■小粒でピリリ! アグレッシブな新型ヤリスの外観デザイン
イタリアやフランスの都市で数多く走っているコンパクトカーですが、日本車の姿もよく見かけます。もちろん初代「ヤリス」を含め歴代「ヤリス」の姿を欧州の街並みで見かけることもあり、欧州コンパクトカーと同じくらい景観に馴染んでいます。
しかし、日本では欧州コンパクトカーの方がどうしてもオシャレなイメージがあり、デザインやライフスタイルにこだわりのある人が購入するケースが多いようです。新型ヤリスは日本市場でどれだけこうした意識高い系の人に受け入れられるのか、同じく2019年に新型が発表された欧州コンパクトカーとデザインで比べてみました。
徹底比較! 新型ヤリスをルノー・ルーテシアとプジョー208と写真で比べる(39枚)
欧州ではBセグメントといえば最量販カテゴリーの激戦区です。欧州各メーカーも当然ながら本気で力を入れているモデルがひしめいています。2019年10月に発表された新型ヤリスですが、じつはこの時期に発表されたのには訳があります。
欧州で新型ヤリスの競合車となるのが、ルノー「ルーテシア」(欧州名:クリオ)とプジョー「208」です。
新型ルーテシアと新型208はともに2019年3月のジュネーブモーターショー2019で発表されました。新型ルーテシアは2019年5月にすでに新型の発売が欧州で開始されており、日本では東京モーターショー2019で日本初お披露目されます。
一方の新型プジョー208は2020年に欧州での発売が開始されます。
欧州ではまさに三つ巴の真っ向勝負の火蓋が切られたというわけです。この2台と新型ヤリスを内外装のデザインで比べてみましょう。
●3車とも勇ましいツリ目スタイル
まず最初に3車のディメンションを比べてみましょう。
新型ヤリスは、全長3940(-5)mm×全幅1695(±0)mm×全高1500(±0)mmです。対して新型ルーテシアは全長4050(-45)mm×全幅1798(+48)mm×全高1440(-5)mm、新型208は全長4055(+80)mm×全幅1745(+5)mm×全高1430(-40)mmです。( )内は前モデル(日本仕様)との比較になります。
新型ヤリスのデザインキーワードは、「B-Dash ! 」です。Bold(大胆)、Brisk(活発)、Boost(加速)、Beauty(美)などの頭文字の「B」、そしてBullet(弾丸)のようにダッシュして、「力」を凝縮し、今にも走り出しそうなスタイルを表現しています。
新型ルーテシアはグリルなどに先代モデルの雰囲気を残しつつ、ルノーの最新デザインに則ってヘッドライトの外周に「CシェイプLEDランプ」、「Cシェイプウインカー」が採用され、キリリと引き締まった目元になりました。
一方の新型208は新型ルーテシア以上に見た目が大きく変わりました。シングルフレームのグリルが採用され、ヘッドライトやテールライトの縦のラインは、3本の爪痕を表現したデザインとなっています。誤解を恐れずにいうと、ドイツメーカーのような印象をうけるフロントマスクです。
3車のなかでもっとも背の高いのは新型ヤリスですが、新型ルーテシアと新型208と比べて全高が高い印象がありません。むしろ新型ヤリスがもっとも低く見えます。
新型ヤリスはフロントウインドウだけでなくリアウインドウもかなり傾斜がつけられていることに加え、サイドのグラスエリアが尻上がりにカーブして狭くなっていることが、その理由に挙げられるでしょう。
新型ルーテシアも同じくサイドのグラスエリアはタイトな印象ですが、リアグラスの角度が立っているために、リアがぽってりとした印象となります。
新型208はリア乗員の視界を確保するためか、サイドのグラスエリアはしっかりと取られており、後席窓のエンド部はほぼ垂直に立っています。このために往年のプジョー「205」のボクシーなスタイルを想起させてくれます。リアウインドウは新型ヤリスと同じくらい傾斜がついていますが、新型ヤリスと比べて全高が70mmも低いため、リアのヘッドクリアランスなども考慮するとしっかりとグラスエリアを取って後席乗員の視界を確保する必要があったのでしょう。
エクステリアのデザインだけを見ると、もっとも新規感があるのは新型208です。新型ルーテシアは先代からのキープコンセプトで落ち着いた印象ですが、デザインで攻めている感じがしません。
新型ヤリスはフロントマスクこそオーソドックスなスタイルですが、前傾したキャビンにフレアしたリアフェンダーへとつながるラインなどで、短距離走の選手がクラウチングスタートでセットした一瞬と同じ緊張感が表現されています。
外観では、小粒でピリリとしたコンパクトカーを求めるのなら新型ヤリスか新型208、落ち着いたエレガントなコンパクトカーを求めるのなら新型ルーテシアということになるでしょう。
■広くてシンプル! 真面目な新型ヤリスのコックピット
トヨタの調べによると、日本でコンパクトカーと呼ばれるBセグメントのクルマは、ほとんどの場合1名乗車か2名乗車で使用される傾向にあるといいます。これは日本市場でも世界市場でも同じようです。
そこで後席はこの際あえて考慮せず、運転席まわりのデザインのみに絞って、3車を比較してみましょう。
●各メーカーの思想がもっとも現れるコクピットデザイン
新型ヤリスのインテリアは、「SPORTECH-COCOON」をキーワードに、楽しく操る機能部品と心地よい素材感に包まれた空間との対比が図られています。
ダッシュボードは断面を薄くし、上級車と同じ比率にしたことでよりワイドに感じられるようになっています。またセンターコンソールを20mm拡幅し、左右フロントシートをそれぞれ10mm幅を広げたことで、実際のサイズ以上に広く感じられます。
さらにステアリングホイールの外径を5mm、センター部を40mm小さくすることでスポーティな印象に仕上がっています。
メーターパネルは双眼デジタルTFTメーターを採用し、フードレスとすることでインパネ上面がスッキリとした印象となっています。
全車に標準装備されることになったディスプレイオーディオはダッシュボードの真ん中の上方に配置され、ドライバーの目線移動の低減と操作がしやすくなっています。
新型ヤリスのコックピットは、全体的にシンプルで奇をてらったところが一切ないまじめデザインといえます。
新型ルーテシアは、直線的なダッシュボードに加えエアコン関連のスイッチこそ極めてオーソドックスですが、まるでFR車でもあるかのように高くそびえたセンターコンソールや、欧州Bセグメントでクラス最大となる9.3インチ縦型マルチメディアモニターとそのモニターの下に配置されたピアノの鍵盤のように並ぶスイッチなど、見どころには事欠きません。
しかし3台中もっとも未来的なデザインのコックピットは、間違いなく新型208です。
プジョーが提唱する、より自然なドライビングエクスペリエンスを目指したコックピットデザインである「i-Cockpit」を新型208も採用しています。最新の人間工学に基づいたヘッドアップインストルメントパネルなど、Bセグメントと思えない作り込みがなされています。
ダッシュボードのセンターに配置されるタッチスクリーンは、車両のグレードによって7インチと10インチになりますが、その下に配置されるピアノキー・トグルスイッチや独特のデザインを持つギアボックスのコントロールなど、高級感あふれる仕上がりとなっています。
ステアリングホイールもトップとボトムがフラットになった形状です。
階層的なダッシュボードの形状や内装に使用される素材の使い方など、新型208は新型ヤリスと新型ルーテシアを寄せ付けないほど圧倒的に洗練されています。
デザインコンシャスな新型208のコックピットは、ライフスタイルにもこだわりのある人にはストレートに刺さる魅力にあふれています。
※ ※ ※
新型ヤリスは、1.5リッター直列3気筒エンジンのハイブリッドと、1リッターと1.5リッターの直列3気筒エンジンの3つのパワートレインから選択することができます。
欧州で販売されている新型ルーテシア(欧州名:クリオ)は、1リッター直列3気筒エンジンと1リッター直列3気筒ターボエンジン、1.3リッター直列4気筒ターボエンジン、1.5リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンの4つに加え、2020年には1.6リッター直列4気筒エンジンと電気モーターを組み合わせたフルハイブリッドのE-TECHが加わり5つのパワートレインが用意されています。
新型208は、1.2リッター直列3気筒エンジンの出力違いで3種、1.5リッター直列4気筒ディーゼル、そしてEVの5つのパワートレインがあります。
新型ヤリスもグレードやオプション設定については2019年12月に発表予定なので、細かな仕様まではわかりません。新型ルーテシアと新型208もどのパワートレインがいつごろ日本に正規導入されるか未定です。
もちろん正確な車両価格も3台とも不明なので、写真を眺めてどれが一番いいか悩む今が一番楽しいのかもしれません。
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