運営元:外車王SOKEN
著者 :松村 透
家族をつなぐ2台のメルセデス・ベンツE220(W124)/CLA180(C117)オーナー、安田 勝利さんにインタビュー
憧れを現実に。それはゴールではなく、スタート。
手に入れたクルマをきっかけに、新たな人付き合いがはじまったり、本来なら知り合うことがなかったはずの人との出会いが待っています。
愛車はコミュニケーションツール。
そんなカーライフを存分に楽しんでいる犬田 行宣さん(45才)とその愛車を取材してきました。
── オーナー紹介&どんな仕事をされているのですか?
自動車関連の開発のエンジニアです。トランスミッションやパワートレイン関連が専門です。
実は、小学生の頃からF1レーサーかクルマの開発をする人になりたかったんです。当時の学校の先生と会う機会があり「夢をかなえたね」といっていただけたときは嬉しかったですね。
── 今後は電気自動車の時代ですか?
そう思いますね。性能の面では特に。内燃機関のクルマは乗馬のように、やがては趣味の世界のものになっていく気がしています。
一般向けのクルマは電気自動車へのシフトが加速していく気がしています。これまで以上に航続距離が長くなり、充電時間が短くて済むバッテリーを積んだ手頃な電気自動車が市販されるようになったらなおさらです。日産サクラにも試乗しましたが、航続距離は短いけれど、補助金を利用すれば価格もかなり現実的です。性能面でも他の軽自動車とは比較にならないなと思いました。
── クルマが好きになったきっかけを教えてください
おそらく2才か3才の頃、乗り物図鑑を読んでいて、マルーンカラーのフェアレディZ(S30型/S130型)が特に好きで・・・。それがきっかけだったと思います。
トミカやミニカーで遊ぶようになる頃には黄色いデ・トマソ・パンテーラが好きになっていてずっと遊んでいました。小さい頃から他の男の子たちが夢中になっていた鉄道にも戦隊モノにもそれほど興味はなく、私はクルマ一筋でしたね。
45才の私はスーパーカー世代の方たちよりも少し下なので、当時のブームは経験していません。その代わり、F1にはハマりましたね。
1989年~2005年はほぼ毎年のように日本GPを現地で観戦していましたし。初めて鈴鹿サーキットを訪れたのは中学校1年生のとき。ちょうどアイルトン・セナの人気がすごかった時代です。日本GPのチケットが取れない時代でした。セナも好きだったけれど、私はジャン・アレジのファンでした。当時、すごい新人ドライバーが現れたと話題になりましたよね。
日本GPのチケットは取れなかったけれど、とりあえず現地に行ってみようと、友だちと一緒に行きました。このときは鈴鹿サーキットの敷地外から観られる場所を見つけてこっそり観戦(笑)。セナとプロストが鈴鹿のシケインで接触した瞬間は観られない場所でしたが、現場の生の雰囲気を感じることができたのは、今となっては貴重な体験でした。
高校生になると、学校はさておき(苦笑)、F1好きの友人と寝袋持参で金曜日から鈴鹿サーキットへ。お金がないので、サーキットの敷地内で寝たんですが、寝袋だけじゃ寒いんですよ。7枚くらい着込んでも鈴鹿の秋の夜は寒かったです。それ以外のF1GPは、離れがある友人宅に押し掛け、朝までF1を観戦。帰宅して着替えて学校に行くような生活でした。
── そして、月日は流れて18才に・・・
小学生の頃から早く18才になりたいと思ってたんです。運転免許が取得できるから。念願の免許を取得できたので、これ以降は年を取らなくてもいいやって。もちろん現実にはそうはいきませんけれど(笑)。
大学生になったら、4万円で購入したトヨタ カリブに乗って友人たちと一緒に夜な夜な走ったり、週末はドライブに出掛けたり・・・。まさにクルマ漬けでしたね。
この頃、地元のクルマ仲間とイタリア旅行に行きました。アイルトン・セナが事故を起こしたイモラサーキットのタンブレロコーナーにも足を運びましたよ。フェラーリミュージアムや、フィオラーノサーキットにも行きました。このときはフェラーリ458がコースを走っていたことを覚えています。
フィオラーノの周辺の道路を走るトラックドライバーも、コースを走っているフェラーリを見掛けるとクルマを停めて眺めるんです。これがイタリア流なのかもしれませんね。
── 学生時代、アートスポーツでアルバイトをしていたそうですね
進学した大学は大阪だったのですが、スーパーカーがズラッと並んでいるお店を見つけたんです。それがアートスポーツでした。求人の募集はなかったのですが「クルマ好きで、洗車でも何でもしますから雇ってください!」とお願いしたら採用してもらえたんです。
テストドライブのときなど、助手席に乗せてもらったこともありました。特に印象に残っているのはマクラーレンF1ですね。エンジンの回転落ちが速く、クラッチを切った瞬間に「ストン」って落ちるんです。シフトチェンジするだけでも運転が難しそうなクルマでしたね。
── 開発以外にもクルマに関する仕事で興味があるとか
チャンスがあればモータージャーナリストになってみたいという思いがあります。もちろん、そんな簡単なものではないことは分かっていますが、いつか実現させたいですね。
── 犬田さんの愛車遍歴を教えてください
初の愛車は大学生になってから4万円で購入したトヨタ カリブ(MT)でした。当時、知り合いの中古車屋さんが「諸費用だけ払ってくれたらok」ということでこの金額でした。MT車だったのも購入の決め手になりましたね。
その後、高校生の頃からカタログを見るたびにいいなと思っていたトヨタ MR2 GT T-バールーフ(SW20型/MT)に乗り替えました。このときは大学生3年生だったで、”働いて返すから”と親ローンで購入。MR2は20代後半まで乗りました。オドメーターが14万キロに到達したあたりからオイル漏れなどに悩まされるようになり・・・、その後はスバル レガシィツーリングワゴン(BP型/MT)に乗り替えました。このクルマも約10万キロは乗りましたね。そして現在の996です。
── 現在の愛車に乗ろうと思ったきっかけを教えてください
ポルシェはモータージャーナリストの方々の評価がとても高く、なかでも特に911はべた褒めであることが多いですよね。その理由を自分でも所有してみて確かめてみたいと思ったんです。
手に入れるきっかけとなったのは、あるとき、サーキット走行で当時所有していたレガシィをぶつけてしまったんです。見積もってもらったらそれなりの修理費が掛かることが分かり、直すか、買い換えか・・・悩みました。調べていくうちに、頑張ればポルシェ911が手に入ることに気づいたんです。
子どもが小さいときならポルシェ911のリアシートにも乗せられる。手に入れてみて、もしダメだったらそのときになってから考えようと決心して今の愛車を手に入れました。妻も「予算内で収まれば(ポルシェでも)いいんじゃない?」と後押ししてくれたのも決め手になりましたね。
── 探すときの条件はありましたか?
まずMTであること。これは必須条件でした。あとは価格がそれほど高くないこと、走行距離が5万キロ以下で、ボディーカラーは特殊な色でなければok!という条件でヒットしたのがこのクルマでした。
自宅からそれほど離れていない場所で売り物があり、30分くらい現車をチェックして決めてしまいました。996も今ほど高騰していなくて、お手頃価格で買えましたね。以来、距離は手に入れてから9万キロ走りました。手に入れて9年目になりました。4万キロで購入して、現在は13万4千キロです。大体年1万キロペースです。
── MT車にこだわりがあるのですね!
MT車は「操っている感覚」が味わえますよね。中古車を検索するときも、まず「MT」にチェックを入れてから調べますから(笑)。実は去年、991型の911の売り物の話をいただいたのですが、PDKだったのでやめました。
── 911を手に入れて良かった点、苦労している点は?
●良かった点
このクルマを手に入れてから、人と人とのつながりの幅がものすごく広がりました。だから、手放すことができないんです(笑)。
それと、ランボルギーニやマクラーレンなどの試乗イベントにエントリーできることも良かった点のひとつです。「ポルシェのオーナーであること」が参加条件になっていることが多く、庶民でもこの種のクルマに試乗できるのはポルシェのおかげですよね。
●苦労している点
燃費が悪いことくらいです。手に入れるまでは維持費が高いと思い込んでいました。しかし、1年経っても故障しないし、月に1万円くらい余分に払えるのならポルシェに乗れるということを伝えたくてブログをはじめたんです。
実際に起こったトラブルといえば、オルタネーターの交換(約20万円)と、エンジンマウント&水回りのホース類の交換(約40万円)くらいです。あとは、鍵のセンサーの故障が数万円・・・といったレベルで、大きな出費はありません。
── お子さんの反応はどうですか?
娘は特に何も(笑)。15才になる息子(鉄道好き)は、助手席で他のクルマと911を比較していますね。刷り込みもあると思いますが「ブレーキはやっぱりポルシェの方がいいね」なんて発言することもあります。
── 若い世代でポルシェが欲しい人へのアドバイスがありましたら・・・
私が996を購入した9年前は、まだ空冷時代の911も今のような相場でなかったんです。ただ、オイルの管理や暖機運転など、通勤で使うには気を遣う点もありそうだし・・・ということで水冷の911を選びました。
普段使いができるという点において、996や997あたりのモデルをオススメします。きちんと整備されていればエアコンも効きますしね。
仲間とツーリングに行くと、ランボルギーニ ディアブロやフェラーリ テスタロッサのオーナーさんはエアコンより窓を開けてるほうが涼しいっていいます。ロータスエスプリのオーナーさん曰く「夏場は5kgは痩せる」そうです。エアコンをオンにしても涼しい風が出てこない(苦笑)。それでも乗り続けられるのは愛だなってつくづく思います。愛があるオーナーさんとクルマ談義をしていると話が合うし、何より楽しいですよね。
── スーパーカーライフ、どういった方々が楽しめている印象ですか?
ニューモデルが出るたびに乗り替えている方は大変そうだなって思います。不思議と「自分はこのクルマ好きです!」という方のほうが長続きしていますよね。
あとは特殊なクルマや、珍しいクルマに乗ってる方も長く所有している印象があります。たとえばBMWi8のコミュニティのメンバーさんたちは「自分たちが手放したらコミュニティが成り立たなくなるから」という理由で乗りつづけていたり。
クラブやイベントの主催者の方たちも、皆さんを楽しませるために、本当に善意だけで自分を犠牲にしてでも頑張ってくださっています。私もできる限りお手伝いさせていただいています。
── 予算抜きで興味があるクルマBEST3を教えてください
3位:ランボルギーニ カウンタック LP800
キング・オブ・スーパーカーであるカウンタックの最新モデルということで!
2位:ブガッティ シロン スーパースポーツ
490km/h出る世界最速のマシン。乗れるものなら乗ってみたいですね
1位:アストンマーティンDBS カジノ・ロワイヤル
アストンマーティンが大好きで。そのなかでも映画「007カジノ・ロワイヤル」で使用されたDBSが特に好きですね。
── 犬田さんにとってのアガリの1台とは?
アストンマーティンDBS カジノ・ロワイヤルです。内外装、排気音など、すべてが最高です。いつか必ず、アストンマーティンを手に入れたいです!
── 犬田さんにとって、ポルシェ911はどんな存在ですか?
一緒に楽しい時間を過ごす恋人みたいな存在ですね。別れられないです。
── アストンマーティンで好条件のクルマが見つかったら・・・?
うーん・・・(かなり悩んで)そのときは乗り替えるかもしれません。できれば両方所有したいですけれど・・・。
── 取材後記
取材の合間に筆者を助手席に乗せ、お気に入りのコースをドライブしてくださった犬田さん。MTを駆使し、シフトショックが一切なく、スムーズかつ鮮やかにコーナーを掛け抜けていく動作はまさに「911使い」そのもの。犬田さんの手に掛かれば、996世代のポルシェがまるでライトウェイトスポーツのように、ヒラヒラとコーナリングしていくのです。
小さい頃から現在にいたるまで。そしておそらくこれから先もずっと。自他ともに認めるクルマ好きな犬田さん、プライベートでの試乗やスーパーカー体験などが開発エンジニアの仕事に活かされることも多いそうです。公私に渡ってクルマの世界にどっぷりなのはとても幸せなことですね。
── オーナープロフィール
お名前:犬田 行宣さん
ご年齢:45才
ご職業:会社員
現在の愛車(年式およびグレード):2002年式ポルシェ911カレラ(996型)
ブログ:なんちゃってモータージャーナリスト!!のブログ
https://ameblo.jp/inuta027/
[ライター・撮影/松村透]
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みんなのコメント
思い切って911を買ってみる。
996ガー、とか言ってるヤツには出来んこと。996ガーは一生911は買えませんから偉業です。
911、良いですね。