ガソリン車とは別の楽しみ方があるEVの走り
現在政府が掲げている、いわゆる「2030年代ガソリン車禁止」に向けて着々と進む自動車のEV化。モータースポーツの世界でも「フォーミュラE」が開催され、ここ日本国内でもEVレースがおこなわれている。ところでEV車、そもそもサーキット走行に向いているのか。その辺りを事情通のライターに解説して貰った。
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EVがサーキット走行に不向きなワケ
電気自動車(EV)でのサーキット走行は、不向きだ。加減速を繰り返し、急速に大電流をバッテリーから出し入れすると発熱する。もちろん、そこからバッテリーが壊れたり、発火したりということは、自動車メーカーが販売するEVでは起こらない。そうした故障を起こさないため、バッテリーが温度上昇しはじめると、強制的に電流量を抑える制御が組み込まれているからだ。つまり、加減速はどうしても鈍くなっていく。 軽自動車でもサーキット走行が行われる今日、来年には発売されるのではないかとされる日産と三菱自の軽EVが期待されるが、上記の理由でサーキット走行は難しいし、無理に持ち込んでも運転を楽しめないのではないか。
もちろん公道を走るうえで、低速トルクの大きいモーター特有の胸のすく発進加速を味わうことはできるだろう。ただ、サーキット走行となると、より強烈な電流の上下を短時間に繰り返すため、不向きだという意味である。
これは、軽自動車に限らずほかのEVも同様だ。たとえば、米国のテスラ・モデルSの高性能仕様の0~100km/h加速は、ドイツのポルシェ・タイカンより速い。EVでは、乗用車がスポーツカーより高性能車になれるのだ。しかし、その加速を何度も繰り返すと性能は落ちる。そこでタイカンは、バッテリーを液体冷却することで、急な加減速を何度も繰り返せるようにした。そこが、スポーツカーの証でもあるというわけだ。
速度無制限区間のあるドイツのアウトバーンで、ポルシェのバッジを付けたEVが走るとなると、そういうこだわりが必要なのだろう。
しかし、すでにドイツ車でも、たとえばメルセデス・ベンツのEQCは最高速度を180km/hとしている。EVかエンジン車かという優劣ではなく、そもそも環境の時代に200km/h以上の超高速で走ることの意味が問われはじめている。
エンジン車でも超高速で走り続ければ燃費が悪化し、長距離移動では給油が必要になる。一般に5分で給油は済むといわれるが、軽油はタンク内の空気抜きが十分行われないと時間を要する。またガソリンスタンドに入り、給油し、代金を支払い、そして出発するまで約10分かかったとして、その間に追い越したはずの長距離トラックが前を走っていたというような経験を高速道路でした人もあるのではないか。
ある程度の高速性能は必要でも、適度な範囲で淡々と走り続けることが、燃費(EVなら電費)と移動時間の兼ね合いがとれるという一例だ。
EVは速さだけでなく、振動や騒音のない快適な移動とエンジンより応答性に優れるモーターでの速度調整など、快適かつ楽に運転できることにより、そうした淡々とした走行を支える。EV時代を迎えるに際して、単に時速何キロという高い数値だけでなく、心地よいクルマでの移動の価値が見直されていくのだと思う。
むしろEV向きなモータースポーツもあった!
そのうえで0~400メートル(ゼロヨン)加速を競うドラッグレースは一発勝負であり、EVが得意とするところだ。ジムカーナも短時間の勝負だから、タイム競争を楽しめるだろう。EVにはEVらではの特性を活かしたモータースポーツがあり、楽しめる場はある。また、EVだからこそというモータースポーツが新しく誕生してもいい。
たとえば、排出ガスの出ないことを利用した屋内(インドア)でのカート競技などがそれにあたるだろう。動力の持ち味が異なるのに、エンジン車と同じ価値を求めることは的外れになりかねない。
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