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背面タイヤはどこいった? SUVブームの影で姿が見えなくなったワケとは!?

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背面タイヤはどこいった? SUVブームの影で姿が見えなくなったワケとは!?

 かつては「クロカン」といえば、背面スペアタイヤが必ず付いていたもの。しかし現代のクロスオーバーSUVを見渡しても、背面タイヤが付いているクルマは存在しない。

 そもそも背面タイヤはなぜボディ後方に付いていたのだろうか? 本稿では、過去を追いつつ、現代でなくなった理由を考えてみましょう。

背面タイヤはどこいった? SUVブームの影で姿が見えなくなったワケとは!?

文/フォッケウルフ
写真/トヨタ、日産、三菱、ホンダ、ダイハツ、スズキ

■クロカンのワイルドな雰囲気を演出する

 いまや「SUV」といえば、乗用車のシャーシを使って開発された街乗り志向のモデルのことを指し、そのなかでも人気はスタイリッシュな外観で、タウンユースに適した能力を持つクロスオーバーモデルに集中している。

 かつてはボディが頑強なフレーム構造で、ハイ/ローの切り替えが行える本格的な4WDシステムを採用するクロスカントリーモデル(以下クロカン)がクラスの主流だったが、いまやクロカンモデルはマニアックな存在となってしまった。

 クロカンモデルは、悪路走行時にボディが路面に干渉しない対地障害角を確保し、サスペンションもデコボコ道を難なく走れるようストロークにも余裕を持たせるなど、ハードな悪路をものともしない走破性が最大の魅力となっていた。

 外観はひと昔前に比べるとシティ系寄りに洗練されているが、タフなパフォーマンスを示唆するワイルドなイメージはしっかりと継承されている。ただ、そのワイルドな雰囲気の演出にひと役買ってきたのが背面スペアタイヤだったが、これがすっかり廃れてしまっている。

クロカンの王者といえばランドクルーザー! しかし現代のランクルには背面タイヤが付いていない

 もともとクロカンは、道なき道を走破する目的で開発されたクルマである。悪条件下でタイヤにダメージを受けたときには、そこがたとえ泥濘地であってもスペアタイヤを即座に取り出して交換できるほうがいい。

 また、トラックのように荷室部分の下側に吊り下げ方式だとリア側のオーバーハングが短くできずに悪路走破性能に悪影響を及ぼす可能性がある。

 さらに、充分な対地障害角を確保するには大径タイヤの装着は必須である。これを普通の乗用車のようにトランク(荷室)フロアの下にタイヤを収納すると、荷室空間が確保しづらくなる。このような実用面においても、背面にスペアタイヤを装着はメリットがあった。

■背面タイヤが廃れてしまった理由とは?

 1980年代から1990年代に起こったRVブームの時には、背面スペアタイヤは当時のSUVにとってスタンダードだった。トヨタのランドクルーザー、ランドクルーザープラド、ハイラックスサーフ、日産のテラノ、サファリ、三菱のパジェロといった本格派クロカンモデルはもちろん、トヨタのRAV4、日産 ラシーン、三菱 RVR、ダイハツ ビーゴといったライトなクロカンモデルも背面スペアタイヤを装着していた。

 まさに、背面タイヤは「ヨンク(四駆)」の象徴だったわけだが、現行のSUVカテゴリーを見渡すと、国産車で背面スペアタイヤを採用しているのは、なんとスズキ ジムニーとジムニーシエラのみとなってしまっている。

タイヤがパンクした際に、ボディ背面にあれば外して交換しやすいが、ボディ下部にあると手間がかかる?

 廃れた理由のひとつに、クロカンモデルを含めたSUV全体のモデルが、悪路よりも舗装路での走行安定性や乗り心地が求められるようになったことが挙げられる。ボディ後端の高い位置に十数kgもの重量があるスペアタイヤを装着すると、カーブを曲がったり車線変更をしたりするときに慣性の悪影響を受けやすくなる。

 SUVが一般的な乗用車として選ばれるようになった昨今では、悪路での走破性よりも舗装路でスマートかつ安全に走れることが重要視されるから、操縦安定性を低下させる可能性がある要因が排除されるのはやむを得ないことと言えるだろう。

 また、背面スペアタイヤを装着するためには専用のキャリアが必要となる。昨今主流となっている樹脂製のリアゲートでは、スペアタイヤとキャリアの荷重には耐えられないし、強度をもたせるためには補強を施すか、専用設計にするしかないが、これはコスト上昇に繋がる。

 さらに、SUVでもパンク修理キットが標準となり、スペアタイヤがオプション扱いとなってしまった。こうした背面スペアタイヤの装着に合理性や必然性を見いだせなくなったことも廃れてしまった理由と言っていい。

■今後も復活する希望が薄いもっともな理由

悪路や林道を走り、登坂路を登る……。懐古趣味かもしれないが(笑)、やはり背面タイヤが付いているだけで絵になる!

 おそらく今後も背面スペアタイヤが復活する可能性は低い。なぜなら、今はSUVでも電動化が進んでおり、スペアタイヤよりもさらに重く、搭載スペースが必要となる駆動用バッテリーを積まねばならないからだ。

 ワイルドなイメージを演出するためには、背面タイヤは効果的なアイテムである。しかし、それ以外の部分では、無用の長物になってしまったというのが現状であると言わざるを得ない。いろいろな観点から、必然性がなく、メリットよりもデメリットのほうが目立ってしまい、背面スペアタイヤは今後も採用する理由がほぼないと言わざるを得ない。

 しかし、背面スペアタイヤを採用したモデルに共通してきたのは、高い水準の悪路走破性を有していること。クロスオーバーSUVが全盛となり、クロカンモデルが激減している昨今、ハードなオフロードで抜群の走破性を発揮し、心に余裕をもって走れるSUVを求めるなら、背面スペアタイヤを装着しているというのが、SUV選びにおけるひとつの基準になるかもしれない。

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