アメリカのストックカーレースのマシンをモデルで再現 デカールが映える派手なカラーリングが魅力
むかし、「熱気と轟音」の「インディカー・シリーズ」をアメリカ、マイアミで取材した経験があります。レース会場の「ホームステッド・マイアミ・スピードウェイ」は、家族連れが一日中遊べるような巨大アミューズメント施設という雰囲気なのに驚きました。アメリカではカーレースが一大イベントで、たいへんな盛り上がりでした。
アメリカ人はカーレースが大好きですね。ゼロヨンを競うドラッグレースなどは、毎週さまざまなところで開催されています。
ドイツで学んだグリッド方式で描く/大内誠さんの代表作・好きな作品
写真のモデルは、1980年代にNASCAR(ストックカーレース)で活躍したビュイック・リーガル(ブルー+オレンジ)とポンティアック2+2(メタリックブルー)です。
ビュイック・リーガルは、NASCARで有名なリチャード・ペティ選手(1937年生まれ)がドライブしたレースカーで、1981年シーズンは31戦中優勝3回、ポイントランキング8位でした。
ポンティアック2+2は、1986年、ラスティ・ウォレス選手(1956年生まれ)がドライブしたレースカーです。高速での安定走行の性能を上げるため、ドームのような大きなリアウィンドウを付けていました。NASCARのホモロゲーションを取得するために、市販タイプでもこのようなリアウィンドウになっていたんです。
ボクは、これまで主に市販タイプのアメリカ車のモデルを作ってきました。この2台は、市販車のイメージを残しつつ、レースカーならではのスタイルや派手なカラーリングが魅力的で、モデル制作に取り組んでみようと思いました。
作品は2点とも、サルビノスJRモデルズ社(Salvinos JR Models)のキットを使用しました。このメーカーは、2018年頃に登場したアメリカの新興プラモデルメーカーで、1980年代のNASCARのレースカーを中心にプラモデルキットをリリースしています。最近、精力的に新製品を発売していますが、過去に別のメーカーが出していたキットをリフォームして再リリースしています。これまでのNASCARのキットにくらべて、デカール(転写マーク)の品質が向上した点に制作意欲がわきました。
リアルなボディカラーへのこだわり 実車カタログや当時の塗料の色見本を参考に、自ら調色する
日本を代表するプロモデラーのひとり、畔蒜さんの作品は、ボディカラーやパーツのすみずみにいたるまで、まるで実車のような輝きを放っています。その秘訣は、塗装の技法と塗料の調色にある、と以前うかがったことがあります。市販車のボディカラーは、実車のカタログやプラモデルのパッケージ写真と、アメリカで当時クルマの塗装に使用された塗料の色見本などをつきあわせ、納得いくまで調色をくり返すそうです。レースカーの場合、こだわりのポイントはどんな点でしょうか。
作品制作で最も力を入れたところは、ボディカラーの再現です。ビュイック・リーガル(ブルー+オレンジ)は、「ペティ・ブルー」という特別なボディカラーで、アメリカで調合された塗料を元に調色しました。オレンジのカラーは、年代などで微妙に異なるため、パッケージ写真やブルーとの相性を考えて自分で配合を考えて調色しました。
ポンティアック(メタリックブルー)は、明るくて深いメタリックブルーを目指して完全に自分のイメージで調色しました。
市販車の場合は実際のボディカラーの再現に力を入れていますが、レースカーはこんな自由な発想で楽しむのが、ボクの作風かもしれません。作品の制作期間は、それぞれ約1カ月でした。
モデラーの視点から注目するカテゴリー 新時代に入ったNASCARが面白い
今後、制作してみたいと思うカテゴリーといえば、やはりNASCARですね。サルビノスJRモデルズ社の新製品に注目しています。NASCARも新時代に入り、現在は現行のシボレー・カマロとフォード・マスタングが主流になっています。すでに2023年モデルも発売されています。新たにトヨタ・カムリのNASCAR仕様が発売になりましたので、注文を入れたところです。これはぜひ作ってみたいですね。
インタビュアー/山内トモコ
あびるゆきお 1957年、東京都生まれ。プロのモデラー。学生時代から模型雑誌の作例製作や執筆活動を始める。1990年に独立、自動車メーカーやミニカーショップの完成品などの製作、玩具や日用雑貨の塗装試作を経て、現在は主にパートワークマガジン(分冊百科)のモデル監修を手がけている。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。最近千葉県に移住
やまうちともこ TOKYO-FMパーソナリティを20年以上つとめ、インタビューした人1000名以上。映画評論家・品田雄吉門下生。ライター&エディター
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