JAGUAR I-PACE
ジャガー I ペイス
ジャガー I-PACE 上陸! EVでも“らしさ”が際立つ新たな仕上がり【動画レポート】
I-PACEはジャガーの“今”を牽引する存在
引き金をひいたのは、言うまでもなくテスラだ。そのヒットに刺激され、いよいよプレミアムカーメーカーのEV化の大きなうねりが起きつつある。ヨーロッパ勢でその先陣を切ったのは意外やジャガー。昨年、同ブランド初のバッテリー電気自動車となるI-PACE(アイ ペイス)を発表し、そして早くも日本導入を実現したのである。
意外という言葉を使ったが、実際には今のジャガーは、先進技術の導入にもブランドの変革にも決して消極的ではない。たとえばアルミボディのいち早い導入などを見てもそれは明らかだが、世間のイメージは必ずしもそうなっているとは言えないのも事実だろう。I-PACEの投入には、ジャガーの“今”を牽引する存在としての期待も大いに込められているのは間違いない。それだけに見た目も、中身も、I-PACEは非常に先進感が色濃いクルマに仕上がっている。
エンジンが無いぶんスタイリッシュ!
キャブフォワードで、キャビン形状はクーペライクなハッチバック。けれど背は高く、車体の四隅に最大22インチの大径タイヤが収まるスタイリングはインパクト十分だ。エンジンが無いぶんボンネットは短くなるし、フロアにバッテリーを敷き詰めるには背は高くしたい。それを今、市場が伸びているSUVと融合させようとなれば確かにこうなるわけだが、その姿はロングノーズこそジャガーという先入観を軽く覆すものだ。テスラ各車、あるいはメルセデス・ベンツやアウディのEVが、どれもその意味ではコンサバなフォルムで登場している中での大英断である。
もっともデザイナーによれば、実はフロントまわりは、幻に終わったスーパースポーツカー“C-X75”がモチーフだそうで、そうやって見ていけばなるほどブランドの文脈から完全に逸脱しているわけではない。個人的には最初は異物感を覚えたものの、そんな“らしさ”の発見もあり、どんどん見慣れて今ではかなり気に入ってきているから、きっと世間もじわりと受け入れていくのではないだろうか。
ちなみにCd値は0.29と、まずまずの数値になっている。フロントバンパー開口部は不要な時には閉じるシャッター付きとされており、ドアハンドルも走り出すと格納されてボディと面一となる。こうした辺りも貢献しているのは間違いない。また、リアスポイラーはルーフを通ってきた空気を後方に整流し、リアウインドウが汚れるのを防ぐ。おかげでリアワイパーは不要なのだ。
凄まじい剛性に、0-100km加速4.8秒という実力!
このボディは全体の94%をアルミ製としたモノコックで、3万6000Nm/deg.という凄まじい捻り剛性の高さを実現している。前後アクスルに1基ずつ搭載された電気モーターは合わせて最高出力400ps、最大トルク696Nmを発生し、2.2トンを超える車体を静止状態から100km/hまで4.8秒で加速させる。
その車重の要因が、大容量90kWhのリチウムイオンバッテリーである。しかしながら、これをフロア部分に敷き詰めて積むことによって、F-PACEと較べると実に120mmも低重心にできているのだという。前後重量配分もほぼ50:50のイーブンだ。サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがインテグラルリンク式で、標準はコイルスプリング。オプションとしてエアサスペンションも選択可能である。
インテリアも先進的!
室内に入ると、インテリアもやはり先進感たっぷりだ。ドライバーの正面には、フルデジタル12.3インチのインタラクティブドライバーディスプレイ。ヘッドアップディスプレイも用意される。そしてセンターコンソールには上段に10インチ、下段に5インチのデュアルタッチスクリーンが備わる。シフトレバー代わりにボタンスイッチを使うのは、直感的な操作ができず好みではないが、それ以外のいわゆるスマートフォンライクな操作感は上々。ハイテクに触れる歓びも、しっかり味わえる。
しかもI-PACEにはドライバーごとのシートやミラーの位置、よく使うオーディオ情報などを保存するほか、学習機能により空調を最適制御するなどのAI機能も搭載されている。またナビゲーションも、走行履歴や運転スタイル、目的地までの地形情報まで考慮した上で航続距離やバッテリー残量を算出。必要とあれば充電スポットを経由してのルート案内を行なうなど、EVならではの機能を満載。最新の技術で使い勝手を高めているのだ。
キャブフォワードのフォルムのおかげで、全長4695mmに対してホイールベースは2990mmと長く、室内空間には非常に余裕がある。室内長はほぼXJロング並みといい、実際に後席など足を組んで座れるほどだ。背は高いがフロアも高いので、着座姿勢はセダン的だが、囲まれ感のある運転席まわりの造形と相まって、これもジャガーらしいと言えばそう思える。
荷室も後席使用時656リットル、最大で1453リットルという大容量。テールゲートは寝ているしフロアは高いので積み込みはしやすくはないが、広さは文句なしだ。また、フロントフード下、センターコンソール、後席下などあちこちに収納があるのも有り難い。
数あるEVの中でも、よく練られている印象
走り出して思わず唸ったのは、加速感が静かで、そして滑らかだからだ。騒音や振動がきわめて小さく、アクセル操作に遅れなく欲しいだけのトルクを発生させる優れたドライバビリティは、数多あるEVの中でも更によく練られているという印象。しかもI-PACEは風切り音やロードノイズも低く抑えられているから、そのEVらしい快感を存分に味わえる。
一方、それでは物足りないという人のために、アクセル操作に応じて電気モーターの音を強調した電子音を発生させるアクティブサウンドデザインも装備される。それほど違和感は無く、適度に雰囲気を盛り上げるこの仕組み、アリだと感じた。
素晴らしい足まわりの完成度!
回生ブレーキも効き具合を選択でき、HIGHモードならアクセルオフだけで0.2Gの制動力が得られるからシングルペダルドライビングも可能。更にブレーキペダルを踏み込めば機械式ブレーキの0.2Gが加わり、最大0.4Gの強力な減速力が得られる。但し、ペダルタッチは今ひとつリニアリティが足りない印象だ。
特筆すべきは、まさにこれぞジャガーというフットワークである。20インチタイヤにオプションのエアサスペンションを備えた試乗車のシャシーは、しなやかに4輪を路面に押し付け、それなりに姿勢変化は許しつつも抜群のコントロール性で、操舵に対して応答鋭く向きを変えていく。前述の通りクルマは軽くはないのに、動きは軽やかなのだ。重心の低さ、前後バランスなども効いているのだろうが、何よりジャガーの職人達の素晴らしい仕事ぶりこそ、もっとも称賛されるべきに違いない。
航続距離438km! 80%までの充電は85分で完了
さて、よく走るのはいいとして、航続距離と充電所要時間はどうか。I-PACEはWLTCモードで438kmの航続距離を達成している。200Vの普通充電では約10時間で満充電となり、50kWのCHAdeMO急速充電を使えば0%から80%まで充電するのに約85分。大体、1時間の充電で270km前後の走行が可能なようだ。
試乗中に感じたのは、残り航続距離がなかなか減らないなということ。消費電力の少ないヒートポンプ式エアコンを使ったり、そもそものバッテリーマネージメントがよく練られているなどの相乗効果だろう。開発にあたって200台もの試験車で、地球60周分もテストしたというだけのことはある。
先進的かつジャガーらしいジドウシャ!
しかもI-PACEは、インフォテインメントシステム、テレマティクスユニット、そしてバッテリーコントロールモジュールの車載通信機を用いたワイヤレスアップデートも備わる。つまり購入時が最新・最良ではなく、その後もクルマが進化していくのである。電費だって、もっと向上していくに違いない。
このようにI-PACEは何から何まで、どこを取っても先進感にあふれた1台である。しかも、随所にしっかりジャガーらしいなと感じさせ、にやりとさせるポイントが散りばめられているのが、また良い。ジャガーの思い切った挑戦は、最良のかたちで具現化されたと言っていいのではないだろうか。
REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO&MOVIE/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)
https://www.youtube.com/watch?v=ONLjXoT5Gn4
【SPECIFICATION】
ジャガー Iペイス EV 400PS(エアサスペンション仕様)
ボディサイズ:全長4695 全幅1895 全高1565mm
ホイールベース:2990mm
車両重量:2240kg
駆動用バッテリー:リチウム電池
総電圧:388.8V
総電力量:90kWh
最高出力:294kW(400ps)/4250 – 5000rpm
最大トルク:696NM/1000 – 4000rpm
駆動伝達方式:AWD(前:モーター1基 / 後:モーター1基)
最終減速比:1.000
効率(WLTCモード):438km
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後インテグラルリンク
タイヤサイズ(リム幅):前後245/50R20
車両本体価格:959 – 1162万円(税込)
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