フロントガラスの下に情報表示 周辺視野で見る
時速100kmで走るクルマは、1秒間に約28mを移動する。これはグランドスラムのテニスコート1面分よりも少し長い。ドライバーの反応時間を考慮すると、これは恐ろしく長い距離である。そして、クルマが高速で移動する距離を過小評価することは、トラブルに巻き込まれる原因の1つとなる。
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オーディオ製品やインフォテインメント・システムを手がけるハーマン(Harman)は、ドライバーの情報収集にかかる時間を短縮するために、従来のヘッドアップディスプレイに代わる次世代モデルを考案した。
「レディビジョンQVUE(Ready Vision QVUE)」と呼ばれるこの製品は、フロントガラスガラスの底部にある「フリット」という黒い反射帯に情報を表示するものだ。量産車においては、スクリーンの根元から少し上に延長され、表示領域が拡大されることになる。
ドライバーの視点では、ディスプレイは前方の道路に近い位置にあるため、目線を大きく落とすことなく、周辺視野で情報を得ることができる。
ハーマンによると、ドライバーはレディビジョンQVUEをちらっと見るのに0.5秒から1.0秒を費やすという。これに対し、ダッシュボード中央のインフォテインメント・スクリーンの場合は1.0秒から2.0秒、サードパーティ製のスマートデバイスの場合は2.5秒もかかるそうだ。
偶然にも、2.0秒というのは安全運転に関わる重要なタイムスケールである。よく耳にする「2秒ルール」は、ある地点を前方車両が通過してから自車が通過するまでの時間を2秒とすることで、安全な車間距離を判断しやすくするためのものだ。
しかし、このルールを守ったとしても、ディスプレイで情報を探して2.0秒を食ってしまうのは、潜在的にリスクがある。
特にディスプレイやタッチスクリーンは、注意散漫を引き起こすとして非難されてきたが、ドライバーの視線を道路上、または道路近くに維持することが肝要だ。
従来のヘッドアップディスプレイ(HUD)はある程度その役割を果たし、拡張現実(AR)技術を取り入れるなどして進化しているが、HUDはドライバーの視線にある程度の視覚的複雑さをもたらす可能性がある。
ハーマンの新しいシステムは、最新鋭戦闘機というよりは、従来の自動車の計器類に近いものだが、物理的な計器類よりも高いところへ配置されている。
投影反射型ディスプレイには、サムスンのディスプレイを2台使用しており、「低ハロー効果」によって文字の端のぼやけが軽減され、鮮明な画像を投影するという。
その結果、あらゆる状況下でも読み取りやすい情報がまっすぐ目の前に現れる、とハーマンは主張している。
また、ドライバーの認知負荷が高いかどうかを検知し、負荷が軽減するまで表示される情報量を減らすことができる「レディ・ケア(Ready Care)」と呼ばれる技術との融合も計画されている。
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