シルバーストン・サーキットを舞台に開催されたF1第12戦イギリスGP。7月7日(日)に行なわれた決勝レースではメルセデスのルイス・ハミルトンが勝利を掴んだ。RBの角田裕毅は10位だった。
初日から天候に恵まれなかった今年のイギリスGPだが、F1の決勝レースが開始される頃の天候は曇り。分厚い雲の隙間から所々に晴れ間ものぞき、気温16度、路面温度33度というコンディションだった。ただ、サーキットには雨雲が迫りつつあった。
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前日の予選ではジョージ・ラッセルがポールポジションを獲得し、チームメイトのハミルトンが2番手とメルセデスがフロントロウを独占。3番手にマクラーレンのランド・ノリスが並び、イギリス人が母国でトップ3に並んだ。迎え撃つレッドブルのマックス・フェルスタッペンは4番手からのスタートだった。
スタートではほとんどのドライバーがミディアムタイヤを選択。グリッド後方では序盤のジャンプアップを目論んでソフトタイヤを履くドライバーもいた。
なお、レッドブルのセルジオ・ペレスはパワーユニット(PU)を交換。ピットレーンスタートとなり、唯一ハードタイヤを履いた。そしてアルピーヌのピエール・ガスリーはPU交換で最後尾からスタートする予定だったが、フォーメーションラップでギヤボックスにトラブル発生。リタイアを選択した。
52周のレースが幕を開けると、ラッセルとハミルトンがワンツー態勢を維持。3番手にはターン4でノリスを交わしたフェルスタッペンが続いた。
序盤から逃げを打ったラッセルは、2番手ハミルトンをDRS圏外まで追いやるとペースを維持。3番手フェルスタッペンはメルセデス勢から徐々に離され、逆に4番手ノリスの接近を許した。
15周目にはノリスがフェルスタッペンをロックオン。ハンガーストレートで背後にピタリとつけると、ターン15(ストウ)でフェルスタッペンのインを差して3番手を取り戻した。フェルスタッペンはペースが上がらず、その後ノリスのチームメイトであるオスカー・ピアストリにもオーバーテイクを許した。
この頃、サーキット付近に接近していた雨雲からポツポツと雨粒が落ち始め、観客席には傘の花が咲いた。ウエットタイヤへ交換するためにドライバーをいつピットに呼び込むか、各チームにらめっこという状況だった。
トリッキーな路面コンディションとなる中で、首位ラッセルに対して2番手ハミルトンが急接近。18周目のハンガーストレートでDRSを駆使して抜き去りトップに立った。
ただ、直後にトップ2台がコースオフ。その隙をノリスは見逃さずラッセルを交わしてハミルトンに迫ると、20周目のターン1(アビー)でオーバーテイクを完了し、一気に首位へ浮上した。
この“ちょい濡れ”路面でマクラーレンはまさに水を得た魚。ピアストリもラッセル、ハミルトンと立て続けに攻略してマクラーレンがワンツー態勢を築いた。
ギャンブル狙いでインターミディエイトタイヤへ履き替えるドライバーもいたが、一時的に雨が小康状態となったこともあり、路面はスリック有利に。ほとんどがスタートタイヤのままステイアウトを選択した。
そして26周目あたりから再び雨量が増えはじめ、その周の終わりに5番手フェルスタッペンらがピットに飛び込みインターミディエイトタイヤへと交換した。
マクラーレンは27周目終わりに首位ノリスをピットへ呼び込み、メルセデス勢はダブルピットストップを敢行。他のドライバーもここでピットへ飛び込んだ。
マクラーレンはダブルピットを嫌ったか、それともドライバー判断か、ピアストリは1周遅れてピットイン。スリックでは到底ペースを上げられない雨量となったことから、ピットアウト時には6番手にポジションを落とし、優勝争いから脱落した。
トップ4はノリス、ハミルトン、フェルスタッペン、ラッセルという状況。フェルスタッペンは上位勢よりも1周早くピットへ飛び込んだことで3番手までポールポジションを回復した。
ただコース上には濡れていない部分もあり、各車はインターミディエイトタイヤのデグラデーション(性能劣化)に苦しめられた。
すると34周目にラッセルのマシンに“ウォーターシステム”のトラブルが発生。ピットへ戻りリタイアを余儀なくされた。残されたハミルトンは、路面が急速に乾いていくコンディションの中ペースが上がらないノリスに接近していった。
この頃には雨も完全に上がり、サーキットには日が差し始めた。そして38周目終わりから各車が続々とピットイン。スリックタイヤへと交換していった。
ここでハミルトンも動き、ユーズドのソフトタイヤに交換。1周遅れてピットストップを行なったノリスに対してアンダーカットを成功させた。ノリスとしては、ピットボックでの停車で数秒ロスしたことが高い代償となった。
首位ハミルトンと2番手ノリスはソフトタイヤを使用し、3番手のフェルスタッペンはハードタイヤを選択。トップ3はファステストラップを叩き出し合いながら、周回を重ねていった。
逃げるハミルトンに対してノリスは迫れず。逆にフェルスタッペンがその差を縮めた。47周目にはフェルスタッペンがDRS圏内まで接近してノリスを射程圏内に捉えると、翌周のハンガーストレート先のストウで抜き去り2番手を奪った。
首位ハミルトンと2番手フェルスタッペンの差は3秒。残る4ラップでフェルスタッペンはギャップを切り詰めようとするも、ハミルトンはペースを崩さずファイナルラップへ突入。そのまま1周を逃げ切り、1.4秒差でトップチェッカーを受けた。
ハミルトンとしては、フェルスタッペンとタイトルを争った2021年サウジアラビアGP以来3シーズンぶりの勝利で、通算104勝目。来季はフェラーリ移籍が決まっており、今年がメルセデス最終年……様々な想いが脳裏をよぎるハミルトンの目には涙が浮かんでいた。
2位はフェルスタッペン。レース序盤は優勝争いから転げ落ちていったが、正しいピット戦略を追い風に、レース最終盤にはハミルトンに迫ってみせた。
3位はノリス。ダンプコンディションでは群を抜く速さを見せていただけに、表彰台獲得も悔しい気持ちを隠せずいた。最後のピットストップで、残っていた新品のミディアムタイヤを履かず、ソフトタイヤを履いてしまったことも、敗因のひとつかもしれない。
4位は最初のピットストップでトラックポジションを失ったピアストリ。5位カルロス・サインツJr.(フェラーリ)以下、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、ランス・ストロール、フェルナンド・アロンソ(ともにアストンマーティン)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、角田というトップ10だった。
13番手スタートの角田は11番手までポジションを上げると、正しいタイミングでピットに飛び込み9番手に浮上。アルボンにはコース上で交わされたものの、モナコGP以来の入賞でチームに貴重な1ポイントを持ち帰った。
F1は24戦中12戦を終了。シーズン前半ではウィナーが6人生まれた。さて、シーズン後半戦にはどんなストーリーが待っているだろうか。次のレースは2週間後のハンガリーGPだ。
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