パリ生まれのフレンチブランド「DS」が持つ独特の世界観は、フランスの文化そのものがクルマづくりに色濃く反映されているのだが、そのフラッグシップモデルである「DS9」は、フランスの伝統と最先端技術が融合されている。このラグジュアリーセダンに試乗する機会を得た。(Motor Magazine 2022年6月号より)
フランスのものづくりの「魂」が息づく1台
DSブランドに新たに加わったフラッグシップセダンのDS9。大きさはDセグメントとEセグメントの中間ぐらいだが、中味はEセグメントのそれを凌ぐ充実ぶりと独特の輝きをみせている。
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このDS9の注目点のひとつはインテリアで、伝統のオートクチュールの匠の技である「サヴォア・フェール(savoir-faire)」だ。
これはフランスのものづくりの矜持でもある。たとえば、センターコンソールのクル・ド・パリ文様や、ルーブル美術館のガラスのピラミッドを彷彿とさせるダッシュボード中央のスイッチ、エアアウトレットのダイヤモンドパターンの造形などは、まさにそれを体現していると言えるだろう。
ほかにも、オートクチュールのドレスの縫製技術で、真珠のネックレスのように表糸を露出させる技法の「パールトップステッチ」、時計のストラップからインスピレーションを得た「ウォッチストラップシート」などもそうである。
シートは、フランス伝統の馬具職人や革職人の技術を応用し、一枚革が使われ、さらに始動時に回転し現れてくるフランスのラグジュアリー時計ブランド「B・R・M」の採用など、独自の世界観を挙げると枚挙に暇がない。
リアシートは「DS LOUNGE」と呼ばれ、とても快適かつ癒しの空間となっている。とくに「オペラ」はシートヒーターに加え、マルチランバーサポート(マッサージ)、クラス初となるベンチレーション機能が装備される。
DSらしい浮遊感の走りが、コンフォートモードで味わえる
DS9のディメンジョンは、全長4940mm、全幅1855mm、全高1460mm、ホイールベース2895mm。パワートレーンは、1.6L直4ターボ(225ps)仕様車に加え、これに出力110psを発生する電気モーターをフロントに積みトータル250ps/360NmのPHEVをラインナップする。
試乗したのは、装備類が充実したエンジン車のオペラ。DS9をよく見ようと近づくとドアハンドルがポップアップする。遠ざかると今度は自動で収納されロックしてくれる。とてもスマートかつ便利なアンロック/ロック機能である。またドアハンドルが収納された時のフォルムは、とても美しく、いつまで見ていても飽きない。
他にも、このDS9にはお楽しみがある。それはLEDヘッドライトだ。キーでロック解除すると、LEDヘッドライトがアクセントカラーのパープルの輝きを放ち、回転してドライバーを迎えてくれる。これは一見の価値ありだ。
DS9には、随所にDSのアイコンが見える。それはパールのネックレスをイメージしたという縦型のデイタイムランニングライトであり、ダイヤモンド形のグリルであり、LEDテールライトである。そしてこれまでのDSにない雰囲気を出しているのが、エンジンフード上に縦に伸びたセイバーである。これは、ひと目でDS9だと認識することができる。
DS独特のセンターコンソールにあるエンジンスタートスイッチを押すと、その上が回転しB・R・Mのアナログ時計が現れ、1.6Lエンジンに火が入る。
走り出すと、実に穏やかなフットワークが印象的だ。ドライブモードが選べるので、もう少しハードに走りたければ「スポーツ」を選べばいいだけだが、お勧めはやはり「コンフォート」である。この走りは実にDSらしいもの。
この浮遊感とも言えるDS独特の味わいを醸し出すのが、標準装備される「DSアクティブスキャンサスペンション」である。これは特別な操作は必要なく、「コンフォート」時に常に作動しているもので、フロントのマルチファンクションカメラが前方5~20mの路面状況を瞬時にスキャンして路面の凹凸を検知、路面に合わせたフィードフォワード制御が働き、四輪ダンパーの減数力をそれぞれ独立して最適化するというもの。DS9は、この走りが味わえるだけでも選ぶ価値があるだろう。(写真:井上雅行)
DS DS9 オペラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4940×1855×1460mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1598cc
●最高出力:165kW(225ps)/5500rpm
●最大トルク:300Nm/1900rpm
●トランスミッション:8速AT(EAT8)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:14.4m/L
●タイヤサイズ:235/45R19
●車両価格(税込):699万9000円
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