■排気エネルギーを利用する過給器として歴史がある「ターボ」
ガソリンとモーターを組み合わせた「ハイブリッド」と並び、最近は「ダウンサイジングターボ」と呼ばれるターボエンジンを搭載するモデルが増えています。
「ツインターボ」を聞かなくなったワケ 時代と共に変化し続ける「ターボ」という技術
排気量をダウンさせつつ、ターボによって排気量が1クラスも2クラスも上のエンジンと同等の動力性能を発揮できることから、とくに欧州車メーカーから続々と登場しています。
国産車でも、2019年9月にフルモデルチェンジしたトヨタ「カローラ」や、スズキ「スイフトスポーツ」、ホンダ「ステップワゴン」「シビック」など、さまざまなモデルにダウンサイジングターボが搭載されています。
最近のターボエンジンは、なぜ小排気量化されたものが主流になったのでしょうか。
ターボの歴史は古く、1905年にスイスの蒸気タービン技術者が特許を取得し、船舶や第一次大戦の軍用機などに採用されてきました。
市販車としては、1962年にアメリカのGMが「オールズモビルF85」「シボレーコルヴェア」にオプションとして設定したり、ドイツのBMWが1973年に発表した「2002 Turbo」にターボエンジン初搭載されるなど、すでに50年以上の歴史があります。
ターボは、エンジンに取り付けられる過給器のひとつです。エンジンが燃料を燃焼した後に発生する排気ガスのエネルギーを活用して、タービンと呼ばれるプロペラのようなパーツを回転させ、大量の空気を取り込んで圧縮し、燃焼室に送り込むことで、より大きなパワーを得ることができるというものです。
エンジンが発生させた排気エネルギーによってタービンを回転させるメカニズムであるため、かつてのターボエンジンは、大きなパワーを得るのに大きなタービンを採用すると、排気ガスの流量が多くならないと空気を圧縮するのに時間がかかるというのが難点でした。
この時間差(タイムラグ)は「ターボラグ」とも呼ばれ、エンジンの回転数が上がるにつれタービンの回転数も上昇し、ある瞬間爆発的にパワーが発生することから、「ドッカンターボ」とも呼ばれていました。
ドッカンターボ搭載モデルは、エンジンが低回転域では「スカスカ」状態なのですが、「パワーバンド」と呼ばれる一定の回転域や速度に達すると一気に加速する特性を持っていました。
なかでも1980年代は、ハイパワーなドッカンターボが全盛で、日産「シーマ」やホンダ「シティターボ」、三菱「スタリオン」などがその代表格でした。
ドッカンターボは、とにかく大量の空気を圧縮してエンジンに送り込み、燃料を大量に消費させるという性格のため、当然ながら燃費は悪く、2000年代には不況やエコ意識の高まりとともに、表舞台からフェードアウトしていったのです。
■小排気量エンジン+ターボで燃費とパワーを両立
パワー重視の時代から、世の中のニーズが環境性能や経済性重視へと変化するにともない、ターボの特性も変わってきました。
もともと排気エネルギーを有効活用することを目的として開発されたターボですが、ピークパワーではなく低回転域から過給がかかりやすく扱いやすさを優先させた「マイルドターボ」が注目されていくようになったのです。
このマイルドターボのトレンドは、2007年にフォルクスワーゲンが「ゴルフ」に搭載した「TSI」エンジンあたりから始まったといえます。TSIは、低回転域用のスーパーチャージャーと高回転域用のターボを搭載するツインチャージャーでしたが、のちにターボチャージャーのみの「TSI」に代わっていき、現在に至ります。
小排気量化にともないエンジンも小型化させた「ダウンサイジングターボ」は、エンジン内部の摩擦やロスを軽減させたり、直噴などの技術進化もあって、小排気量の経済性を損なうことなく大排気量並みの性能を実現。経済性と環境性能の向上をもたらしました。
日常域のトルクを増大させる特性も持たせることから欧州で人気を得て、乗用車の7割がターボ搭載車になったほどです(2016年時点)。一方で、排気量で税金が変わる日本では、小排気量が優遇されるため、ダウンサイジングターボが普及が進みつつあります。
※ ※ ※
このような流れのなかで、エンジンそのものの役割が変化してきています。
ホンダの「i-MMD」や日産の「e-POWER」などのハイブリッドシステムは、「駆動力はモーター、そのモーターを動かす電力はエンジン」という新しいシステムも登場しました。
より効率的なエンジンが求められる現在では、ハイブリッドやダウンサイジングターボといった、環境性能と動力性能を両立したモデルが主流になっているのです。
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