現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【手頃なEVのベストチョイスは?】マツダかミニか 各ブランドの性格が顕著 短所は大差なし

ここから本文です

【手頃なEVのベストチョイスは?】マツダかミニか 各ブランドの性格が顕著 短所は大差なし

掲載 更新 9
【手頃なEVのベストチョイスは?】マツダかミニか 各ブランドの性格が顕著 短所は大差なし

安価で楽しいEV

おそらく、運転して本当に楽しい電気自動車の登場を待ち続けている読者は多いだろう。とはいえ、8万5000ポンド(約1190万円)のポルシェ・カイエンや6万4000ポンド(約896万円)のジャガーIペイス、4万5000ポンド(約630万円)のポールスター2といった、高額モデルの話はもう聞き飽きているかもしれない。

【画像】写真で見るミニ・エレクトリックvsマツダMX-30 全7枚

それならば、今回のテスト車はどうだろうか。どちらも、補助金を差し引けば2万8000ポンド(約392万円)以下で手に入るのだ。しかも、どちらも走りの重要性を理解している点では、定評のあるメーカーが造った商品だ。

それをよく表わしているのが、ミニ・クーパーとマツダMX-5、すなわちロードスターだ。どちらもベストな仕様であれば、われわれが愛する前輪駆動と後輪駆動のスポーツカーの姿を示してくれる。充電ケーブルを抜いて走り出す前から、楽観的でいられる理由がそこにある。

ミニ・エレクトリックは発売からしばらくの時間が経っていて、すでによく知っている。端的にいえば、われわれのお気に入りの一台だ。とくに好ましいのは、急激に立ち上がる27.5kg-mのトルクによる加速や、ミニらしい金魚鉢の中から見るような前方の眺めだ。

また、間違いなく重心が路面をかすめるような感覚と、うまくチューンされたステアリングのレスポンスも挙げられる。それらは、ミニを表現するものとしてしばしば引き合いに出される、ゴーカートのような俊敏さを紡ぎ出す重要な要素だ。

もしもコンパクトなEVが必要で、しかし走りの楽しさを諦められないのであれば、今のところこれが、手頃な価格帯ではベストな選択肢だ。ただし、ウェット路面のラウンドアバウトを走るときなら、ルノー・トゥイジーという例外もあるが。

物足りない航続距離

すでにミニの新車販売において1割ほどを占めるEVモデルだが、ひとつだけ気に入らないことがある。あまりにも乏しい航続距離だ。フル充電で225kmという公称値も物足りないが、現実的にはさらに短くなり、180kmを切る程度だ。

この数字は、コンパクトEVカテゴリーを見回しても不足を感じる。ライバルたちをみてみると、プジョーe-208は332kmの航続距離を謳い、フィアットの新型500でも320kmは走るとされているのだ。

だから、いくらミニEVの走りがよくても、セカンドカーという位置づけから抜け出すことはできない。黄色いトグルスイッチをオンにして走り出す前から、その事実は変えようがないのだ。それで事足りるかどうかは、ユーザーそれぞれの求めるものによるだろう。

そんなミニの航続距離は、マツダMX30にもチャンスを与えるものだといえるのではないだろうか。235kg重く、パワーに劣り、価格はやや高いが、相対的には互角になれるのではないかと。ところが、マツダ初のEVは200kmしか息が続かない。ミニよりも移動範囲の自由度が低いのだ。

そんなMX30を擁護するならば、ライトサイジングなアプローチを主張するだろう。市場のニーズを慎重に検討して、そのスペックは決められたのだ。

マツダは、より大きなバッテリーパックを積むことも可能だったというが、そうしなかったのは価格と、ハンドリングに悪影響を与える重量を抑えるためだ。しかも、一般的なユーザーが日常的に走る距離は一日あたりせいぜい80km程度。となれば、いたずらにバッテリーを大型化しなくてもいいというわけだ。

たしかに、客観的にみれば正しいのだろう。机上の話としては、十分なほど道理に適った話だ。しかし、郊外でのコミューターとして使われることもあるだろうコンパクトクロスオーバーにとってはマイナスとなる戦略だ。CO2規制を切り抜けるためには、欧州でかなりの台数を売らなければならないのだから、得策とはいえない。

GT的なマツダとスポーティなミニ

航続距離は残念な要素だが、少なくとも走らせてみれば、好材料も見つけられる。結局、MX-30の魅力を高めるのは、ミニを上回りそうな運動性だ。これならば驚くほど洞察力があり、マツダ信者というわけではないマツダ車オーナーにもアピールできる。

近くで見ると、20年くらい前のすましたコンセプトカーを思わせる。われわれが思い出したのは、フォード021Cやダッジ・カフナだ。そんなマイナーなショーモデルをご記憶の読者は少ないだろうが、MX-30のシリンダー風ライトや厚ぼったいクラッディング、複雑さを排したボディラインなどは、ミニカーを原寸大に拡大したようなテイストを漂わせる。

キャビンには、冒険的なところはあまりない。観音開きドアや、自社のルーツをたどるように採用したコルクのトリムくらいだ(そう、1920年に東洋コルク工業として発足したマツダは、プジョーと同じくまったくの異業種から転身した自動車メーカーだ)。

運転環境は退屈にも思える昔ながらのエルゴノミクスだが、今となってはそれがむしろ目新しい。それらはまちがいなくいい出来だが、ベースとなるエンジン車から多くを流用していることがその大きな理由だ。

マツダの場合、変更可能な走行モードは用意されず、使い方に迷うようなギミックもない。室内にさまざまな電子音が響き渡り、蛍光色のアクセントや奇妙なディスプレイを備えるミニと違って、マツダのインテリアはトラディッショナルだ。ただし、メーターパネルは左右対象ではなく、解像度が粗いことに驚かされるが。

リムの細いステアリングホイールは、MX-5からの流用かと思わせるもの。メーターはデジタルだが、アナログ調のデザインだ。ファブリックのシートは、モダン家具のカタログに載っていそうな見栄えだが、サポート性に優れ、快適でスポーティだ。

いっぽうのミニは、より身体を包み込むようなシートで、着座位置がうれしいくらい低く、視線がスカットルをかすめるような感覚だ。かたや高級GT的、かたや小さなロケットのよう、とたとえても、どちらがどちらか、すぐにわかるだろう。

とにかくダイレクトなミニ

同じような違いは、ドライビングにも当てはまる。走りは単調なものが多いEVの中にあっては、2台とも並外れたよさをみせる。それは期待通りだ。しかし、どちらもEVとしてはすばらしいニュートラルなバランスを備えているとはいっても、走らせてみるとまったくの別物だ。

184psのミニは、ガソリン車のクーパーSより140kgほど重いが重心は低く、明らかに素早さで上回る。パワートレインもハンドリングも、レスポンスはよりクリーンだ。

どちらも予想通り、乗り心地は滑らか。スプリングレートが、重いバッテリーに対応するべく高められているはずなのだが。ただしミニは、ロールが最小限に抑えられ、グリップレベルは掛け値なしにみごとだ。重量バランスも優れているので、スロットルやステアリングの入力のひとつひとつに対して即応する感覚がある。

ヤンチャなところは、それほどみられない。ただただ強烈にダイレクトで、ゾクゾクするほどだ。脳髄を直撃するような刺激が、いきなりやってきて、いつまでも神経にその感覚が残る。ブラボー、ミニ!

反対に、27.5kg-mのトルクはミニと肩を並べるMX-30は、やや重々しさがある。テストしたのが先行量産車だったこともあるかもしれないが。しかし、本当に速いエンジン車にもそういうところはあるものだ。

ブレーキに関しては、マツダはミニのようなフィールやコンフィデンスをもたらしてはくれなかった。また、効きはじめまでの踏み込み量が多い。そして、ドライビングポジションが高いので当然ながら、ゆったり走るにはとても適しているが、ドライビングの満足感を求めるには向いていない。

明確な各ブランドの個性

たしかに、MX-30の魅力はミニよりも上品なものだが、間違いなく存在する。ステアリングは、電動クロスオーバーとしては完成度が高く、まっとうなスポーツカーが備えていても場違いではないくらいのものだ。

もっとも驚いたのは、ミニのステアリングよりコミュニケーション性に優れていることだった。そして、ギア比の設定とロールレートが完璧にマッチングしている。さすがはマツダだ。

最高に楽しいのは、指先の軽い動きだけで道を縫って走るときだ。なめらかなボディの動きと合わせて、巧みに推進力を維持するようにすれば、結果として電費も稼げる。

ミニのように走らせようとすれば、追い立てられるような運転になり、グリップと動力性能の不足にフラストレーションを溜めることにもなってしまう。むしろ小さくて非力なMX-5と同じような運転をしたほうが、思いがけず優秀なドライバーズカーだとわかることになるだろう。

実際のところ、これら比較的小さく安価な2台のEVは、どちらもこのカテゴリーの進化の明らかな見本とはいえない。だが、どちらも等しく大成功を収めているのは、各ブランドの走りのアイデンティティを、電動モデルにうまく落とし込んでいる点だ。もし目隠しして乗っても、どのメーカーが造ったクルマか秒でわかるはずだ。安心してほしい。

では、どちらがこの対決の勝者か。マツダの控えめな気楽さや巧妙な仕上げは心地いいはずだ。とはいえ、週末を楽しむパートナーに選びたいのは一台だけ。それが答えだ。

こんな記事も読まれています

レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
レクサス新型「FF最大・最上級セダン」世界初公開に大反響! めちゃ“斬新グリル”&一文字ライト採用! “6年ぶり”に内外装刷新の「ES」中国に登場!
くるまのニュース
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
20年前の個体なのに走行距離301キロ!? 555台の限定車 BMWアルピナ「ロードスターV8」がオークションに登場 極上車の気になる予想価格とは
VAGUE
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
完璧なシーズンでも届かない、王者の背中。ノリス「たとえミスがなかったとしてもタイトルを手にできたかどうか……」
motorsport.com 日本版
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
苦手な「前向き駐車」なぜコンビニで推奨されるのか? 「もちろんやってる」「出る時が怖い…」賛否あり!? バック駐車じゃない理由への反響は?
くるまのニュース
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
今でも現役! いろんなバイクに採用されています。「SOHC」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
ダイハツ『タフト』安全性能向上で仕様変更、138万6000円から
レスポンス
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
BMW 2シリーズクーペ【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
レクサスの末っ子LBXに、次世代モダンインテリア空間を表現したElegantが新登場
レクサスの末っ子LBXに、次世代モダンインテリア空間を表現したElegantが新登場
カー・アンド・ドライバー
荷台が“伸びる”ダイハツ「斬新軽トラ」登場! “画期的”発想の「超ロングボディ仕様」がスゴい! まさかの「実車化」果たした衝撃のモデルでWRCをサポート
荷台が“伸びる”ダイハツ「斬新軽トラ」登場! “画期的”発想の「超ロングボディ仕様」がスゴい! まさかの「実車化」果たした衝撃のモデルでWRCをサポート
くるまのニュース
新車で買える!? トヨタ「シエンタ“SUV”」がスゴイ! 5人乗り仕様もある「小型SUVミニバン」が台湾で人気すぎるワケとは
新車で買える!? トヨタ「シエンタ“SUV”」がスゴイ! 5人乗り仕様もある「小型SUVミニバン」が台湾で人気すぎるワケとは
くるまのニュース
「トイレに行きたいのですが…駐めちゃダメ?」 高速にある「謎のバス停」 SNSでは「一般車が進入していた」の声も どんなルールなの?
「トイレに行きたいのですが…駐めちゃダメ?」 高速にある「謎のバス停」 SNSでは「一般車が進入していた」の声も どんなルールなの?
くるまのニュース
運賃交渉すれば“村八分”にされる? 荷主を過剰に気遣う中小運送の社長たち、本当に守るべきは誰なのか?
運賃交渉すれば“村八分”にされる? 荷主を過剰に気遣う中小運送の社長たち、本当に守るべきは誰なのか?
Merkmal
ホンダ「ADV160」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
ホンダ「ADV160」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
webオートバイ
いやこれは凄いわ……[EV]の歴史に残る一台が韓国から出ている件
いやこれは凄いわ……[EV]の歴史に残る一台が韓国から出ている件
ベストカーWeb
軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
ベストカーWeb
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
AUTOSPORT web
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
AUTOSPORT web
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
ベストカーWeb

みんなのコメント

9件
  • あまり遠出をしないコンパクトカーなら、家に充電できる環境があれば必要十分な航続距離ですね。
  • MX-30は最初見た時は変なデザインだなと思ったけど、こうしてミニと並べると意外とおしゃれに見えてきて、どちらを選ぶかは好みの問題な感じに思えてきた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

293.6340.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

163.0265.7万円

中古車を検索
MX-30の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

293.6340.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

163.0265.7万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村