであるe-POWERの特徴のひとつとして、アクセルのワンペダル操作を売りとしている。しかし、他社のハイブリッド車(HV)では、減速での回生の強弱切り替えは備えても、ワンペダルの採用はまだない。

 アクセルペダルでのワンペダル操作は、e-POWERだけの機能ではなく、日産の電気自動車(EV)であるリーフも初代から利用できた。また、EVのテスラや、BMWのi3なども、当初からワンペダル操作はできていた。

 特に初期のi3は、e-POWERと同様に積極的にワンペダル操作を使うよう促すアクセルの設定となっていた。そのため、はじめて試乗した際には、エンジン車での運転の癖が抜けていなかったため、戸惑いはあったが、間もなく慣れた。

 ワンペダル操作は、HVかEVかによるのではなく、モーター駆動のクルマで可能になる運転操作で、モーターは電気を流せば回転力を出し、力を加えれば発電するという、独自の機構によって成り立つ。

アクセルペダルでのワンペダル操作は写真の初代リーフから可能だった

 エンジン車では、加速のあとアクセルペダルを素早く戻す癖がついている。そのままワンペダル操作をすると、回生が強く働きすぎて急減速してしまい、滑らかな走行ができなくなってしまう。

 ワンペダル操作のコツは、アクセルペダルを踏むときも戻すときも、加減速の様子を確かめながら、穏やかに右足を動かすところにある。

 モーター駆動では、発進~加速の際にも、穏やかなアクセル操作で充分な加速が得られる。エンジンと違ってモーターは、電気が流れはじめたところから最大トルクを発生できる動力特性を持つからだ。

 エンジン車と同じ操作感覚で発進~加速を続けていると、電力消費が増え、一充電走行距離を自分の運転のせいで短くしてしまうことにもなる。

 穏やかなアクセル操作は、モーター駆動のワンペダル操作だけでなく高性能エンジン車でも求められる運転の仕方だ。急なアクセル操作は、タイヤを空転させかねず、それによって滑りを生じ、姿勢制御不能になる恐れがあるためだ。

 今日では、超高性能のスポーツカーやGTカーであっても、駆動力制御が行われているため、そうした繊細な操作が必要であることは実感しにくい。

■なぜトヨタはやらないのに日産はe-POWERでワンペダルを採用?

トヨタ RAV4 PHVでもワンペダル操作は技術的には可能だが採用にはいたっていない

 では、なぜ、HVが増えた今日、日産だけがワンペダル操作を特徴づけているのか?

 たとえばトヨタのRAV4 PHVを試乗した際、電気駆動系の技術者に、トヨタのハイブリッドシステムではワンペダル操作は不可能なのか質問すると、可能であるとの返答だった。しかし、採用していない。

 日産が、e-POWERを導入する際にワンペダル操作を機能のひとつとして採り入れた背景にあるのは、2010年にEVのリーフを市販したからだろう。

 このとき日産は、EVの特性を徹底的に研究し尽くした。そこから、ワンペダル操作の着想も浮かび、実用化し、市販したといえる。これを、HVのe-POWERへも応用したのだ。

 トヨタや他のメーカーのHVは、エンジン車を基準に燃費改善を目的として仕立てている。

 そこからPHEVへ発展させても、発想の原点はエンジン車の燃費改善だから、ワンペダルの発想は生まれない。気づかないのだ。また、アクセル操作の仕方によっては、運転しにくさを覚えさせると考えているのかもしれない。

 しかし、ワンペダル操作は難しくはない。単に慣れの問題だ。そのうえで、ペダル踏み替えの運転操作が減って、運転が楽になるだけでない、それ以上の効果を期待できる。そこを、次に話そう。

■ワンペダルのメリット「踏みかえは7割減」

リーフの「e-Pedal」を記したイメージ図。アクセルペダルのみのワンペダルで加速・減速・ブレーキといった動作を可能とし、踏み替えが減ることでさらなる“恩恵”も期待できる

 まず運転が楽になるという基本から、ワンペダル操作による運転操作が減ることについて日産は、アクセルとブレーキの踏み替えが7割減るとしている。さらに上手に活用する人なら、9割も減らせられるとの見解もある。

 理由は、日産のワンペダル操作は、発進~加速~巡行~減速~停止まで、クルマの走行のすべての領域でアクセル操作だけで済ませられるようにしている。停車まで利用するには、アクセルペダルの戻し方と、それに関連する回生による減速度から、停止線までの距離を目測できなければならない。

 しかし、私が助手席に同乗して体験した人は、一度距離感を助言すると、次から自分の目測でほぼ停止線に止められるようになった。

 それでも、もし、停止線の手前で止まってしまいそうになったら、再びアクセルペダルを少し踏んで前進させればよい。そして再びアクセルを戻せば、停止線に合わせて停車できる。

 逆に、もし行き過ぎそうになったら、ブレーキペダルへ踏み替えればいいだけだ。それも、かなり速度が落ちた状態からになるはずであるから、慌てる必要はない。

 近年、交通事故で取り上げられる高齢者のペダル踏み間違い事故も、ワンペダルを活用すれば、踏み替えの機会自体が大幅に減るのだから、誘発する可能性を下げられるだろう。

■「安全」にも寄与するワンペダル

足を離せば減速するという特性上、踏み間違いの事故も減らせると予想される

 あわせて、緊急事態で急停止しなければならないとき、ワンペダル操作では、急にアクセルペダルを戻した際には、強く回生が働き、急減速する。たとえばエンジン車で、1速ギアのときに、発進したあと急にアクセルを戻したときのエンジンブレーキのような急減速だ。

 「危ない!」と、思って、アクセルを戻したとき、グッと減速度が掛かるのと、そのままの速度でスゥ~ッと進んでしまうのとでは、人間の心理にも違いが出るのではないかと私は考えている。

 回生で急減速しはじめ、止まれるかもしれないと思えば、人は落ち着いてブレーキペダルへ確実に踏み替えられるのではないか。

 逆にスゥ~ッと進んでしまえば、止まれないかもしれないとの思いから、なおさら慌ててブレーキペダルを踏もうとして、かえって踏み損なったり、踏み間違えたりするのではないだろうか。

 ワンペダル操作は、緊急時の心理にも効果があると期待している。

 そのうえで、ペダル踏み替えでは、必ず空走時間というのがある。ペダルを踏み替える間は、アクセルもブレーキも、どちらのペダルも操作していないのであり、その間もクルマは走り続けている。空走時間は、0.7秒とされているが、運転技量や体力にもよるだろう、およそ1秒と考えておくといいのではないか。

 たとえば時速20kmというような低速でも、ペダルを踏み替える1秒間に5.5m進んでしまう。高速道路を時速100kmで走っていたら、27m以上進んでしまうのだ。この間は、運転者は速度調節を何もできない。

 ところが、ワンペダルで回生を使えば、ペダルを踏み替えている空走時間にも、減速しはじめる。たとえわずかな速度であったとしても、その速度低下が、最終的に衝突を免れたり、衝突したとしても衝撃を小さくしたりすることにつながるはずだ。

 クルマの電動化と、モーター特性をよく理解したうえでのワンペダル操作は、環境対応だけでなく安全対策にも効果を発揮する可能性を秘めている。それによって、交通事故被害者を減らせられれば何よりだ。

 ワンペダル操作の価値を充分理解し、その可能性を広く探るには、EVを市販し、モーター駆動の本質を深く見極める必要があると私は考えている。だから、自動車メーカー各社には、一刻も早くEVを市販してほしいのである。燃費改善だけの目を向けたHV開発では、新たな可能性に気づけないからだ。

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みんなのコメント

292件
  • なぜトヨタはやらないではなく、
    日産が独りで騒いでるだけです。

    だから絶賛のやり方が
    まるで布教活動のように不自然。
    何故ならそれは関係者だからです。
  • この記事の文末が「~だろう」「~予想される」「~私は考えている」「~ではないか」「~ではないだろうか」「~はずだ」と、あまりにも無責任な内容だ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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