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フェラーリSF90ストラダーレ 詳細データテスト 記録的な速さ 物足りない限界域でのハンドリング

はじめに

自動車業界の時流である電動化の観点からすれば、今回テストするフェラーリSF90ストラダーレはもっとも重要なモデルだと思えるだろう。というのも、これはさまざまなスーパーカーを生み出してきた世界屈指のスーパーカーメーカーが、はじめて造り上げた量産PHEVなのだから。

<span>【画像】写真で見るフェラーリSF90とライバル 全18枚</span>

たしかに、そう考えるのは正しい。しかし、このクルマは単に社会的風潮に合わせて、自動車メーカーとしての責任やサステナビリティに配慮した最新ミドシップフェラーリ、という枠組みだけでは括れない、もっと野心的なモデルだ。

間違いないのは、これが過去30年にわたってマラネロのクルマ造りを縛ってきた技術的規範を、全面的に書き換えようとしているモデルであること。斬新な電動化技術を用いて、期待以上の動力性能を生無のはもちろん、エミッション規制をクリアするのも狙いだ。

そればかりでなく、内燃エンジンのフェラーリを今後10年以上生き長らえさせる使命も帯びている。その仕事ぶりは、GPSを用いた正確な計測で明らかにしていくことにしよう。

SF90はスーパーカーのパラダイムシフトだ、というのがフェラーリの主張だ。それも、さまざまな点で極端な。しかも、少量生産のコレクターズアイテムやスペシャルなイメージリーダーではなく、継続的に生産されるカタログモデルとして用意された。

このクルマはフェラーリにとって、通常ラインナップの頂点に君臨する初のV8モデルである。また、FFやGTC4ルッソといったグランドツアラーを除く本格スポーツカーでは、マラネロ史上初の4WDを採用した。

さらにいうなら、跳ね馬を掲げるブランドが変革のときを迎える中で、このSF90は誕生した。1999年登場の360モデナにはじまり、2019年発売のF8トリブートで絶頂に達したV8ミドシップモデルは、まもなく退役する。その座を受け継ぐのは、全面新開発された296GTBに端を発するV6ハイブリッドモデルとなる模様だ。

つまりわれわれは、世界でも最大級の敬意を集める自動車メーカーの、電動化への転換期に立ち会っている。それがどのようなものになるのか、探っていこうではないか。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

SF90の名は、エンツォ・フェラーリが1929年に、アルファ・ロメオのセミワークスチームとしてスクーデリア・フェラーリを立ち上げてから90周年を記念して開発されたことを意味する。

ベースとなるモノコックシャシーは、マラネロ工場から道を挟んだ向かい側で製造されている。フェラーリの傘下にあるかつての名門カロッツェリア、スカリエッティの担当だ。

完全新設計となるそれは、中空鋳造アルミや新規採用の軽量アルミ合金の部材、カーボンファイバーのリアバルクヘッドなどを使用。これまでのフェラーリが用いてきた同等の構造体に対し、曲げ剛性は20%、ねじり剛性は40%、それぞれ向上している。もちろん、重量増加することなしにだ。

パワートレインは、F154系ユニットの改良・拡大版で、781psを発生するV8ツインターボをベースに、動力を発生する交流同期モーターを3基と、7.9kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。さらに、極めて高性能な出力制御用の電子機器が付随する。

もっとも大型でパワフルなモーターは、フェラーリいうところのモーター/ジェネレーターユニット・キネティックス(MGU−K)で、三相アキシャルモーターをエンジンと8速DCTとの間に設置する。単体での最大出力は204psだ。

F1マシンに用いられたテクノロジーに由来するといわれ、市販車のための走る実験室というレースのエクスキューズを地で行くようなメカニズムだ。もっとも、フェラーリはむしろそのモータースポーツの最高峰へ挑み続けるために、市販車を造りはじめた会社なのだが。

さらに、フロントには合計で270psを発生する2基のラディアスモーターを搭載。それぞれにトランスミッションを設置して、左右各輪を独立駆動することで、左右非対称の電動トルクベクタリングを実現する。

ただし、駆動用バッテリーの出力が足枷となり、3モーターすべてが同時に本領を発揮することはできない。合計での最大出力は245psに制限されてしまい、通常走行時には、ハイブリッドシステム全体でも220psに絞られている。

4つのパワーソースを全開にした場合のカタログ値は1001ps/7500rpm。なお、トルクは明示されていない。もっともアグレッシブな走行モードであるクオリファイを選んだ場合のみ、これをわずかに上回るピークパワーを得られるというが、あくまでそれは瞬間的なものにすぎない。

重量のマネージメントは、このクルマに最新のフェラーリらしいパフォーマンスとハンドリング、そしてフィールを与えるための重要事項だった。その点、電動化デバイスが追加されたことを考えると、マラネロはいい仕事をしたといえるだろう。

軽量化オプションをすべて装備した場合、乾燥重量の公称値は1570kgに収まる。270kgに及ぶハイブリッドシステムを背負っていることを踏まえれば、これは驚くほど軽量だ。テスト車はさまざまなオプションを装着し、燃料を満タンにした状態で実測1698kgだったので、マラネロが謳う数字にはかなり信憑性がある。

ここから割り出される馬力荷重比は638ps/tで、ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツやラ・フェラーリの領域に達している。ただし、ロータスやリマックの最新ハイパーEVは、さらにその上を行くが。

SF90のV8ユニットは、フェラーリの既存ミドシップモデルより低く搭載できるよう設計変更された。F8トリブートの3.9Lユニットに対し、シリンダーヘッドや吸排気系の取り回しは刷新され、吸気バルブやシリンダーボアは拡大。より高効率なターボと噴射圧を高めた燃料インジェクションも装備された。

8速DCTも新型で、F8トリブートの7速ギアボックスよりシフトスピードを33%速めた。また、多段化しながら10kg軽量化しているが、ここには電動化モデルならではのカラクリがある。リバースギアを廃止して、フロントモーターが後退を担うのだ。

サスペンションはF8トリブートと同じく、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンク。前後ともコイルスプリングだが、リアのレートは高められた。アダプティブダンパーは標準装備される。

オプションのアセット・フィオラノ仕様では、チタン素材のよりハードなスプリングと、モータースポーツのスペシャリストであるマルチマティック製の高性能パッシブダンパー、ダウンフォースを増加するリアウイングが装着される。

また、各部のパネルが重量軽減に寄与するカーボンファイバーへ素材置換される。ただし、カーボンホイールはこれに含まれない、別建てのオプションアイテムだ。カーボンセラミックブレーキは標準装備で、タイヤは通常がミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。テスト車が履いていたのはよりハイグリップのカップ2Rで、これは有償追加メニューとなる。

内装 ★★★★★★☆☆☆☆

SF90のキャビンは、フェラーリの一般的なミドシップモデルに比べると、やや低く、ホイールベース内だが前寄りに座らされる。とはいえ、その差がはっきりわかるほどではない。

サイドシルは乗り降りに苦戦するほど高く広いものではないし、ステアリングホイールとの距離もかなりある。よほど背が高くなければレッグルームは十分足りるはずだし、ヘッドルームもヘルメットをかぶらなければ不足はないだろう。

フェラーリ最新の16インチ画面を用いた計器盤は、インフォテインメントやナビの画面も兼ねていて、モード切り替えにより表示内容を変えられる。同じフェラーリでも、ローマに見られるようなセンターディスプレイは備わらない。

トリップコンピューターの情報表示や、各種機能の操作などは、ステアリングホイールのスポークに配置されたタッチ式スイッチでほとんどを賄う。そのほか、ステアリングコラムの両脇に小さなコンソールがあり、エアコンやドアミラーなどの操作はここで行う。

操作ロジックはかなり直感的で、慣熟するのに手間取ることはない。しかし、ステアリングスイッチのレイアウトは過密で、操舵中に意図せず触れてしまうこともある。

フェラーリはエルゴノミクスに関して「視線は路面に、手はステアリングホイールに」という理論を掲げ、今後は全モデルに取り入れていくことになりそうである。

好き嫌いはあるだろうが、シフトパドルや方向指示器、ワイパー、ヘッドライト、そして走行モードを選択するマネッティーノといった、運転に必要な操作系をいちいち手探りする手間だけは、少なくともなくなるだろう。

収納関係はサイズが小さく数も少ないが、まったくないわけではない。トランスミッショントンネルの前端にはドリンクホルダーと、浅いがフタ付きの小物入れが備わる。

ドアポケットは、オプションの軽量カーボントリムにするとなくなってしまう。シートの背後には、頭の高さにシェルフがあるものの、狭くてハンドバッグか薄手のジャケットくらいしか置けない。

なにより残念なのは、まともな荷室がないことだ。ミドシップのフェラーリは、たいていフロントに実用に耐えうるサイズのトランクスペースを持っている。ところがSF90のボンネット下の空間には、ほとんど深さがない。

小さな布バッグやリュックサックくらいは入るだろうが、スーツケースは小さいものでも無理。しかも、いくら邪魔でも降ろしてしまうわけにはいかない、充電ケーブルがかなり幅を利かせている。

サーキット走行会にヘルメットをふたつ持っていくにも苦労するはずで、まともな荷物を積んで週末の旅行をするのは難しい。SF90の実用性は、もはや我慢すれば済むという域を超えている。

せっかくEV走行可能なハイブリッドシステムにより、ほかのスーパーカーより優れた使い勝手を訴求できる可能性があるのに、荷物がほぼ積めないという決定的な短所によって台無しになっている、というのがわれわれの見解だ。

走り ★★★★★★★★★★

最近のフェラーリについて知識があれば、マネッティーノのなんたるかはご存知だろう。いわゆる走行モードのセレクターで、ウェット/スポーツ/レース/CTオフ/ESCオフから選択できる。その反対側には、パワートレインの作動モードを選ぶタッチパネルが備わる。

走り出しはハイブリッドモードがデフォルトで、通常はスターターボタンを押してもエンジンがウンともスンともいわない。なにしろこれはフェラーリなのだから、最初のうちはあまりにも奇妙なことに思える。

しかし、走りはじめてしまえば、そこからはドライバーに決定権が委ねられる。EV走行をするeドライブ、エンジンの加勢が増すパフォーマンス、そして全力を叩き出すクオリファイといったメニューが用意されている。

クオリファイモードでは、パワーを存分に発揮するばかりでなく、トラクションコントロールとローンチコントロールがもっともアグレッシブなセッティングに切り替わる。タイヤを温めてから切り替え、それを試すのに適した状況に置かれれば、SF90は度肝を抜くような加速を味わわせてくれる。

これまで、オートカーが行ってきたロードテストの最速レコードは、2011年のブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツのものだった。0-97km/hのタイムは2.6秒、0-161km/hは5秒フラット、そしてゼロヨンは10.1秒である。

この10年、マクラーレンP1をはじめ、アリエル・アトムV8やポルシェ918スパイダーなどの強豪が挑み続けてきたが、この記録が破られることはなかった。ところが、SF90の記録は2.5秒/4.8秒/9.9秒。ついに、レコードブレーカーが誕生した。

ヴェイロンは確かに速かったが、32km/h刻みの中間加速では、1秒以下の差でありながらトップには立てなかった。それは、どのギアでも、どの速度域でもだ。しかし、SF90は2度、新記録を達成している。

これは、少なくともわれわれが計測した中では、前例のないパフォーマンスを見せつけたクルマだ。とんでもないポテンシャルを秘めていることが感じられるが、あくまで荒々しさよりスムースさが優っている。

ターボエンジンのスーパーカーで発進が荒っぽいものを、ゴツゴツした急峻な岩肌を転げ落ちていくさまにたとえるとしたら、このフェラーリの加速はまるで、垂直な平面に沿っての自由落下だ。

トラクションは非常に強力だが、完璧なまでに制御されている。トルクは瞬時に立ち上がり、速度が160km/hを超えるあたりまで衰えない。ギアチェンジは耳で感じるほうが、身体で感じるよりずっと楽だ。

そして身体が加速Gに慣れたころに視線を速度計へ向けると、200km/h近い数字に達している。それからどこかで、息を止めていたことを思い出す。

公道上では、この速さも、純粋でレスポンスのいい極限のトルクも、反社会的なラインスレスレに思えるかもしれない。しかし、SF90は、それだけが売りのクルマではない。

ハイブリッドモードで走らせれば、そのキャラクターはもっと穏やかなものになる。法に触れるのではないかと気兼ねすることなく、スロットルを踏み込めるようになるのだ。

モーターとエンジンの協調ぶりや、スロットル操作に応じた使い分け方は、じつによくしつけられている。バイワイヤのブレーキシステムも、低速域でも摩擦ブレーキとモーターのエネルギー回生を巧みに組み合わせ、多くのパフォーマンス志向のハイブリッドカーに備わるブレーキよりずっとうまく機能してくれる。

このクルマのフィールはナチュラルで、一貫性がある。それは、V8エンジンが回っていても止まっていても変わらない。

また、エンジンを完全停止して電力のみで駆動するeドライブモードでは、一般道で普通に使うとフル充電で26km弱は走れる。最高速度は137km/hほどで、それを超えるとエンジンが始動する。

その状態では速さもエキサイティングさも足りず、フェラーリらしいドラマティックさとは無縁の存在に感じられる。だが、日常使いならほぼすべてのシチュエーションをまかなえるだけの性能で、都市部の道路環境にはむしろ合っている。

つまり、これはさまざまなセッティングで使うことができるクルマだ。世界最速級のハイパーカーの中には、量産車ではあっても凶暴で、市街地のひどい渋滞にはまるのはまっぴらごめんというようなものもあるが、SF90ならそんなことはない。現実的な環境に置かれても、思いどおりに走れる。

そうはいっても、SF90の真の魅力はバーサタイル性にあるわけではない。その電動化メカニズムを掛け値なしに驚異的なスピードを生むために用い、フェラーリのV8ならば当たり前のドラマティックさと熱い魂に融合したときこそが、このクルマの真骨頂なのだ。

使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆

インフォテインメント

フェラーリによれば、この16インチのデジタルダッシュボードは、自動車用としては最大の曲面デジタルディスプレイだという。

表示モードはいくつかある。デジタル回転計を中央に置き、その周辺にトリップコンピューターやナビ画面などが配置されるものがひとつ。そのほかには大部分をナビ画面として使うものや、バータイプの回転計に電力ブーストと充電状況のグラフを加えたものが選択できる。

ヘッドアップディスプレイはほかにも必要な情報を、目線に近いところへ投影する。センターディスプレイは設置されず、操作系はステアリングホイール上のスイッチが中心となる。しかし、反応や直感的な操作性はトップクラスというほどではなく、手のひらで誤って触れてしまうことも少なくない。

スマートフォンのミラーリング機能は、Apple CarPlayのみが用意される。2400ポンド(約33.6万円)のオプションだが、使い勝手はいい。メニュー画面は慣れ親しんだスワイプで素早く切り替えができ、情報は間違いなく伝わる。ナビはやや入力しづらいものの、慣れるのはそれほど難しいことではない。

燈火類

フルLEDヘッドライトは標準装備。多くのLEDライトと同じく、それほど明るく見えなくても明るさと照射範囲はかなりのものだ。対向車からは、眩しいと文句が来るかもしれない。

ステアリングとペダル

われわれは左ハンドルと右ハンドルの両方を確認しているが、右ハンドルのほうが出来はかなりいい。オフセットが少ないのだ。ペダルはすべりにくく、見栄えもなかなかすてきだ。

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

フェラーリの資料が請け合っているのは、ハイブリッドシステムが一般的なスーパーカーよりドライビングを複雑にする原因になっていないということ。それが、多少ながらも際立っている点だという。

ドライバーはシンプルに、パワーユニットを好みのモードにセットして、運転に集中するだけ。あとは電子制御が面倒を見てくれるというわけだ。

それは上手いやり方で、ある程度までなら筋が通っている。とはいうものの、ハンドリングのピュアさやアジリティの面で、マラネロの最新ミドシップカーにおける運動性のテンプレートと比べると、多少の妥協が見られるのも事実だ。それは、ドライバビリティや、サーキットを楽しむための能力にも望ましくない影響を与えている。

ラップタイムを出すという点においては、確かに速くて優秀なスーパーカーだ。ハンドリングバランスやグリップそのもの、ボディコントロール、そして全体的な精度の高さにも、公道上での速度域ではまったく疑問の余地がない。

もし、2地点間を速く移動できながら、渋滞のノロノロも高トルクの安楽さと揺るぎない沈着さで切り抜けられるということにかけては、日産GT−Rもポルシェ911ターボSもSF90の域に及ばない。

最近のフェラーリの多くよりもギア比の速い独特なパワーステアリングには、歓迎すべき手応えの重さが加わっている。やや減衰されてはいても、正確さや安定性はまだまだ強烈で、うねっていてスピードが乗るA級道路では、意外なまでの直感的な動きと、安心感のある安定ぶりをみせる。

ところが、サーキットでグリップ限界に近づくと、ミドシップのフェラーリに期待するパワーやトラクション、アジリティと安定感、そしてハンドリングのアジャスト性といった要素の不自然なほどのバランスは消え去ってしまう。代わって現れるのが、ときに野蛮で、しばしばやや予測し難い、薄っぺらに変異した妥協の産物だ。

限界内で整然と、電子制御を切らずに走っていれば、すばらしくみごとに機能し、とてつもなく速い。俊敏でバランスがよく、安定していて、レコードラインを忠実になぞれるし、強烈なパワーに見合った強烈なトラクションを活かすことができる。

しかし、エンターテインメント性を試したり、パワーオーバーステアやドリフトでのターンインを堪能しようとすると、とっ散らかった運動性に見舞われることになる。

V8エンジンとリアの電子制御ディファレンシャルは明らかに、シャシーをポジティブで遊び心のあるコーナリングの挙動へ持ち込む。しかし、それに対するフロントのトルクベクタリングのレスポンスは、アグレッシブでクイックすぎることがある。

それがときとして、コントロールされたドリフトの邪魔をする。そうでないときには、好みのアングルをつける手助けをしてくれるのだが。どちらにしても、何が起きるか知ること、また楽に扱えるクルマに乗っていると思えることの満足感は、ミドシップフェラーリの水準に届かない。

もちろん、そうなるのは電子制御を切ったときだけだ。オンのままなら、SF90のハンドリングはもっと予測できるものになる。ただし、おそらく究極的に期待するものに比べれば、さまざまな要素が渾然一体となった複雑さも、そしておもしろみも、十分とはいえない。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

フィオラノパッケージのマルチマティック製ダンパーと軽量スプリングを装着していてさえ、SF90はかなり文化的で快適なスーパーカーだ。複雑なカントリーロードの路面を、ほどよくしなやかにいなす。

市街地で低速で大きな突き上げを受けると、硬く神経質に感じられるが、どうしようもなくハードに振り回されることは絶対にない。サーキットでマクラーレン・セナを上回るラップタイムを刻めるクルマとしてみれば、こうしたオンロードでの乗り心地は賞賛に値する。

それでもこのSF90を、街でも郊外でも使える、将来性のある夢の電動化フェラーリだと期待するなら、やはりフィオラノパッケージは選ばないことをおすすめする。ハイパフォーマンスタイヤによって室内騒音が高まる点だけがネガだとしてもだ。

もっともハイグリップなカップ2を履くと、80km/h巡航では73dBAを計測した。現行の乗用車がこのレベルに達するのは、ほとんどが3速全開加速時だ。サーキット向けのセッティングにして、エンジンが回りはじめると、会話が難しい、むしろ耳栓が必要な状態になる。

ただし、それを別にすれば、長距離をきわめてイージーに移動できるクルマだ。シートは高さ調整がオプション設定され、強力な横方向のサポートにはほどよいパッドが備わる。後方以外は、視認性もまずまずだ。テスト車のシートベルトは扱いにくい4点ハーネスだったが、これは標準装備ではない。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

ミドシップレイアウトのV8モデルとなれば、488やF8トリブートの後継モデルだと見なすのが自然な流れかもしれない。しかし、それではSF90の37万4420ポンド(約5242万円)という値付けがすんなり腑に落ちないはずだ。

このクルマに続いてV6エンジンベースの296GTBが市場に出回れば、SF90のポジションはもっと明確に認識されるはずだ。しかし今のところは、比較対象になるようなスーパーカーが存在しない。

そのため、実際以上に高額なモデルだと思われてしまうのは仕方ないところだ。そういう認識は、とてもこのクルマに手の届かないからというわけではなく、購入できる余裕があっても持つのではないだろうか。

高いリセールは期待できるだろうが、高価格を正当化できる裏付けは、とてつもないパフォーマンスのみだ。ほとんど荷物を積めないので、実用性の高いスーパーカー、などという加点要素は諦めるしかない。

また、果たしてそれにどれだけの意味があるか定かではないが、フェラーリはSF90にも4年保証を付けている。さらに有料で、定期的な点検やメンテナンスが対象となる7年保証への延長プランも用意されている。

経済性やエミッションに関して、一般的なPHEVと同列に考えるひとはいないだろうが、期待はしないのが正解だ。113km/h巡航でも、バッテリーを使い果たすと8.6km/Lしか走らない。CO2排出量は154g/kmで、50g/kmを切るプラグインモデルのようにULEV認定を受けるなど夢のまた夢だ。

といっても、これはスーパーカーなのだ。実用車とは違って、そうしたネガが購入を考え直す理由にはならないはずだ。しかも、市街地などで必要とあれば、ほどほどの距離をEV走行できるのである。それだけでも文句はないだろう。

スペック

レイアウト

シャシーは、フェラーリの典型的なアルミモノコックにひねりを効かせ、新たに軽量合金やカーボンファイバーのパーツを加えた。パワートレインは改良を加えた4.0LのV8と、3基の電気モーターを備える。

フロントのeアクスルは、2基のモーターで、アシンメトリーなトルクベクタリングを行う。リアにはフロントより大型のモーターが、エンジンとトランスミッションの間に配置される。前後重量配分は45:55だ。

エンジン

駆動方式:ミドシップ縦置き四輪駆動
形式:V型8気筒3990ccツインターボチャージャー、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ-×-mm
圧縮比:9.5:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:781ps/-rpm
最大トルク:81.6kg-m/-rpm
エンジン許容回転数:8000rpm
ハイブリッドアシスト:ラディアス同期電動機×2(前)/アキシャル同期電動機(後)
モーター最高出力:-ps
モーター最大トルク:-kg-m
システム総合出力:1001ps/7500rpm
システム総合トルク:-kg-m/-rpm
馬力荷重比:638ps/t
トルク荷重比:-kg-m/t
エンジン比出力:196ps/L

ボディ/シャシー

全長:4710mm
ホイールベース:2650mm
オーバーハング(前):1213mm
オーバーハング(後):811mm

全幅(ミラー含む):2310mm
全幅(両ドア開き):3950mm

全高:1226mm
全高:(エンジンフード開き):1760mm

足元長さ(前席):最大1130mm
足元長さ(後席):-mm
座面~天井(前席):最大940mm
座面~天井(後席):-mm

積載容量:93L

構造:アルミ/カーボンファイバーモノコック
車両重量:1570kg(公称値・乾燥重量・軽量オプション装備車)/1698kg(実測値)
抗力係数:-
ホイール前/後:9.5Jx20/11.5Jx20
タイヤ前/後:255/35 ZR20/315/30 ZR20
ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2R
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:8速DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.45/8.4
2速:2.26/12.9
3速:1.65/17.7
4速:1.29/22.5
5速:1.03/28.3
6速:0.84/34.6
7速:0.67/43.5
8速:0.48/60.7
最終減速比:4.51:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:-km/L
ツーリング:8.6km/L
動力性能計測時:-km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/L
中速(郊外):-km/L
高速(高速道路):-km/L
超高速:-km/L
混合:16.7km/L

燃料タンク容量:68L
駆動用バッテリー:リチウムイオンバッテリー、7.9kWh(グロス値)/6.5kWh(ネット値)
EV走行可能距離:29km(公称値)/26km(実測値)
エンジン走行可能距離:-km
現実的な航続距離:約613km(ツーリング)
CO2排出量:160g/km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー

ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:1.9回転
最小回転直径:-m

ブレーキ

前:398mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
後:360mm 通気冷却式カーボンセラミックディスク
制御装置:ABS、ブレーキアシスト、EBD
ハンドブレーキ:電動、スイッチ(ステアリングコラム右側に設置)

静粛性

アイドリング:58dBA
最高回転時(3速):91dBA
48km/h走行時:68dBA
80km/h走行時:73dBA
113km/h走行時:78dBA

安全装備

ABS/ESC/EDB/eSSC/eTC/eデフ3
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温21℃
0-30マイル/時(48km/h):1.2秒
0-40(64):1.6秒
0-50(80):2.1秒
0-60(97):2.5秒
0-70(113):3.0秒
0-80(129):3.5秒
0-90(145):4.1秒
0-100(161):4.8秒
0-110(177):5.7秒
0-120(193):6.6秒
0-130(209):7.7秒
0-140(225):8.9秒
0-150(241):10.4秒
0-160(257):12.0秒
0-170(273):13.9秒
0-180(289):16.6秒
0-402m発進加速:9.9秒(到達速度:236.3km/h)
0-1000m発進加速:17.9秒(到達速度:296.4km/h)

ライバルの発進加速ライバルの発進加速
ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ(2011年)
テスト条件:乾燥路面/気温14℃
0-30マイル/時(48km/h):1.4秒
0-40(64):1.8秒
0-50(80):2.2秒
0-60(97):2.6秒
0-70(113):3.1秒
0-80(129):3.6秒
0-90(145):4.3秒
0-100(161):5.0秒
0-110(177):5.7秒
0-120(193):6.6秒
0-130(209):7.6秒
0-140(225):8.8秒
0-150(241):10.2秒
0-160(257):11.8秒
0-170(273):13.7秒
0-180(289):16.2秒
0-402m発進加速:10.1秒(到達速度:238.0km/h)
0-1000m発進加速:18.0秒(到達速度:295.2km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.0秒(2速)/1.4秒(3速)/1.7秒(4速)

30-50(48-80):0.9秒(2速)/1.2秒(3速)/1.5秒(4速)/1.9秒(5速)/2.1秒(6速)

40-60(64-97):0.8秒(2速)/1.2秒(3速)/1.4秒(4速)/1.8秒(5速)/2.2秒(6速)/2.8秒(7速)

50-70(80-113):1.1秒(3速)/1.4秒(4速)/1.8秒(5速)/2.3秒(6速)/2.8秒(7速)/4.0秒(8速)

60-80(97-129):1.1秒(3速)/1.4秒(4速)/1.8秒(5速)/2.2秒(6速)/2.9秒(7速)/4.2秒(8速)

70-90(113-145):1.3秒(3速)/1.4秒(4速)/1.8秒(5速)/2.2秒(6速)/2.9秒(7速)/4.5秒(8速)

80-100(129-161):1.4秒(4速)/1.9秒(5速)/2.3秒(6速)/3.0秒(7速)/4.8秒(8速)

90-110(145-177):1.7秒(4速)/2.0秒(5速)/2.4秒(6速)/3.2秒(7速)/4.9秒(8速)

100-120(161-193):1.9秒(5速)/2.5秒(6速)/3.3秒(7速)/5.4秒(8速)

110-130(177-209):2.0秒(5速)/2.6秒(6速)/3.5秒(7速)/6.0秒(8速)

120-140(193-225):2.3秒(5速)/2.7秒(6速)/3.7秒(7速)/6.5秒(8速)

130-150(209-241):2.8秒(6速)/3.9秒(7速)

140-160(225-257):3.1秒(6速)/4.2秒(7速)

150-170(241-273):3.7秒(6速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温21℃
30-0マイル/時(48km/h):7.3m
50-0マイル/時(64km/h):19.5m
70-0マイル/時(80km/h):38.5m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.39秒

ライバルの制動距離ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツ(2011年)
テスト条件:乾燥路面/気温14℃
30-0マイル/時(48km/h):8.5m
50-0マイル/時(64km/h):23.0m
70-0マイル/時(80km/h):45.2m

各ギアの最高速

1速:67.6km/h(8000rpm)
2速:103.0km/h(8000rpm)
3速:141.6km/h(8000rpm)
4速:180.2km/h(8000rpm)
5速:226.9km/h(8000rpm)
6速:276.8km/h(8000rpm)
7速:339.6km/h(7812rpm)
8速(公称値):340.0km/h(5597rpm)

8速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1857rpm/2122rpm

結論 ★★★★★★★★☆☆

フェラーリSF90ストラダーレは、オートカーのロードテストの記録アーカイブで、いきなり特別な位置を占めることとなった。これほどハードな加速を計測したことはこれまでになく、ハンドリングテストを行うサーキットでも最速タイムを叩き出したのだ。

そうした事実は、マラネロが取り組もうとしている電動化へのチャレンジにおいても記念碑的なものとなるだろう。彼らはもっと早く、ミドシップハイブリッドを市場投入できたはずだ。それでも、ほかが飛躍を遂げるのを横目に、ふさわしい時が来るのを待った。

その速さや動作のなめらかさ、サーキットでの力強いラップなどによって、フェラーリの決断が正しかったことを、SF90は証明してみせたといえる。

そうして、多くの点で実力を示したわけだが、なにもかもうまくいったわけではない。公道上ではフェラーリらしいハンドリングだったが、サーキットでは通常のミドシップであるF8トリブートを上回ることができなかった。

電気モーターへの高い依存度が、このクルマの驚異的なペースをもたらしている一方で、ハンドリングは電気的に操作され、グリップ限界でどうにか帳尻を合わせている感じがする。

このクルマには期待した、無尽蔵に湧き出るような喜びがあるとはいえない。速いのだが、もっと楽しいクルマに仕立てることができたはずだと思わずにはいられない。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダースこの新たな電動化フェラーリには、運動性に改善の余地がある。しかし、それも時間が解決してくれるだろう。SF90はあくまでもはじめの一歩なのだ。しかし、会社にとって重要な方向性においては、じつに有用なモデルだ。

リチャード・レーン個人的にはスーパーカーのPHEV化には懐疑的だが、SF90はおすすめできる。それは、ハードウェアの完成度が高いから、というだけではない。出発後と帰着前のそれぞれ数kmを静かに、しかも比較的繊細に走れるというのがすばらしいからでもある。

オプション追加のアドバイス

サーキット走行を考えているなら軽量オプションがほしいのだが、カーボンパネル類はそれほど重量削減に寄与していないので、必要性を感じない。逆に、効果だが選びたいのは2400ポンド(約33.6万円)のApple CarPlayだ。また、3万9360ポンド(約551万円)のフィオラノパッケージも、迷っているなら付けたほうがいい。将来的なリセールを考えれば、その価値はある。

改善してほしいポイント

・トルクベクタリングは改良の余地あり。ESCオフでの介入を減らすか、ドリフトモードの設定を。
・フロント周りのパッケージングを見直して、もっと実用的なラゲッジスペースを設けてほしい。
・ステアリングホイールのタッチ式スイッチには、操舵中などにミスタッチしてしまうことがあるので、スリープモードがほしい。

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