BEVのミニバン、e-ベルランゴ
英国では、バッテリーEV(BEV)が着実に増えている。急速充電器のそばでは、完了を待つ友好的なユーザー同士が、会話を楽しむ様子も時折見かける。不満だらけの、英国の充電インフラについて盛り上がっているようでもあるが。
【画像】ミニバンにBEV追加 シトロエンe-ベルランゴ 拡大中 ワンボックスの電気自動車 全94枚
ジャガーやテスラだけでなく、キアやポールスターなど各ブランドのユーザーが、価格や航続距離、充電時間、動力性能などを比較していることもある。自分以外のクルマにも興味を抱いている人にとっては、情報収集できて楽しいのだろう。
筆者はシトロエンのミニバン、e-ベルランゴ Mを数か月お借りしている。AUTOCARの姉妹メディアの企画として。だが、このクルマに関心を抱いてくるドライバーが少ないことに、以前から寂しさを感じていた。
充電ケーブルを接続すると、驚いた表情を見せる人も少なくなかった。BEVだと知られていない様子。駆動用バッテリーの容量や航続距離を聞かれることは、殆どなかった。
そんなある日、日産のBEVミニバン、e-NV200 コンビに乗ったカップルと出会った。西へ向かう高速道路、M4号線のサービスエリアで。
彼らは、クルマには大きな荷室が必要だったと話す。数年前は、英国で販売されているミニバンでBEVを選べたのは、e-NV200だけだった。40kWhの駆動用バッテリーで、199kmの航続距離がうたわれていた。
駆動用バッテリーは50kWh、航続距離は280km
グレートブリテン島の西部、ウェールズ州に住む2人は、定期的にロンドンの家族を訪ねているらしく、途中のサービスエリアで充電しながら自宅へ帰るのだという。その日も、帰路だった。
現在はオプションで50kWまで増やせるが、数年前のe-NV200の急速充電能力は22kWと低い。充電が完了するまで、ゆっくりコーヒーとビスケットを口にしながら、休憩するのがお決まりだと教えてくれた。
隣に並んだe-ベルランゴに、そのカップルは興味を抱いた。最初に男性が、適度なボディサイズと、大きな荷室へ感心したようだった。続いて、待っていた質問が飛んできた。「駆動用バッテリーの大きさはどのくらいですか?」
筆者は少し誇らしげに、駆動用バッテリーが50kWhで、航続距離はWLTP値で280km、急速充電は50kWまで対応することを話す。彼は驚いた様子だった。ロンドンからウェールズまで、どれだけ短時間に移動できるかを計算し、感心していた。
その日以来、e-ベルランゴへの筆者の印象は一層良くなった。ワンボックス型のボディで、実用性は評価していた。一方、高速道路では210km程度に短くなる航続距離が弱点だと感じていたのだ。冬場は160km近くまで悪化してしまう。
本来、シトロエン・ベルランゴは実用性重視のモデル。160km以上離れた目的地を目指す場合、充電計画を立てなければならないというのは、大きな足かせといっていい。しかも、充電器は故障中のこともある。
最新のBEVでも、充電の心配から開放されたわけではない。とはいえ、航続距離はe-ベルランゴより遥かに長い。
愛着が湧く可愛さと、荷物を運べる頼もしさ
e-NV200に乗ったカップルとの出会いで、ユーザーや比較対象で価値観は大きく変わるのだと改めて認識した。筆者は大きな荷物を運ぶ機会が少ない。車内空間と引き換えに、大きな駆動用バッテリーが欲しいと考えてきた。
e-ベルランゴは、このボディサイズのBEVとしては突出して車内が広い。実用性では圧勝といえる。トヨタとフィアット、プジョーが提供している、兄弟モデルにも当てはまることではあるが。
テスラ・モデルXは大きな車内空間を備えた、7シーターではある。ガルウイング・ドアもカッコいい。それでも、シンプルでスクエアなデザインや、使い勝手に優れたスライドドアと立方体状の荷室を備えるe-ベルランゴの方が、筆者には魅力的に映る。
キア・ニロEVのような未来感や上質さはないかもしれないが、ミニバンの便利さには代えがたいものがある。着座位置が高く、運転席からの見晴らしは良好。舗装の剥がれた穴も発見しやすい。
ボディに施されたオレンジ色のトリムや、専用のフロントグリルも可愛い。ペットのように、愛着が湧いてしまう。それでいて、沢山の荷物を運んでくれる頼もしさがある。
これまでに、グレートブリテン島の端まで旅行をし、芝刈り機を修理店にも運んだが、常に荷室には余裕が残っていた。容量はリアシートを起こした状態で775L。折りたためば3500Lへ拡大できる。
心からリラックスできるBEV
ダイレクトな操舵感も美点。都市部でも運転しやすい。しかも、価格は内容を考えればお手頃と呼べる範囲にある。
電費効率は、市街地中心に走れば良好。高速道路では空気抵抗で急速に悪化するものの、僅かにスピードを緩めることで改善できることを発見した。
毎回、e-ベルランゴでの発進は、エコ・モードを選び回生ブレーキを強くすることから始まる。できる限り穏やかに加速し、高速道路では100km/h以上は出さない。アクセルペダルの扱いには、慎重さが欠かせない。
確かに速くはない。しかし、穏やかに走るe-ベルランゴの車内は、心からリラックスできる。日常の暮らしにも影響するように思う。
普段使いのミニバンとして選ぶには、ある程度の妥協は必要だろう。気軽に高速道路を走ったり、気ままに遠くは目指せない。一方で、できないことではなく、できることに注目することで評価が変わることも事実。
現在の多くのBEVにはない長所が、シトロエンe-ベルランゴには備わっている。
シトロエンe-ベルランゴ M(英国仕様)のスペック
英国価格:3万1995ポンド(約534万円)
全長:4753mm
全幅:1848mm
全高:1879mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:280km
電費:6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2440kg
パワートレイン:AC永久磁石モーター
駆動用バッテリー:50.0kWh
最高出力:138ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック
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