漫画『サーキットの狼』連載開始から50年! スーパーカーブームを振り返る
1970年代後半に日本を席巻した「スーパーカーブーム」のきっかけは、池沢さとし(現・池沢早人師)さんによる漫画『サーキット狼』の大ヒットでした。その連載開始が週刊少年ジャンプ1975年1月6日号(発売は前年12月10日)ということで、AMWでは2025年を「スーパーカーブーム50周年」と見立て、当時の熱狂を知る皆さんに思い出を振り返ってもらうことにしました。今回は、当時はブームに乗っかっていなかったという元プロミュージシャンの自動車ジャーナリスト、青山尚暉さんです。
半世紀前「BB対カウンタック」に熱狂!「将来絶対フェラーリに乗る!」と決意して自動車ジャーナリストになりました【極私的スーパーカーブーム】
70年代、夜の六本木で見かけたロータス ヨーロッパ SP
じつは、1970年代のスーパーカーブームに特別な興味は抱いていなかった。当時、ボクはプロミュージシャンとして活動し、免許取得以前のクルマは楽器を運ぶ道具であり、読む本は音楽雑誌ばかりであった。もっとも、クルマそのものには子どもの頃から興味があり、ミュージシャンをやめたあとは、寄稿していた音楽雑誌の会社が自動車専門誌を立ち上げるということで、1980年代初頭、音楽雑誌の会社にライトチューニングしたクルマで通っていた筆者に白羽の矢が立ち、いきなり自動車専門誌の編集者になった経緯がある。
話を1970年代に戻せば、イタリアのスーパーカーにほとんど興味がなかったボクは、学生のくせに週末は夜な夜な六本木で遊んでいた。ここからは1970年代の六本木を知る方だけが分かるかも知れない話で申し訳ないが、ボクたち学生男女仲間が生意気に通っていたのが、当時の「パブカーディナル(1階がカフェ&バー、2階がレストラン)」、イタリア料理店できゅうりのサラダが絶品だった「シシリア」、ロアビルの地下にあったカレー専門店の「サクソン」、その反対側にひっそりとあった墓地近くの、かまやつひろしさんともお会いした、店内が金網席で大音量のロックが終始鳴り響くロック好きの若者が集う「ロックショップ」などだった(集合、待ち合わせは原宿のペニーレーン)。
当然、地下鉄で六本木に降り立つのだが、必ず通る芋洗い坂の頂点に「アマンド」があり、その坂で週末の夜に必ずと言っていいほど見かけたのが、『サーキットの狼』を読んでいないボクでも眼に焼き付いた濃紺のボディにゴールドのストライプで決めたロータス「ヨーロッパ SP」だった。
ブリティッシュロック好きのハートを直撃
ある夜、六本木に止まっていたロータス ヨーロッパ SPに恐る恐る近づき、丸目のヘッドライトや、特徴的なサイドフィンを持つリアセクション、どう見ても乗りにくそうなタイトなコクピット、ウッドバネルが張られたクラシカルでメカニカルな6連メーターのインパネをスーパーカー好きの子どものように食い入るように見ていたら、偶然、オーナーが戻ってきて、「オレのロータス、カッコイイでしょ」と言って、Y字メンバーに抱きかかえられたエンジンルームを自慢げに見せてくれたりした思い出もある。
後に調べまくったのだが、地を這うように低いバックボーンフレーム& FRPのボディは全高たった1080mm(フェラーリ 308GTBは1120mm)。ロータス「エラン」同様、ジョン・フレイリングのデザインで、ヨーロッパSPはロータス製の直4 1558cc DOHC 126ps+5MT(以前は直4 OHV、82psのルノーエンジン+4MT)を特徴的なリアに搭載。
イタリア製スーパーカーと比べれば、ずっと小さく(全長4000mm×全幅1635mm)、スポーツカーとしては廉価な英国製ミッドシップスポーツカーだったはずだが、ピンク・フロイドやディープ・パープル、ユーライア・ヒープ、プロコル・ハルムなどの英国プログレッシブロック、ハードロックに心酔していたブリティッシュロック好きのボクのハートに刺さるべくして刺さった。
若き時代を謳歌した1970年代の心象風景として記憶に残る、自身にとってのスーパーカーが、夜の六本木の街に映えた濃紺のロータス ヨーロッパ SPだったのだ。後にどこかで『サーキットの狼』を読んで(すいません、リアルタイムじゃなくて)、主人公の風吹裕矢がドイツやイタリアのスーパーカーとバトルした漫画の中のロータス ヨーロッパ SPの存在を知り、改めて1970年代の思い出が蘇り、感動したものだった。
>>>それぞれの【極私的スーパーカーブーム】はこちら
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みんなのコメント
景色見れないじゃん(°▽°)