「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回はTRDがチューンした「カローラアクシオGT」だ。
TRD カローラアクシオGT(2009年)
今やすっかりオジサン車のイメージが強くなったカローラアクシオ(以下、アクシオ)。メインユーザーは団塊世代よりも上。実車を見るとこのクラスとしては別格の完成度の高さにただ驚くものの、スポーツ性は皆無に近い。
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ラインアップには1.5Lのマニュアルミッション車も設定されているが、それははっきり言ってAT嫌いの古典派のためのものでしかない。だから、スポーツタイプのクルマを欲する若者たちにはどうにも響かない。それがアクシオのイメージだ。
だが、ここにきて意外にもカローラのモータースポーツ活動が復活を果たすことになった。そのせいか、アクシオが気になる存在になってきた。その意気込みを少しでも一般のユーザーに展開しようと、TRDは「カローラアクシオGT」というクルマを開発したというし、このクルマをベースにN2ワンメイクレースも今年(編集部註:2009年)7月から開催されるという。これは相当に期待できるかもしれない。
その内容は、以前に紹介したモデリスタ ヴィッツ同様の1.5Lターボエンジンとマニュアルミッションを搭載。引き締められた足まわりとともに17インチタイヤ&ホイールをおごったり、さり気なくエアロパーツを身にまとった渋さもいい。ひと昔前なら「羊の皮をかぶった狼」というキャッチコピーで形容されそうなテイストだ。
走り出すと、ノーマルのアクシオとはまったく違う。ステアリングに伝わるフィーリング、お尻や背中で感じる硬さ、さらには少し重厚さを増したエキゾーストノートまで、どこまでもスポーティな雰囲気が漂ってくる。
ワインディングで元気に走らせれば、全開発進では雨の中を派手にホイールスピンさせながら加速する。ジャジャ馬ぶりは十分で、これは1速がヴィッツ ターボに比べてローギアードなミッションを搭載しているからだろうが、いずれにしても、この加速感は新鮮で楽しめるものだった。
その一方で3速以降はハイギアードな設定になっているため、高速巡航は優れている。ゼロスタートの豪快さとGTらしい巡航性能が同居する仕上がりは、4ドアセダンとしての面目を保っている。
こうしたバランスは乗り心地や走りにもあてはまり、ガチガチにスポーツに徹していないところもアクシオGTらしい。ワインディングでは適度なロール感で操る楽しみを感じ、巡航状態では突き上げを感じないレベルで快適に走ることができる。
また、オプション設定のLSD(リミテッド スリップ デフ)を装着すれば、ターボのトルクとトラクションでスロットルコントロールまで楽しめる部分もある。スポーツ志向の人には少し物足りないかもしれないが、これはこれで絶妙なバランスを感じさせてくれる。
これなら、もうオジサン車なんて呼ばせない。広い年齢層のクルマ好きが幅広く楽しめる、通なスポーツセダンに生まれ変わったと言えるだろう。
■トヨタ カローラアクシオGT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1695×1430mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1160kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1496cc
●最高出力:110kW<150ps>/6000rpm
●最大トルク:196Nm<20.0kgm>/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きFF
●タイヤ:215/45R17
●当時の車両価格<税込み>:249万5000円
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