■SUVブームのなか、日産はなぜSUVを減らした?
自動車業界では、SUVブームが続いています。国内市場では、過去に本格的な四輪駆動性能を特徴とするモデルが人気となった「RVブーム」がありましたが、近年の「SUVブーム」は、2010年頃から始まったといわれています。
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そのSUVブームに乗っかるために自動車メーカー各社は、多種多彩なSUVモデルを国内外の自動車市場に投入していますが、日産に限ってはピーク時に5車種ものSUVラインナップを持ってたものの、現在では2車種のみです。
SUVブームが続くなかで、なぜ日産はSUVのラインナップを減らしているのでしょうか。
近年のSUVブームは、世界中の自動車メーカーを巻き込んで一大トレンド化しています。そのため、日本、欧州、米国、中国など自動車市場の主要地域で開催されるモーターショーでは、SUVモデルの新型車やフルモデルチェンジの発表が相次いでいるのです。
同様に国内市場でもここ数年、新型SUVの発売ラッシュが続き、新型モデルとして発表されたマツダ「CX-8」、三菱「エクリプスクロス」、レクサス「UX」、マツダ「CX-30(2019年予定)」や、フルモデルチェンジして話題となったスズキ「ジムニー」、スバル「フォレスター」が登場。また、国内市場への復活組としてトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」なども存在し、国内では異常なほどの盛り上がりを見せています。
そんななか、2019年7月時点での日産SUVラインナップは、「エクストレイル」と「ジューク」だけです。元々、日産はセダンやワゴンといったモデルが主力車種の自動車メーカーでしたが、日産の業績不振などによって1999年にカルロス・ゴーン氏が経営の立て直しを図ったタイミングからSUVラインナップが増えていきました。
当時、新たに国内市場へ投入されたSUVは、「エクストレイル(2000年)」、「ムラーノ(2004年)」、「デュアリス(2007年)」、「スカイラインクロスオーバー(2009年)」、「ジューク(2010年)」と、多彩なラインナップを展開していました。
しかし、2019年7月現在、ムラーノ、デュアリス、スカイラインクロスオーバーは日産のSUVラインナップから姿を消しています。それぞれのモデルはどのような経緯で誕生し、姿を消したのでしょうか。
日産の販売店スタッフは次のように説明しています。
――ムラーノの誕生背景や廃止について
ムラーノは、2004年に登場して2015年に国内市場から姿を消しています。当初は北米向けの車種として登場しましたが、日本のお客様からの要望が多かったこともあり、国内市場に投入されました。
国内では、初代モデル(2002年から2008年)、2代目モデル(2008年から2015年)と販売してきました。当初は、デザインや過去に人気を博した「サファリ」以来の大型SUVということもあって、販売は好調でした。しかし、2010年以降は各社がSUVモデルに力を入れてきたことや、日本の道路事情的にもより扱いやすいSUVにニーズが移ったことなどもあって、国内市場から姿を消しました。
――デュアリスの誕生背景や廃止について
デュアリスは、2007年から2014年に国内市場で販売されていたモデルです。デュアリスは、ムラーノと違い欧州市場を意識したデザインや仕様が特徴でした。
発売当初は、都会派のデュアリスとアクティブ派のエクストレイルという形で棲み分けをしていました。デュアリスは、欧州向けということもあって、走行性能の評価は高かったようです。
しかし、エクストレイルが3代目にフルモデルチェンジした際に、従来のアクティブやアウトドアというイメージから都会派寄りのスタイルに変更したことで、ラインナップが統合され、姿を消しました。
その結果、デュアリスは国内市場で1世代という短命で姿を消しますが、海外では「キャシュカイ」や「ローグスポーツ」といった名称で2代目モデルが販売されていたようです。
――スカイラインクロスオーバーの誕生背景や廃止について
スカイラインクロスオーバーは、元々日産が展開する高級ブランドのインフィニティにラインナップされている「EX35」として北米市場に投入されました。
国内市場では、スカイラインクロスオーバーという車名で、2009年から2016年の間に販売されていましたが、既存のスカイラインとは共通しているパーツが少なかったと思います。
発売当初は、スカイラインのSUV版として多くの注目を集めましたが、新車価格が450万円から550万円と高額だったことや、ムラーノ同様に日本の道路事情や競合他車の影響もあって、パッとしない販売状況だったのを覚えています。
※ ※ ※
ムラーノ、デュアリス、スカイラインクロスオーバーは、いまのSUVブーム黎明期に登場したモデルです。しかし、多様化するユーザーニーズによって、SUVに求められるものは年々細分化していきます。
そのため、販売台数ランキング上位のトヨタ「プリウス」「アクア」や日産「ノート」などのように、多くの台数を稼ぐことは難しくなっています。
また、直近までゴーン体制だった日産は国内市場にあまり力を入れず、売れないモデルは廃止し、最低限のモデルラインナップとモデルチェンジに留めていました。
その結果が、近年のSUVブームにおいてSUVラインナップが減った理由なのかもしれません。
■奥様のニーズは、ミニバンからSUVに変化した?
SUVと同様に人気を博しているのが、ミニバンです。国内のミニバン市場は、平成の30年間には浮き沈みはありますが、堅調な販売を維持しています。
2018年の新車販売台数TOP20では、日産「セレナ」、トヨタ「シエンタ」「ヴォクシー」「アルファード」「ノア」、ホンダ「フリード」「ステップワゴン」と多くのモデルがランクインしています。
しかし、最近では「ファミリー = ミニバン」というイメージが変わってきているようです。日常的にミニバンを運転する機会の多い奥様たちから「ミニバンは嫌」という声が増えているといいます。
最近のユーザー動向について、トヨタの販売店スタッフは次のように説明しています。
「ミニバンの人気は高いままです。やはり、家族で使うことを考えると一番理想に近いクルマといえます。しかし、各自動車メーカーからは、コンパクトや3列シート車など多様化するニーズに応えられるように、さまざまなSUVが出ています。そうしたことから、ミニバンでなくても良いと考えるファミリーがSUVに乗り換えをするケースも増えています。
とくに、新型RAV4は20代・30代といった若年層に好評なことから、若いファミリーではSUVを購入される可能性も高いといえます」
また、都内の幼稚園に子どもを通わせている奥様たちは、次のように話します。
「最初は、クルマのことをよく知らずスライドドアなど使い勝手の良さが魅力的でしたが、出かける際に同じクルマと遭遇することも多く、他人と一緒というのが嫌かなと思いました。最近では、SUVでも使い勝手を意識したクルマも多いので乗り換えを検討しています(40代・子ども2名)」
「スライドドアや人を多く乗せられることは魅力ですが、ミニバンは大きいので狭い道や駐車時に苦労します。ほかのクルマに比べて四角いから運転しやすいと聞きますが、人によっては慣れても運転しにくいと思います。親戚のSUVに乗った際には、車高が高いおかげか段差なども気にならなく乗りやすかった印象です(30代・子ども1名)」
「いま、メインはSUVに乗っていて、サブとして軽自動車に乗っています。以前までは、ミニバンをメインとして遠出に使っていましたが、高速道路などではいまのSUVの方が快適です。ただし、近所での移動はスライドドアの軽自動車の方が使い勝手が良いです(40代・子ども2名)」
※ ※ ※
自動車メーカーのSUVブームが続くなかで、人気ジャンルのミニバンからSUVに乗り換えるユーザーも出てきているようです。
極端に多い販売台数が見込めなくても多彩なSUVモデルが登場することは、国内市場の活性化に繋がります。今後も、マツダ「CX-30」やダイハツ「DNトレック(仮)」、そしてジュークの新型モデルが登場を控えているなど、SUV市場は今後も注目されるジャンルといえます。
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