近年、BMWグループ・クラシックのスポンサードによってさらに認知を深めるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ。コロナの影響で昨年は中止となったものの、今年は日程を変更して開催された。ブランクが長引いたことに参加者も悲喜こもごもではあるが、とんでもないサプライズも登場。世界最古の自動車コンクールデレガンスの様子をリポートした。
近年、BMWグループ・クラシックのスポンサードによってさらに認知を深めるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ。コロナの影響で昨年は中止となったものの、今年は日程を変更して開催された。ブランクが長引いたことに参加者も悲喜こもごもではあるが、とんでもないサプライズも登場。世界最古の自動車コンクールデレガンスの様子をリポートした。
愛車の履歴書──Vol3.シンガーソングライター・宇徳敬子さん(前編)
最古のコンクールを支えるBMWグループ・クラシック
1929年に起源を持つ世界最古の自動車コンクールデレガンス、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ(以下ヴィラデステ)も昨年はコロナ禍によって中止となり、今年も本来の5月ではなく10月の開催となった。この歴史的イベントは近年BMWグループ・クラシックのスポンサードによってさらに認知を深め、マニアのみならず多くの一般の自動車ファンにとっても開催が待ち望まれる年中行事となっている。一般公開される日曜日のヴィラエルバ・イベントには世界中から多くの人が訪れ、コモ湖畔の1本しかないメインストリートには長いクルマの列が見られ、小さな子供達を含む幅広い客層が会場に吸い込まれていくのが近年の光景だ。一見、このヴィラデステとBMWのヘリテージは直結しないように思うかもしれないが、実はBMWは、スポーツカーメーカーとしてのDNAを上手くフルラインナップ戦略に活かしている。そのルーツを一般にアピールする手段としてこのヴィラデステを至極有効活用しているように筆者は感じる。いずれにしても彼らの継続的な取り組みには大きな拍手を送りたい。
しかし、今年は感染状況がかなり改善されたとはいえ、まだ国々においてバラツキがあるヨーロッパでは大規模イベントの開催には慎重にならざるを得ない。今年のヴィラデステは例年の土曜日が審査を中心としたクローズド・イベント、そして日曜がお隣のヴィラ・エルバへと会場を移し、一般公開するというスタイルを変更し、すべてがクローズドとされヴィラデステにての開催となった。残念ながら一般公開は見送られた訳だ。今回はコンクールデレガンスへの参加者およびその関係者、そして限られたメディアとスペシャルゲストのみが入場を許され、かつ入場時にはイタリアで言うところのグリーンパスの提示が義務付けられた。
少しハナシは逸れるが、このイベントの時点で、イタリアにおいては日本を凌ぐワクチン接種率を記録しているが、ワクチン接種を受けたくない、もしくは受けることが出来ないという層も少なからず存在する。そういった人々は陰性検査を行っている検査所や薬局へ行くとすぐに抗原テストを受けることが出来、その場でデジタルの陰性証明QRコードが取得できる。ちなみに日本の公式なワクチン接種証明書はイタリアにおいても有効であることが明確になっているので、私達日本人はこれを持参していれば問題はない。但し、A4サイズの”紙”であるから使い勝手は甚だ悪いが。
という訳で今まで土曜日だけで行われていたスケジュールが土日の2日間に分散して行われたとも言えるから、スケジュールはかなりゆったりとしたものとなった。一方で、車両を持ち込む参加者達はこのコロナ禍でたいへんな思いをしたのも事実だ。昨年のイベントが中止となったことで、その時点でノミネートされた車両が今年のエディションへと引き継がれたが、渡航制限などによって参加が不可能な車両もあったし、新たにノミネートされた車両もあった。そんな訳で今年配布されたエントリーリストは、そのゴタゴタ模様をよく表わしたものとなっていた。直前の変更の為に、やむなく車名が横棒で消されたりしていたのだった。
ビスポーク・ロールス・ロイスを発表する価値あるイベント
幸いなことに晴天の下、完璧な環境において土曜日のイベントはスタートした。8つのカテゴリーに分けられたクラシックカー、そして最新のコンセプトモデル&プロトタイプ部門で構成される車両ディスプレイの中、グループとなった審査員が各車両のジャッジを行う。このヴィラデステは参加車両も50台あまりと限られているし、それぞれの個体がFIVAの規定により事前に厳密にチェックされており、そのヒストリーの正統性やオリジナリティにおいては充分な指標が事前に出来上がっている。それをベースにカテゴリーのコンセプトにどれだけ適合しているかを審査員が見定めるというきわめてシステマティックなシステムとなっている。日本からカーデザイナーの中村史朗がジャッジに加わっており、審査員長は例年のようにイタリアカーデザイン界の重鎮であるロレンツォ・ラマチョッティが担当する(敬称略。以下同様)。
ゲートオープンとなってまもなくすると、皆がヴィラデステにおける最高の景観ポイントである中央ガーデンへと向かっている。これから先だってその存在が発表されたロールス・ロイスのビスポークモデルであるボートテイルの実車が世界初公開されるのだ。ここで2日間にわたって公開された後はオーナーの手に渡るというから、これが見納め?となるかもしれない。そういえば2017年のヴィラデステを思い出す。まさにこの場所で、ロールス・ロイスとして久方ぶりのビスポークモデルである、スウェプテイルが公開されたのだ。今回のボートテイルはそれに継ぐモデルで3台が製作されるという。トルステン・ミュラー・オトヴェスCEOによる紹介に続いて、コーチビルド部門のチーフデザイナーのアレックス・イネスがディテイルを紹介してくれる。フロントは威厳あるロールス・ロイスのパンテオン・グリルがそびえるが、そのボディシェイプはきわめて繊細かつエレガントだ。とても微妙なグラデーションペイントが施されたリアのエレガントさは、まさにここ、ヴィラデステの世界観そのものではないだろうか。そう、BMWにとっては、このヴィラデステでビスポーク・ロールスロイスを発表するだけでこのイベントをスポンサードする意義があるのではないだろうか。かつて、早朝に湖畔を散歩していた時、コモ湖を背景に颯爽と走り去ったスウェプテイルの姿は今でも目に焼き付いている。
ブランクがあったことで、とんでもないサプライズが登場
ヴィラデステ会場はさながらクラシックカー愛好家の同窓会のようなものだ。2年半ぶりに顔を合わせる仲間たちとの会話は弾むが、以前のようなハグや固い握手も少々遠慮するようになっているのが現在のイタリアだ。こういった歴史的コンクールデレガンスにおいては、クルマそのものだけでなく、それをどんな人物が持ち込んだのかというのも大きな話題となる。今回もいわゆる名物出展者達の姿を見ることができた。個性的な個体を集めたミュージアムを持つコラード・ロプレストはイソッタ・フラスキーニ8Cモンテローザをファミリーと共に持ち込み楽しんでいる。彼の愛犬達ももちろん一緒だ。いつもレアなモデルを持ち込むフィリップ・サロフィムは世界に1台しか存在しないイズデラ・コメンダトーレ 112iを完璧に仕上げて参加。ストラトス・ゼロも彼のコレクションの1台と言えばその拘りが解るであろう。そしてエンジン始動テストで黒山のギャラリーを集めているのが、ハウメット TXだ。このル・マン出場歴を持つタービンエンジンのスポーツカーを完璧なコンディションに仕上げて出展したのは、ヴィラデステではおなじみのアンドレアス・モーリンガー。しかしご本人は出席せず、彼の信頼するメカニックの”エルヴィス”がコツの必要なエンジン始動からパレードランまでを担当する。このヘリコプター用に製造されたタービンエンジンのノイズも印象的であった。日本人オーナー2名が出展者となるなど、日本勢の影響力もかなりのものとなっているのはうれしい限りだ。京都においてコンクールデレガンスを開催した実績を持つ木村英智。車両はアストンマーティン V8ヴォランテ ザガート。そしてランボルギーニ カウンタック・ウルフで出場の福田愼次郎だ。
コロナ禍でブランクが空いてしまったことで参加者も悲喜こもごもである。昨年に設定されたピニンファリーナ創立90周年の特別カテゴリーは1年の延期で中途半端なものになってしまったし、前述のように苦労してノミネートされた個体にも関わらず、今年は会場へと運搬することが叶わなかったオーナーもいる。一方、すべてが上手く運び、みごとに大きな話題をさらったのが2台のカウンタックだ。昨年にノミネートが決まっていたウルフカウンタックはカウンタック生誕50周年の本年にずれ込んだことでさらに会場では注目を集めた。きれいに復元されたウルフカウンタックの最終進化版3号車は大きなスポットを浴び、開発した張本人であるウォルター・ウルフと、当時、テストドライバーだったヴァレンティノ・バルボーニの登場には大きな歓声が起こった。
さらにもう1台、プロトタイプ部門には幻のカウンタックLP500の復刻モデルというとんでもないサプライズも登場した。ご存知のようにマルチェッロ・ガンディーニとチーフエンジニアのパオロ・スタンツァーニが50年前に作った第1号プロトタイプは製品化に向けてのクラッシュテストの犠牲となり、現存していない。それをこのヴィラデステでも有名なコレクター、アルベルト・スピースのオーダーによりランボルギーニ ポロストリコが復刻したのだ。これもヴィラデステが本来の5月から10月へ開催が延期されたことで、サプライズとしての登場が叶った訳だ。会場ではカウンタック50周年の起源となる初号プロトタイプ、そしてLP400Sへのそのノウハウが活かされたLP400Sプロトタイプ・ウルフ・スペシャルの2台が並び、愛好家達の溜飲を下げたのだ。
気になるコンクールの結果は?
さて、コンクールデレガンスの結果はどうなったのであろうか。一般投票で決定されるコッパ・ドーロ賞を受賞したのはユニークなスタイリングと繊細なレストレーションの1930年ランチアディラムダ セリエI。ベストオブザショーにはピュアなスタイリングと興味深いレースヒストリーを持つ1956年 フェラーリ250GT TDF クーペ Pininfarinaが選ばれた。そして、最新モデルのプロトタイプ・コンセプトカー部門ではアウトモビッリ・ピニンファリーナのバティスタが部門賞を受賞。日本から出展されたウルフカウンタックも見事に部門賞を獲得した。最終日の夜はベストオブザショー受賞セレモニーに続く恒例の花火でイベントの幕は閉じられ、来年は通常通り5月の開催が案内された。来年こそはいつものスタイルでヴィラデステが大賑わいとなることを祈るばかりだ。
クラスA:20世紀のスタイルクラス優勝
1934年ランチア・アストラ・トルピードGS オープン・ツアラー Viotti
次点
1931年 アルファロメオ6C 1750 GTC スパイダー Zagato
クラス B:スペース、ペース、エレガンスの追求クラス優勝
1938年 ドラージュ D8-120 S カブリオレ De Villars
次点
1930年ランチアディラムダ セリエI Drop Head Coupé Carlton Carriage
CLASS C:イギリスとドイツ、高級車の覇権争いクラス優勝
1955年 メルセデス・ベンツ300SLアロイ クーペ・ガルウイング
次点
1965年 アストンマーチンDB5 コンバーチブル Touring Superleggera
クラスD:イタリアのグラントゥーリズモクラス優勝
1953年 フィアット 8V クーペ Vignale
次点
1950年 アルファロメオ 6C 2500 Supergioiello クーペ Ghia
クラスE:耐久レース界の50年クラス優勝
1956年 フェラーリ250GT TDF クーペ Pininfarina
次点
1949年 OSCA MT4 Siluro Torpedo
クラスF:ピニンファリーナの90周年を記念してクラス優勝
1960年 フェラーリ 250 GT カリフォルニア SWB スパイダー
次点
1967年 フェラーリ275GTB/4 ベルリネッタ
クラスG:スーパーカーの誕生クラス優勝
1978年 ランボルギーニ カウンタック LP 400 S プロトタイプ ウォルター・ウルフ・スペシャル クーペ Bertone
次点
1989年 フェラーリF40 クーペ Pininfarina
クラスH: 次世代1990年代のハイパーカークラス優勝
1993年 イズデラ・コメンダトーレ 112i クーペ
次点
1995年 マクラーレンF1 クーペ
文と写真・越湖信一、EKKO PROJECT 編集・iconic
取材協力:BMW Group Classic, Rolls-Royce Motor Car
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