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愛車の履歴書──Vol16. 市原隼人さん(前編)

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愛車の履歴書──Vol16. 市原隼人さん(前編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第16回の前編。俳優の市原隼人さんが約10年間所有するカワサキ「Z1」に迫る!

自分の人生を重ねる、カワサキZ1への愛

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俳優・市原隼人さんの話を伺いはじめてすぐ、「ん?これはちょっと違うぞ……」と、思った。芸能界に“乗りもの好き”は多いが、市原さんのバイクに対する想いは“好き”というレベルじゃない、まさに“愛”というべきものだったからだ。

「食事を頂くにしても、いつも同じ定食屋に行き、おなじメニューしか頼まない。気に入ったらひたすらそれだけ。自分はそういうタイプなので。だからバイクも僕が50歳になっても70歳になってもずっと付き合っていける、心から愛着のもてる1台がほしい。そう思って探していました」

10年ほど前に手に入れた市原さんの愛車は、1974年式のカワサキ Z1。当時、後発の二輪メーカだったカワサキが、社運を賭けて開発した大型バイクだ。

日本国内では750cc以下のバイクしか販売できなかった時代、Z1は903cc空冷4気筒エンジンを積み、世界最大のマーケットだったアメリカ市場に向けたモデルとして1972年に登場した。誕生から半世紀以上経った今も伝説的な存在であり、多くのバイク乗りにとって憧れのバイクだ。

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市原さんが訪れたのは、カワサキ空冷Zの専門ショップとして知られる「PAMS(パムス)」だった。そこで出会ったのは1974年式の「Z1 A」と呼ばれるモデル。デトロイトから運ばれてきた個体で、PAMSにより整備され、とても良好な状態だった。

「いま思えば、出会ったのがPAMSだったから、Zをここまで好きになれた。彼らのZに対する情熱に心を打たれたんです。Zについて何かを押し付ける訳でもなく、自然体で付き合っていける。とくに用事がなくてもお店に行ってみたり、オーナーのご自宅にお邪魔してゴハンを頂いたり、家族のようなお付き合いをさせていただいています」

市原さんのZ1には唯一無二のカスタムが施されている。燃料タンクは深いワインカラーにペイントされ、ミラー加工されたヘッドライトやウィンカーレンズが美しく調和している。

機能面では前後のサスペンションやブレーキなど脚まわりが強化され、キャブレター、マフラー、ハンドル、ステップなど隅々にいたるまで、自身のこだわりが行き渡っているのだ。

「手に入れてしばらくは、そんなにカスタマイズしておらず、ほぼオリジナルの状態で乗っていました。それはそれで楽しいんです。50年前のバイクですから、船のようなゆったりした乗り心地で、バイクと会話しながら進んでいくような感じ。でもあるとき“ガラッと変えてみようか”と、一気にカスタムしました。まずはエンジンの排気量を903ccから1015ccに拡大。設計上余裕をもたせてあるので、伸びしろがあるんです。だったらコイツの性能をギリギリまで引き出してみたい、と。増えたパワーに対応するようにリアホイールのインチを上げ、幅もワイドに。フロントフォークも太くして剛性を高めてます。走らせると、バイクの重心がギュッと内側に入って締まった感じになり、一体感が格段に高まりました。リヤタイヤの駆動力がしっかりフロントに伝わり、そのあいだに自分が居る、ということが実感できる。ブレーキもフロントをダブル、リアをシングルのディスクに換えて、“旧車は走らない”というイメージはまったく覆されましたね」

カスタムするとき、市原さんがPAMSに伝えたのは「なるべくオリジナルの雰囲気、ディテールを保ちたい」ということだった。

そこには市原さんの、Z1に対するリスペクトの気持ちが込められている。

「Z1は世界初の空冷4気筒エンジン搭載車として世に出そうと、カワサキが1960年代後半に開発を進めていたんです。でもホンダが1969年に出したCB750FOURに先を越されてしまった。そこで車体やエンジン設計を全面的に見直して、CB750FOURより大きな空冷900cc4気筒エンジンを積んでアメリカ市場に投入した。勝負をかけたんですよね。そういうストーリーが好きで、自分自身に重ねてしまうんです。俳優としての可能性をもっと追求したいし、まだ知らない自分を見てみたい、いろんなことに挑戦したい。Z1に乗っているとそういう気持ちが湧いてくる、自分を奮い立たせてくれるんです」

自らZ1を走らせてカワサキ本社がある神戸を訪れ、1960年代にカワサキの大型二輪開発を牽引し、Z1の開発責任者をつとめた名エンジニア、大槻幸雄さんに会いに行った。

ちなみにこれは仕事とは関係なく、プライベートで行ったというから、その思いの熱量には驚かされる。

「僕の人生を豊かにしたZを産み出してくださり、本当にありがとうございます。と直接伝えることができました。大槻さんは優しく“ありがとうございます”と仰ってくださって。感動しました。とてもいい時間でした。Zと一緒に神戸に“里帰り”できたのも感激でした」

俳優として多忙な日々を送る市原さん、自由な時間は限られるが、そんな中でもZ1に触れ、弄り、走っているという。そしていつかZ1で長い旅に出るのが今の夢だ。

「日本人でありながら、じつは日本のことをあまり知らない、と気づいたんです。だからZ1で日本一周してみたいと思っています。全国各地を見て回って写真を撮ったり、各地の市場で海鮮や野菜を買って料理したり、そんな旅がしてみたいです。役者の仕事は、常に“自分は何者か”ということを問われているようなところがあるので、Z1で旅をすることで、また違った自分を見つけられる気がします。Z1とはそうやってずっと一緒に歳を重ねていきたいですね」

後編では市原さんが憧れていた、1959年型のシボレー「インパラ」との対面をリポートする。

【プロフィール】市原隼人(いちはらはやと)1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。2001年に映画『リリイ・シュシュのすべて』でデビュー。近年の主な出演作は『おいしい給食』シリーズ、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、『正直不動産』、『太陽は動かない』、『ヤクザと家族 The Family』など。秋には台湾制作ドラマ『商魂』、冬には『正直不動産スペシャル』が放送予定。

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文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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