見るからに速そうなウェッジシェイプ
かねてから近い距離にあった、アルピーヌとルノー。小さなスポーツカー・メーカーは、1973年に大手の傘下へ収まり、新しいモデル開発が始まった。
【画像】部品をルノー車と共有する安心感 アルピーヌV6ターボ/A610 先代A310と現行A110 クリオ V6も 全114枚
A310の後継となる、アルピーヌV6 GTの登場は1984年。V6ターボは、1985年に追加されている。ただし、英国ではクライスラーがアルピーヌという名称の商標権を保有しており、ルノーGTAの呼び名で発売された。
フロントが尖ったウェッジシェイプのボディは空力特性に優れ、ボディ底面の気流は巧みに調整され、空気抵抗を示すCd値はV6 GTで0.28。ワイドなタイヤを履くV6ターボでも、0.30と驚くほど小さかった。
プラスティックとグラスファイバー製で錆びないボディは軽量。プジョーとルノー、ボルボの共同開発による、PRVユニットと呼ばれた2849ccのV6エンジンを、リアに搭載する。2+2のスタイリッシュなクーペは、見るからに速そうだ。
実際、自然吸気のV6 GTでも充分高速で、V6ターボは当時のロータス・エスプリやポルシェ911を凌駕。0-100km/h加速を6.0秒でこなした。ターボラグが小さくなく、ある程度の経験が必要といえたが。
フランス車らしく乗り心地に優れ、操縦性も好ましかった。限界領域へ迫るまでは。
本物のスーパーカー 乗り心地の妥協は最小限
1990年に排気触媒が必要になり、低下する最高出力を補うため、V6エンジンは3.0Lへ拡大。同時に、A610へのアップデートが図られた。前後の重量配分が改善し43:57となり、ターボラグは大幅に抑えられ、高速域での扱いやすさが向上している。
A610へ試乗した当時のAUTOCARは、シャシーバランスと動力性能、内装の質感、走行時の静かさなどを称賛している。「本物のスーパーカーといえます。恐らく今度こそ、真っ当な評価を集めるのではないでしょうか」
優れた操縦性を実現しつつ、乗り心地の妥協は最小限。フラットにコーナリングし、ブレーキも優秀といえた。ジュニア・スーパーカーといえる特長を備えながら、快適に移動できることに、設計されたお国柄が表れている。
生産は10年以上続いたが、販売数は少なく、ボディパネルやインテリアのトリム類は入手が困難。中古車を選ぶ際は、破損や欠品がないかしっかり観察したい。一方で機械的な部品は当時のルノー・モデルと多くを共有するため、比較的心配は小さい。
腐食しがちなスチール製のシャシーとサブフレームが、最大の弱点。軽いボディは、そんなシャシーの上に接着されている。下回りの点検は、予め入念に済ませたい。
オーナーの意見を聞いてみる
新車でルノーGTAを購入し、それを今でも維持し続けるマーティン・ワルディング氏。オーナーズクラブのメンバーでも、この経歴を持つのは彼1人だという。
「自分はずっとルノーに乗ってきました。12 TLと16 TX、フエゴ、フエゴ・ターボと乗り継いできたんです。フランスでA310を見て、そのカタチへ一目惚れ。英国でGTAの販売が始まったタイミングで、購入しています」
「今でも、乗る度に少し特別な気分になれます。周囲の人も違うクルマだとわかってくれるので、質問される機会は多いですね。フェラーリやマクラーレンなどより、声もかけやすいのではないでしょうか」
「以前は毎日乗っていましたが、塗装が傷んだので再塗装し、それ以来は週末限定。ミラーやラバーシールの交換も含めて、6週間かかりました」
「信頼性は高いですよ。ウォーターポンプとブレーキディスクを最近交換しています。タイヤは1本500ポンド(約10万円)と高いですが、純正ホイールを維持しています」
「数年前まで、ルノー・ディーラーへ整備を頼んでいました。でもある時、1人のスタッフがエンジンを点検するといって、フロントのボンネットを開けようとしたんです。それ以来、ルノーを得意とする独立系のショップにお願いしています」
英国で掘り出し物を発見
ルノーGTA V6ターボ(英国仕様)
登録:1989年式 走行:12万9300km 価格:1万995ポンド(約211万円)
修理は必要なようだが、徹底的な点検・整備を覚悟すれば、お手頃価格で我が物にできる。ボディは再塗装されたメタリック・ブルー。アルミホイールはオリジナルを履いている。内装はクロス張りで状態は良いという。
エンジンルームは、綺麗にクリーニングしたいところ。しかし見た目はカッコいい。販売店は、ボディが綺麗で良く走ると主張している。
ルノーGTA V6(英国仕様)
登録:1988年式 走行:11万7400km 価格:1万7000ポンド(約326万円)
自然吸気エンジンのワンオーナー車。2021年から販売店に並んでいるが、まだ買い手は見つかっていないようだ。最近に入念な整備を受けており、クラッチとステンレス製マフラーが交換され、サスペンションとブレーキはオーバーホールされている。
ウェーバー・キャブレターへ置換され、トランスミッションのリンケージ、スターターモーター、メーター類も交換済み。ボディは、ガラス類を外しレッドへ再塗装されている。この内容を考えれば、良心的な価格といえる。
アルピーヌV6ターボ/A610 UK版中古車ガイド(2)にて。
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