■ミニバンのグリルの大きさは“成長”傾向?
クルマを買う時の検討材料として、見た目は重要な要素です。
【画像】三車三様!「ノア/ヴォクシー/ステップワゴン」のフロントデザインを写真で比較する(72枚)
そしてその見た目を決めるデザインのうち、フロントグリルは最も目立つ最前面にあるわけですから、果たす役割は大きいといえます。
このフロントグリルは、ミニバンでは大型化が進んでいます。
フロントグリルは、前照灯の間にある網のようなものを指します。ここから空気を取り入れて、ボンネットの中にあるラジエーターやエンジンルームを冷やします。
このフロントグリルですが、言及される際は性能よりもデザインについて語られることが多いでしょう。それは前述のとおり、クルマの印象を決定付ける重要なパーツだからです。
フロントグリルのデザインは車種により異なりますが、ブランドによっては形などを概ね共通にしていることもあります。
例えばBMWの「キドニーグリル」、そして、アウディの「シングルフレームグリル」、ロールスロイスの「パルテノングリル」など。
国産メーカーも、レクサスの「スピンドルグリル」や日産の「Vモーショングリル」、スバルの「ヘキサゴングリル」、三菱の「ダイナミックシールド」などが挙げられます。
クルマの表情をある程度そろえて「このクルマはレクサス車」「このクルマは日産車」というように、メーカーやブランドの認知度・存在感を高める狙いがあります。
そんなフロントグリルですが、ミニバンでは、存在感を大きくしてアピールするモデルと、存在感を小さくしてシンプルにするモデルの二極化が進んでいます。
2022年1月に発表・発売されたトヨタの新型「ノア」を見ると、グリルをボディ同色とした標準仕様とともに、大型メッキグリルを採用したエアロ仕様も設定。また、兄弟車の新型「ヴォクシー」は、黒いグリルとしています。
このようにデザインは選べるようになっていますが、いずれもフロントグリルが車両前面のほとんどを占めるほど大きく、存在感を存分に放っています。
同じくトヨタの「アルファード」「ヴェルファイア」や、日産の「エルグランド」「セレナ」も同じ傾向にあり、モデルチェンジを重ねるたびにフロントグリルが“成長”してきました。
各メーカーによる外観の解説では、「大胆」「堂々」「誇らしい」「見る者を圧倒」「よりダイナミックに」といった言葉が並びます。
■巨大化と一線を画す「ステップワゴン」
しかし、フロントグリル巨大化のトレンドとは距離を取るミニバンも存在します。ホンダの新型「ステップワゴン」です。
フルモデルチェンジし、今春の発売を控えていますが、新型のデザインには「クリーン」「シンプル」「より上質なこだわりの仕立て」といった表現が用いられています。
新型ステップワゴンはエアーとスパーダの2種類が発表されていますが、なかでもエアーは全体的にすっきりとしたシンプルなデザインが特徴。グリルは控え目で、フロント全体としては、シンプルかつ愛嬌のある印象です。
エクステリアデザインのコンセプトには「安心と自由」を掲げており、実際にデザインを担当した花岡久和氏は、そのふたつを「見たまま忠実に表現している」と説明します。
※ ※ ※
そして同じホンダ車では、ミニバンではないものの、SUVの新型「ヴェゼル」で、フロントグリルの存在感を目立たなくするデザインが話題になりました。
2021年4月にフルモデルチェンジした際、フロントグリルのデザインはボディと同色になったのです。新型ヴェゼルの開発担当者は次のように説明しています。
「新型ヴェゼルのフロントフェイスは、枠の無い同色のグリルを採用しました。電気自動車などはグリルレスがトレンドですが、そのままだとシンプルすぎるため主張が少なくなります。逆に、流行りのメッキ加飾などでギラギラしたものだと主張が強くなりすぎてしまいます。
新型ヴェゼルではクルマに一体化したものにしたく、色々とスケッチをしたなかで同色グリルになりました。
同色グリルにした理由は、これから電動車が主流になることもあり、新型ヴェゼルはハイブリッド車(e:HEV)が主力となるため、電動車化の入口的な表現も含めたデザインとして採用しました」
EV(電気自動車)は、そもそも冷やす対象のラジエーターやエンジンルームがなく、そのためフロントグリルのない「グリルレス」のモデルがあります。
しかし「グリルあり」のクルマを見てきた人にとっては違和感があるため、いわば折衷案のような形にしたということです。
EVが普及の兆しを見せている過渡期の今ならではのデザインといえますが、近い将来、フロントグリルは「エンジン車風の装飾」になったり(すでにそのようなモデルも存在)、エンジン車である印になっていくかもしれません。
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