日本を代表する小型オープンスポーツカーといえばマツダロードスター。2021年12月の一部改良と同時に特別仕様車の990Sが追加されました。新採用となったKPCの採用と990kgという軽量な新グレードの出来栄えを岡崎五朗さんのレポートでお届けしましょう。
その差は一般ドライバーにも歴然
【2022年最新版】カーリースのメリット・デメリットを徹底解説!
現行マツダ・ロードスターがデビューしたのは2015年。普通のクルマならそろそろフルモデルチェンジの時期だが、ロードスターはまだまだ現役だ。
今回のマイナーチェンジのトピックは2点。キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)の採用と、990Sという特別仕様車の設定だ。KPCについては後ほど詳しく解説する。
990という数字が意味するのは990kgという車重だが、素のSグレードも実は990kgに収まっていた。1トン切りは「勲章」としてはもちろん、スポーツカー、とりわけロードスターのようなライトウェイトスポーツにとって大きな意味を持つ要素なのだが、Sグレードはそこを上手く表現できず、単なる廉価グレードと受け取られてしまっていた、とマツダは分析した。そこで、ネーミングに990という数字を入れるとともに、RAYS製超軽量ホイールやブレンボ製ブレーキといった装備を奢ることで、軽さが生みだす魅力を積極的にアピールする作戦をとってきたというわけだ。
990kgがどのぐらい軽いのかというと、Sレザーパッケージと比べて70kg軽い。リトラクタブルハードトップに2Lエンジンを積むRFと比べればMT同士でも110kg、AT車比では140kgも軽い。15kg程度の違いはプロのテストドライバーでなければ体感できないが、30kg違えば一般ドライバーでも(集中して乗れば)わかる。70~140kgも違えばその差は歴然だ。
ライトウェイトスポーツらしさをもっとも濃密に味わえる990S
実際、990Sのドライブフィールは素晴らしく軽やかだ。素のSグレード同様、他のグレードには付いているリアスタビライザーやフロントアンダーフロア部の補強パーツは省かれている(これが低性能な普及グレードと思われてしまった原因)が、実はこの仕様はコストダウンが目的ではない。初代ロードスターがもっていたヒラヒラ感を現代のロードスターに与えるためあえてリアスタビを付けず、それにバランスさせるべく補強パーツを取り付けていないのだ。
スタビライザーはコーナリング時のロール(クルマの傾き)を抑制するパーツだ。フラットな路面でタイヤのグリップを最大限引き出しながらラップタイムを削り取るような走り方をするならあったほうがいい。しかし、うねりのある路面を走ったり、限界の手前で「気持ちよく飛ばす」程度ならなくてもいい、というか、上手く躾ければないほうがいい場合もある。990Sが狙ったのはまさにそこで、コーナーではある程度のロールを許容するものの、その分ドライバーが左右の荷重移動を感じ取りやすい。ベタッと路面に貼り付いている感触はやや薄まるが、クルマを操っている感覚は強くなる。これはいい悪いというより乗り方や好みの問題だが、ライトウェイトスポーツらしさをもっとも濃密に味わえるのは間違いなく990Sだし、僕がロードスターを買うなら迷うことなくこいつを選ぶ。
KPCで磨きがかかった安心感に裏打ちされた楽しさ
KPCは、コーナリング時に後輪内側にほんのわずかにブレーキをかけることで車体の浮き上がりを抑える装置。オン/オフで乗り比べてみたが、オンにすると車体の収まり感が明らかによくなる。ロードスターはもともと「冷や汗ではなく気持ちのいい汗」をかかせてくれるスポーツカーだが、KPCの採用によって安心感に裏打ちされた楽しさにはますます磨きがかかった。
若い人たちが購入するケースが増えている
990Sの登場によってロードスターの販売台数は久々に月間1,000台を超えたそうだ。しかも20代や30代といった若い人たちが購入するケースが増えているという。僕も20代の頃初代ロードスターに乗っていたが、本当に楽しかった。あの楽しさを一人でも多くの人に味わって貰いたいと思う。
(写真:宇野 智)
※記事の内容は2022年2月時点の情報で制作しています。
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