運営元:旧車王
著者 :加藤 久美子
最高32馬力!日本最古の自動車年鑑で昭和初期の東京を走ったクルマを調べてみた
■2022年6月に公開された映画「アライブフーン」『ALIVEHOON アライブフーン』(監督 下山天)は、日本初の本格ドリフト映画である。
FIA公認のモータースポーツであり、世界数十カ国で競技としても開催されているドリフトだが、その始まりは日本だ。
しかし、日本で生まれたにもかかわらず、これまで本格的な実写のドリフト映画は作られてこなかった。
日本を舞台にしたワイルド・スピード『TOKYO DRIFT』(2006年)はハリウッド映画だし、実写版映画『頭文字D』(2005年)も香港映画である。
アライブフーンのすごいところは監督、スタッフ、俳優陣、そしてクルマに、ロケ地に至るまですべてが純日本製。
土屋圭市氏監修のもと、CGは一切なく、中村直樹、久保川澄花、横井昌志、北岡裕輔、齋藤太吾、川畑真人のトップレーサーたちがド迫力のリアルなドリフトを披露している。
また、土屋圭市氏とレーシングドライバー織戸学氏も本人役で出演している。
映画はレースゲームに驚異的な才能を持つ若きゲーマー、大羽紘一(野村周平)が解散の危機に瀕するドリフトチームにスカウトされたところから始まる。
リアルのドリフトレースに挑戦し仲間たちに支えられ、その才能をさらに昇華させていくストーリーだ。
日光サーキットを除くロケのほとんどはドリフトの聖地「エビスサーキット」をはじめ福島県内各地で行われており、登場する競技車両は日産シルビアS15(エンジンは2JZ)、トヨタMarkII(2JZ)、トヨタチェイサーなど海外でも人気急上昇中の旧車が中心となっている。
■海外で快進撃!その勢いは日本に「逆輸入」2022年6月に日本で公開された際も非常に評価が高く、「フォーラム福島」では11週にもわたるロングラン上映となった。
だが、高評価のわりには全国的な盛り上がりにはやや至らない部分もあった。
しかし、その後、8月末頃からスタートした海外での上映で日本を大きく上回る快進撃が始まる。
2022年末までに世界15カ国で劇場公開されシンガポール、タイ、台湾ではTOP10入りしてタイの映画サイト人気ランキング1位を獲得。
台湾では6週間のロングラン、フィリピンでは25万人を動員した。
9月に米国シカゴで開催された映画祭【Asian Pop-Up Cinema】では最高栄誉である《Audience Choice Award/観客賞》を受賞。
オランダの映画祭では観客投票3位を獲得した。
そして2月半ばには、世界最大の映画評価サイト『IMDb』における米国在住者からの評価の平均が、日本映画史上最高点の「9.0」を記録した。
アメリカでの本格上映は始まっておらず、シカゴで開催されたアジア映画の祭典【Asian Pop-Up Cinema】の2回だけでこの高評価である。
アメリカでの日本車旧車の人気は留まるところを知らないし、ドリフト人気も日本をはるかに上回る。
アメリカでの公開が実に楽しみである。
いち早く配信が始まった台湾でもすこぶる高評価だ。
台湾では『AliveDrift 極速甩尾』とのタイトルで配信が始まり、前宣伝ゼロの状態でスタートしたものの、直後に春節連休期間を迎え、視聴ランキングは堂々の1位を獲得している。
台湾にも熱狂的なファンが多数存在している。
1月14日には日本映画の歴史を変えるできごともあった。
この日、米軍三沢基地(青森県)にてアライブフーンが上映されたのである。
日本映画が米軍基地で上映されるのは前代未聞。
全国各地にある米軍基地の映画館ではアメリカと同じ映画が上映されるのが基本だからだ。
70年に及ぶ米軍基地の歴史の中で純然たる日本映画が上映されたことはこれまでなかった。
■日本でも今、全国各地で再上映が行われている!東京では4月2日に上映そして海外の勢いは日本に「逆輸入」されつつある。
昨年12月にはドリパス(一般登録者から要望のあった上映リクエストを元に、上映イベントを開催するためのサービス。株式会社インコムが運営)の再上映リクエスト「もう一度映画館で観たい映画」において、1位となったことで再上映が決定。
1月15日のTOHOシネマズ日本橋から再上映がスタートしており、これまで、東京、栃木、茨城、大阪、福岡、仙台、そして3月4-5日の福島で上映された。
福島は当初3月4日だけの予定だったのだが、あまりにも希望者が多く、急遽、5日の上映も行われた。
すでに上映した青森(3月10‐11日)、尼崎(3月17日)に続き、今後は苫小牧(3月25日)での上映が予定されており、4月2日(日)には再び東京(秋葉原UDXシアター)で上映される。すでにチケットは発売開始となっているが、限定170枚で売り切れ次第販売終了となるので、見たい方はお早めに。
3月4日にはアライブフーンの聖地巡礼ツアーが福島県内で開催され、遠くは何と台湾からの参加者含めて選ばれた約20名が下山監督とともに映画の舞台を回った。
福島県相馬市の相馬港や松川浦、伊達市梁川町のナプロアース、二本松市のチューニングショップRGF、福島市の福島日産自動車福島郷野目店など。
なお、福島郷野目店の倉庫は主人公の部屋として最初から何度か登場する印象的な場所だ。
非常に好評だった「聖地巡礼ツアー」だが、今後はアライブフーンのファン有志によって開催される可能性もあるとのこと。
■下山天監督からのメッセージ「自動車を取り巻く環境が激変する中で、本作で描いた《クルマと人間の熱い関係》が、将来寓話にならないように、まだまだ世界中の皆さんにアライブフーンを観ていただきたいですね」
『ハリウッドが100億円かけても作れない奇跡のドリフト映画』と絶賛されるアライブフーン。
クルマ好き、旧車好きならぜひとも見て欲しい映画である。
[ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]
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