■絶版車の純正部品は年を追うごとに入手困難な状況に
1989年に発売された「R32型 スカイラインGT-R」は、現在も中古車価格が高騰していますが、これはアメリカなど海外へ流出しているのが原因のひとつといわれています。それに引きずられるように、後継モデルの「R33型/R34型 スカイラインGT-R」も価格が高騰して、いまや1000万円オーバーも珍しくない状況です。
1980年代から1990年代の絶版車の高騰は「スカイライン」に限った話ではありません。ホンダ「NSX」やトヨタ「スープラ」、ポルシェ「911」なども程度がよいと軒並み新車価格以上で売られています。
モノの値段は需要と供給で決まります。ここまで高騰しても買うユーザーがいて、価値が認められているクルマであるということです。
そんななか、日産は2018年11月29日に、「スカイラインGT-R」用「ニスモヘリテージパーツ」をR32型に加え、R33型、R34型にも拡大し、発売すると発表しました。
この「ニスモヘリテージパーツ」とは、純正部品のことで、すでに生産が終わった純正部品を再生産、再販売するということです。なお、部品の販売はニスモからとなっています。
通常、フルモデルチェンジして従来型の生産が終了しても、部品は引き続き販売されます。しかし、生産終了後10年もすると需要のない部品は製造が廃止され、残った在庫のみを販売し、在庫がなくなるとほとんどはそのまま欠品という状態になり、もう買うことはできません。とくに外装部品や内装部品は欠品になるのが早い場合が多いです。
「スカイラインGT-R」も同様で、最終型の「R34型 スカイラインGT-R」は2002年に生産が終了となり、部品も欠品が多くなっていました。
そこで、2017年に日産/ニスモ/オーテックジャパンの3社が共同で、まず「R32型 スカイラインGT-R」の部品を再生産することになりました。
■「スカイラインGT-R」の部品が続々と再生産・再販売された理由は
「R32型 スカイラインGT-R」の部品で再生産・再販売されたのは、当初はワイヤーハーネス、ホース/チューブ、エンブレム、外装部品など、約80の部品からでした。
車検を通すための部品や、クラッチといった消耗品は以前から継続して入手できましたが、バンパーやエンブレムなどの外装部品は新品が入手できなかったため、オーナーには朗報だったことでしょう。
この取り組みが日産から発表された際に、ニスモの片桐隆夫社長に話をうかがうと「スカイラインGT-Rも年数が経つにつれて部品がなくなってきています。海外の方も含めてみなさん、大事に乗ってくださっていて、そこをバックアップしなければならないと思っていました。
大事な部品が入手できないという状況で、ニスモとしてできることを話し合ったとき、パーツを復刻するというアイディアが出ました。しかし、ニスモだけでは実現できません。そこで日産に相談をしたところ、快く協力を申し出てくれて、一気にプロジェクトを立ち上げ進めました」と語っていただきました。
※ ※ ※
これまでも、ある程度バックオーダーが溜まり、部品が再生産された例はありますが、メーカーが率先して再生産するのは非常に稀なケースです。
「スカイラインGT-R」の部品再販売の背景には、生産終了後でも一定数のユーザーがいて乗り続けていること。また、アフターマーケットの部品では替えがきかない部品があること。などの理由があげられます。
こうした取り組みは日産だけではありません。ほかの国産メーカーや、海外メーカーも絶版車の部品の再生産が行なわれています。
■ホンダ、マツダ、ポルシェが再生産した部品を供給中
ホンダは2017年に軽自動車「ビート」の補修用部品を再生産、再販売しました。それに先立って、純正オプションだったオーディオを、Bluetoothなどが使えるように新規に開発して2011年に発売しています。
また、マツダも2017年に初代「NA型ロードスター」のレストア(再生)サービスを始め、加えてハンドルやシフトノブ、フロアマット、ソフトトップ、そのほか補修用部品を復刻して販売を開始しました。
さらに、マツダはブリヂストンと共同して、「NA型ロードスター」発売当時の純正タイヤ「SF-325」を復刻して発売するなど、これまでにない取り組みとなっています。
海外メーカーでは、元々日本よりも純正部品の入手性は良好なメーカーが多かったものの、近年はだいぶ厳しい状況に変わってしまいました。そんななかポルシェが「ポルシェクラシック」というプロジェクトを立ち上げ、純正部品を再販しています。
顧客からのリクエストを受け、欠品だった部品が再生産された例もあります。
とくに興味深いのが、オイルやショックアブソーバーなどを現在の技術で作り直し、当時の性能以上のものを供給している点です。
ほかにも空冷911の純正オーディオのスペースにそのまま取り付けができる、カーナビゲーションシステムなども販売しています。
※ ※ ※
こうした取り組みに共通している点は、対象が長く愛されているクルマだということです。現存の割合がほかのクルマよりも高く、性能的に現代でも十分通用するモデルばかりです。
もっと古い40年、50年以上も前のクルマですと、さすがに普段遣いするのは厳しく、レストアや部品製作などは、これまでに紹介したものとは違うマーケットが存在します。
日本では車齢が13年を超える古いクルマの税金を上げ、環境負荷に対して懲罰的な税制になっています。一方で自動車メーカーは古いクルマの維持をバックアップしています。
日本において自動車産業は国を支える産業のひとつで、自動車生産大国ですが、旧車やクラシックカーをクルマ文化としてとらえるか、国とメーカーの考え方にまだまだ乖離があるようです。
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