忘れ去られたトヨタのセダン
普段は深層心理のかなり底のほうに潜んでいて、ふと、何の前触れもなくポッと浮かひあがるコトやモノや言葉や名前がある。少し前、筆者の場合はそれが“ヴェロッサ”だった。
「マン振り」したけど大空振り! メーカーが威信をかけて作ったのに期待外れだったセダン4選
トヨタ・ヴェロッサ
ヴェロッサ、皆さんは覚えていますか? 気になり早速、厚紙の上質な封筒に入った発表当時の資料一式を見つけ出してみると、“トヨタ、新型車「ヴェロッサ」を発売”とタイトルされた平成13年(2001年)7月6日付けのニュースリリースが入っていた。報道関係者用のモノクロ紙焼き写真も一緒に入っていたのは当時のお約束でとても懐かしいが、ともかく、登場はもう20年前も前のことかぁ……とシミジミさせられるのは、こういう資料に久しぶりに目を通したときに感じる、いつもの気持ちである。 ヴェロッサは、2000年10月に登場した9代目・最終型マークIIと同じチーフエンジニアが手がけたモデルで、いわゆる兄弟車の関係にあった。2780mmのホイールベースも共通。だが、エッ!? と思わせられたスタイリングが特徴で、マークIIとは似ても似つかぬというより、トヨタ車らしからぬインパクト絶大なデザインを纏っていた。車名(Vero・真実+Rosso・赤からの造語)からしてイタリア風だったが、いかにも当時のアルファロメオ路線を狙ったことは明白。 だが、今見たら味わいのある姿に見えるかもしれない……と思う。4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションに前:215/45ZR17、後:225/45ZR17サイズのタイヤを装着(2.5LツインカムターボのVR25)など、走りの性能もスポーティな仕立てのクルマだった。ちなみにこのヴェロッサは、マークIIの兄弟車だったチェイサー、クレスタの後継車でもあったが、2年8カ月の短いモデルライフに終わった。
トヨタ・アベンシス
ほかに欧州調のトヨタのセダンというと、アベンシス(2代目・2003年)があった。このクルマはもともと欧州市場向けに誕生したモデルで、2代目は南仏・ニースの拠点ED2(EDスクエア)でデザイン開発、TMUK(トヨタ英国工場)で生産された。 走りはとにかく欧州車調のカッチリとした印象のもので、当時、試乗した筆者は「アウディかオペルのようなセダンだ」と実感したことを思い出す。バリエーションにワゴンもあったが、ゆとりのある室内、ラゲッジスペースは、まさしく欧州でも通用するものだった。開発チーフエンジニアはのちにレクサス車を担当している。
トヨタ・プログレ
一方で“小さな高級車”をコンセプトに、日本市場をターゲットに開発されたセダンにプログレがあった。登場は1998年5月のこと。このクルマは全幅を1700mmに定め、全長も当時のコロナプレミオよりもコンパクトにした上で2780mmのロングホイールベースを採用。 ドアガラスを通常よりも立てて外に出して配置することで、室内空間のゆとりも確保していた。FRのコンベンショナルな駆動方式を採用しながら“セルシオ品質”の仕上がりで、アンダーステートメントを求める上級車ユーザー向けに開発されたクルマ。このクルマのチーフエンジニアはセンチュリーも担当した方だった。
トヨタ・ブレビス
またプログレの兄弟車にブレビス(2001年6月)というセダンがあったことを、じつは筆者はこの原稿を書き始めてから思い出したくらいで、冒頭のヴェロッサよりも海の深いところに潜んでいた車名だった。
ブレビスは、ちょうどマークIIに対するヴェロッサのような存在だったが、クルマのキャラクターはプログレ同様の高級車路線で、ただデザインはフォーマルなプログレよりも情緒を盛り込んだものとなっていた。全幅は1720mmでプログレより20mm大きい。3Lと2.5Lの直6エンジンを搭載し4WDの設定もあった。
トヨタ・プロナード
ここから先の、こんなセダンがちょっと前のトヨタにはあった的なセダンとしては、北米生産車のプロナード(2000年4月)やその前身のアバロン(1995年5月)がある。これらのモデルは北米市場をターゲットにしたFFのラージセダンで、高級感というよりも実用性を重視したクルマ。
トヨタ・セプター
ほかにセダンとステーションワゴンが日本市場へ輸入されたセプター、北米市場でフォードやホンダ・アコードと販売台数でしのぎを削ったカムリ、レクサスES300の日本向けモデルのウインダムといったモデルも、もう日本では車名は消えてしまったが、グローバルで高評価を得たトヨタのセダンたちだ。
トヨタ・オリジン
それともう1台、せっかくなのでオリジンも取り上げておきたい。2000年11月から1年強、1000台限定ということで生産・発売されたこのセダンは、1999年10月にトヨタ国内生産累計1億台を記念したもの。 いうまでもなく1955年の観音開きのドアの初代トヨペット・クラウンRS型をモチーフとし、熟練のクラフトマンによるボディワークはハンドメイドとするなど、手間をかけた製造工程が特徴。当時のセルシオを上まわる車両価格が付けられていた。
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