普段、ATやCVTのクルマを運転していて、ふと疑問に思うことありませんか?
加速していく時、Dレンジに入れたままのほうが速いのか? 燃費を考えた場合には頻繁にシフトチェンジしたほうがいいのか? また長い下り坂ではエンジンブレーキを効かせないほうが燃費が良くなるのか?
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そんなAT&CVTのふとした疑問に答えます。いったいどんなシフトアップ、シフトダウンがベストな方法なのだろうか?
文/高根英幸
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】下り坂のエンジンブレーキ、信号待ちではDかNか?
燃費を優先するのか? 走りを楽しむのか?
最近はCVT車でもAT並みにつながりがスムーズになった車種も出てきた 。RAV4やレクサスUX、2020年2月発売予定の新型ヤリスには8速AT並みの性能を持つダイレクトCVTが搭載されている
クルマを運転して走らせることは、目的地までの移動手段でもあるが、運転操作自体を楽しんでいるドライバーも少なくないだろう。
2ペダルMTであれば、制限速度や周囲の交通状況に合わせてアクセルとブレーキで車速を調整してやるだけで、減速比とエンジン回転は自動的に最適な状態にしてくれる。
アクセルペダルとエンジンのスロットルバルブが直接ワイヤーでつながらなくなってからは、車速とアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジンECUが最適なギアと燃料の噴射量、スロットルバルブの開度に調整してくれている。
変速機もエンジンの負荷に応じたギアにシフトして、トルクコンバーターのロックアップクラッチの断続を行なう。
そのためAT(ステップAT)のDレンジは、基本的には燃費を最優先したシフトプログラムが組まれている。これは通常のステップATでもCVTでもDCTでも同じだ。
最初の発進こそ減速比を大きくして出足を良くしながら、速度が十分に乗れば減速比を小さくしてエンジン回転数を落とし、燃焼の回数を減らすとともに適度な負荷を維持する。
このあたりはCVTが得意とするところで、ベルトをプーリーが締め付けるための油圧損失を加味しても、エンジン回転を大きく下げることができるので、結果として燃費は向上するのである。
ステップATの多段化も、各ギアのつながりを緩やかにしながら変速比幅を拡大し、軽負荷時にエンジン回転を引き下げるための対策だ。
CVTでもステップATでも、発進をスムーズにするためエンジンからの駆動力の伝達にはトルクコンバーターを用いているが、最近のトルクコンバーターはロックアップ率を高めるためロックアップクラッチの容量が増え、トルクコンバーター自体は薄型化されており、トルク増幅効果はほとんどない代わりに撹拌損失も少ない。
このように駆動系のエンジニアが考え、走り込んで熟成した変速機の制御プログラムは、実によくできているから、Dレンジのまま走り続けても、走りにはあまり不満はないだろうし、燃費だってかなり良い(よほどアクセルをパカパカ踏み直したりすれば別だが)ハズだ。それでも、自分で積極的にシフト操作する方がメリットがあるケースもある。
キビキビと走りを楽しみたいならシフトチェンジを積極的に
パドルシフト付きのAT、CVTが増えてきた。積極的にパドルシフトを使って走りを楽しもう!
パワーユニットにスポーツモードが用意されているクルマであれば、運転を楽しみたい時には、アクセルペダルに対するクルマの反応が良くなって、キビキビとした動きになってクルマを操ることがより楽しくなる。
さらにMTモードでセレクターレバーやパドルスイッチによるシフト操作を行なうのは、さらに自分の意思をクルマの動きに反映できるので、クルマとの一体感や操作する楽しさを実感できるハズだ。山道や高速道路では、シフト操作することでドライブが俄然、面白くなる。
早め早めにシフトアップしてもDレンジより燃費はよくならない
クルマによっては早め早めにシフトアップしていくことで、Dレンジのまま加速後巡航するより燃費を向上させることもできるが、前述の様に最近のクルマではDレンジのままの燃費を上回るのはかなり難しい。
ハイブリッド車ではなおさらだ。こうした燃費への挑戦を、燃費計を見つつ走るのも、ドライブを楽しむ1つのモードと言えるだろう(ただし安全には十分気をつけて)。
下り坂ではエンジンブレーキを使っても燃費は悪くならない!
下り坂でエンジンブレーキを使うと、エンジン回転音が高まるので燃費が悪くなると思っている人が多いが逆に燃費にとっては優しいのだ。しかもNレンジに入れるのも大間違い。逆にATFを傷めてしまう
Dレンジのままでは、アクセルを戻すとエンジンブレーキがほとんどかからず、エンジン回転数はアイドリングにまで低下する。
平坦路ではそんな空走状態で走るのは燃費にはいいが、再び加速する際にはエンジン回転が上昇し、最適なギアになるまで加速を待たされてモタつくこともある。
強い(長い)下り坂やコーナーではエンジンブレーキを使った方がクルマは安定するし、ブレーキパッドの寿命を伸ばすことにつながる。
特にエアコンを強く効かせている夏場は、エンジンブレーキを使うことで燃料カットをしながらエアコンのコンプレッサーを駆動することができるので、覚えておくといい。
勘違いしている人が多いのは、下り坂でエンジンブレーキを使うと燃費が悪くなるということ。
一定の回転数からアクセルペダルを閉じるとコンピューターが「減速している」と判断して燃料の供給を止める「燃料カット」が作動するため、エンブレを使ったからといって燃費が悪化するなんてことはありえない。つまり、エンジンブレーキは燃費にも優しいのだ。
また、下り坂等でNレンジで惰性で走らせることで「燃費」を稼いでいると自慢げに話している人をたまに見かけるが、アイドリング回転分の燃料は消費しつづけるため無駄。まして、これはATを傷める行為。絶対にやってはいけない。
ATFの循環を担っているATFポンプの出力はエンジンの回転数に応じて決まるため、エンジンがかかっている限りオイル潤滑は継続されているものの、あくまでアイドリングレベルの循環量。
これに対し、タイヤ側軸の回転速度は下がらず、より多くの循環量が必要な状態のままなため、ATクーラーに流れるATF量が減少することでATFが過熱。
しかも、潤滑不足のままプラネタリーギヤが高速回転することにもなって焼き付く可能性があるからだ。くれぐれも注意したい。
回生ブレーキを強く利かせる時はBレンジに!
主にトヨタとダイハツのCVT車、およびトヨタ系のハイブリッドカーに設定されているBレンジ。Bの意味はブレーキで急な下り坂など、強いエンジンブレーキが必要な時に利用するポジション。またこのBレンジは低い変速比を維持するため登坂路でも有効
EVやハイブリッド車は、Bレンジにすることで回生ブレーキを強く利かせることができる。ちなみにBはブレーキのBである。
ただし回生ブレーキの減速Gだけでもブレーキランプを点灯させる車種もあるが、そのしきい値(境目となる値)に達しなくても普通のアクセルオフより減速するので、回生ブレーキを積極的に利用する場合は後方の車両にも注意しよう。
車間距離が少ないと感じたら、Bレンジに入れるのではなくDレンジのまま軽くブレーキペダルを踏む方が安全だ。こうすればブレーキランプは確実に点灯し、回生ブレーキも作動する。
また、雨の日のコーナーへの進入などで強くエンジンブレーキを掛けると、前輪に荷重が移動し過ぎて後輪の荷重が不足してしまい、リアタイヤのスライドを誘発する危険がある。
燃費に関してはBレンジに入れると、 強いエンジンブレーキを発生させるためにエンジンを空転させる制御となっており、Dレンジより燃費が悪化する場合がある。
逆にノートe-POWERでは、フットブレーキでは一切回生充電がなされないため、Bレンジを多用したほうが燃費は伸びる。
ATでそれほど強くエンジンブレーキがかかることは少ないが、CVTでシフトダウンして、強くエンジンブレーキを掛けるのもベルトに負荷が掛かるのでトラブルの原因になりかねない。CVTの頻繁なシフトダウンはよくないのだ。
CVT車の頻繁なシフトダウンはベルトに負荷がかかるのであまりお薦めできない
結論/ベストなAT&CVTの操作方法は?
各車のATはそれぞれP→R→N→D→マニュアルモードの+−、P→R→N→D→2→Lなど、Dレンジのほかに、Lレンジ、Sレンジ、M+−など、さまざまなパターンがある
結論として、燃費向上のためにはシフトアップするより、ミリ単位のアクセル操作の方が利くというのだ。
シフトダウンによるエンジンブレーキ、Bレンジによる回生ブレーキの利用は、適度に使えば燃費向上になり、クルマの安定性向上やブレーキパッドの節約にもなる。
ただし、下り坂での速度維持などでは積極的に利用したいが、あくまで減速はフットブレーキとの併用が基本と考えよう。
そして、セレクターを頻繁に動かすと内部が摩耗して寿命が縮むからDに入れっぱなしという人もいるが、それは間違いだ。
確かに動かせば摩耗はするが、10万回使ったところでそれによる疲労は微々たるもの。
むしろ、使わないシフトがあるよりも、常時使っていた方がバルブボディ(ギヤの切り替えを担っている油圧経路の切り替えバルブ)が固着するなどといったトラブルを起こしにくくなる。
ただし、信号待ちなどでは、わざわざ信号待ちでNレンジに入れる必要はない。
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