試乗してわかった日産のBEV第2弾「アリア」の魅力
世界に先駆けて2010年に量産型のBEV(電気自動車)「リーフ」を発売し、BEV市場をけん引してきた日産。2020年7月には、待望の第2弾となるクロスオーバーSUVの「アリア」を発表した。
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実は、同じころに筆者が行なった「ニッサン パビリオン」の取材で実車の「アリア」と対面し、その先進性や高いクオリティに大いに興奮したのを憶えている。
そして、2021年6月には、先行予約限定車「B6 limited(リミテッド)」が発表され、同日に予約開始したところ約6800台の注文があったという。ところが、コロナ禍や半導体不足などが影響したのか納車予定がかなりずれ込み、第1号車が納車されたのは2022年3月9日になってしまったのだとか。
最初の発表から待つこと約1年10か月、カタログモデルの「B6」が今年5月12日に正式に発売され、ようやく試乗する機会を得ることができたので、その完成度をチェックしてみよう。
目的で選べる充実のラインナップ
さて、今回試乗が叶ったのが「アリア」の中でも最もベーシックな「B6」と呼ばれるバッテリー容量が66kWhで駆動方式が2WDのモデル。実は、「アリア」のラインナップには、バッテリー容量の違いによりB6(66kWh)とB9(91kWh)があり、さらに駆動方式には2WDと4WD(e-4ORCE)がそれぞれ用意されているため、計4つのグレードが存在する。
そして試乗車のスペックは、最高出力160kW (218PS)、最大トルク300Nm、0-100Km加速7.5秒、一充電走行距離は470km(WLTCモード、以下同)となり、車両本体価格は539万円。ただし、そこから国の補助金85万円を引き、さらに地方自治体の補助金(東京都の場合は45万円)を受け取ると400万円台前半と現実味のある魅力的な価格となる。
また、一充電走行距離については、リーフe+が450kmとなっていることを考えると、ベースモデルでも不足を感じることはあまりないだろう。ただ、もしパワーも含めて物足りなさを感じるのであれば、さらに上のグレードを選ぶことができるという充実のラインナップになっている。
ちなみに、その上の3つのグレードのスペックと価格は、以下の通りとなり、納車は2022年夏以降となっている。
■「B6 e-4ORCE limited」(4WD)価格720万600円
最高出力250kW、最大トルク560Nm、0-100Km加速5.4秒、一充電走行距離430km
■「B9 limited」(2WD)価格740万800円
最高出力178kW、最大トルク300Nm、0-100Km加速7.6秒、一充電走行距離610km
■「B9 e-4ORCE limited」(4WD)価格790万200円
最高出力290kW、最大トルク600Nm、0-100Km加速5.1秒、一充電走行距離580km
運転席側のフロントフェンダーにある普通充電ポート
助手席側のフロントフェンダーにある急速充電ポート
充電時間は充電量80%まで50kWの急速充電で約65分
なお、今回の試乗車は、プロパイロット2.0をはじめパノラミックガラスルーフ、ヘッドアップディスプレイ、BOSEプレミアムサウンドシステム&10スピーカーなど79万5300円分のメーカーオプションと、ドライブレコーダーやフロアカーペットなど約16万円のディラーオプションを装備した豪華仕様であった。
洗練されたスタイリッシュなエクステリア
発表された時期が早かったこともあり、テレビやネットのCMなどですでに見慣れた感のある「アリア」のエクステリアだが、実車を前にしても“見飽きた”印象が一切しないところはさすがである。これは、先進的で洗練されたスタイリッシュなエクステリアデザインによるもので、ドイツのレッド・ドット・デザイン賞を受賞するなど世界でも評価されている。
そのボディサイズは、全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mmで、ホイールベース2775mmとなっている。これを同じミドルサイズのCセグメントに属するエクストレイルの全長4690mm、全幅1820mm、全高1740mm、ホイールベース2705mmと比較しても全長が95mmも短いながら、ホイールベースや室内長は+70mmとなっている。やはりエンジンをフロントに積む必要のない、EV専用プラットフォームならではといっていいだろう。
実際、このボディサイズのおかげで、都心の住宅街であっても取り回しに苦労するようなことはなかった。ただ個人的に理想をいえば、全幅を1800~1820mmぐらいに抑えてもらえれば完璧だと思った。というのも例えば、公共の駐車場などの枠は、幅が2500mm~2800mmで設定されているところが多く、乗降には片側600mm(助手席側含め1200mm)以上のスペースが必要とされているため、全幅1850mmだとかなりぎりぎりとなってしまうのだ。
プロパイロット2.0の証となるダブルシャークフィンアンテナ
ただ、そんなことは承知といわんばかりに「アリア」には、プロパイロット2.0とセットのオプションとなるリモートパーキングなるものがある。これは、リモコンキーのボタンで車外からクルマを前進させたり後退させることができる機能で、駐車場などで隣にクルマを寄せて停められてしまい乗降しづらい場合などに便利だ。
しかも、この操作をスマホのアプリで行なう他メーカーのクルマはあるのだが、日産の場合、リモコンキーのみでできるというのが画期的。もちろん、クルマを動かす際は人や障害物を検知してくれるので安心だ。
装着されているタイヤは、前後とも235/55R19サイズの特殊吸音スポンジを採用したブリヂストンのアレンザ001で、空力が考慮されたデザインのホイールと併せて静粛性も引き上げられている。なおタイヤは、他にもダンロップSP SPORT MAXX 050が用意されている。
ラウンジのような上質で広々としたインテリア
「アリア」のインテリアについては、組子の文様など和テイストを随所に取り入れながらデザインされており、まるでラウンジのような上質で快適な空間となっている。
さらに、ダッシュボードには従来のような物理的なスイッチが無く、クルマの電源を入れると浮かび上がるアイコンが存在。このスイッチは、振動で操作感がわかるハプティクススイッチになっており、未来的というだけでなく実用性も兼ね備えている。
フラットな木目調のパネル面にハプティクススイッチを採用
センターコンソールにはシフトレバー、ドライブモード、e-Pedalのスイッチなどを配置
センターコンソール内にはQi規格のワイヤレス充電器を搭載
前席の足下にはUSB電源ソケットが2口(Type-A、Type-C)ある
また、センターコンソールは、電動で前後に150mmスライドできるようになっているのだが、これはドライブポジションの細やかな設定に寄与するだけでなく、前席もしくは後席を左右でしっかり仕切りたいというようなレイアウト変更(ほとんど気分的なものだが)ができて便利だ。
12.3インチのアドバンスドドライブアシストディスプレイ
12.3インチのナビゲーションシステムのディスプレイ
コネクテッドサービスでスマホと連携すれば便利な機能がいっぱい
デジタルルームミラーなので夜間や悪天候でも後が見やすい
オーバーヘッドコンソール(サングラスホルダー)
車内が明るく開放的になるパノラミックガラスルーフ
ガラスルーフを開けることも可能で、虫除けも付属
なお、メーターまわりには、12.3インチワイドディスプレイが2つ備わっており、見やすさだけでなくスワイプなどの操作感もスムーズ。また、「ハローニッサン」などと音声で操作が可能な対話型のインターフェースも反応がよく使いやすい。さらに、アマゾンのAlexaとも連携が可能なので、車内のエアコンの調整などだけでなく、自宅の家電の操作までできてしまうのだ。
広々とした足下のフロアカーペットにも遮音対策が施されている
スペースに余裕があるためグローブボックスも2つある
後席の足下も広くて余裕で足が組めるほど。またシートのバックレストは1段のみリクライニングが可能
後席のヒータースイッチとUSB電源ソケット2口(Type-A、Type-C)
そして特筆すべきは、Cセグメントという車格からは想像できないくらい広い室内。前出のボディサイズのところでも書いたように、EV専用プラットフォームのおかげでホイールベースを長くすることができたため、全長が95mm長いエクストレイルと比較しても室内長が70mm広くなっているのだ。
さらに、本来は室内にあるはずの空調ユニットをボンネット内に配置できたことで、足下もフラットで広々としている。この広々とした室内空間は、一度シートに座ってみれば、誰でも実感できるはず。
ちなみに筆者は、この試乗をした翌々日に、たまたま別メーカーのひとクラス大きなDセグメントに属する電気のSUVに乗る機会があったのだが、室内の広さに関しては「アリア」のほうが広く感じられるほどで、改めて感心させられた。
荷室最大幅は1387mm、後席使用時の荷室長は973mm、後席を倒したときは1901mm、荷室高は682mm
2WD車は荷室の床下にも容量66Lの収納スペースを用意
外した底板は間仕切りとしても利用可能
二重の床下にはパンク修理キットなどを収納
また、ラゲッジルームについてもバッテリーの高さを抑えた新開発のEV専用プラットフオームにより、9.5インチのゴルフバッグを3セット積めるほどの余裕のスペースを確保。もちろん後席は、6:4の可倒式なので長尺物も載せられてフラットにすることも可能。さらにバックドアは、両手がふさがっていても足のキック操作で自動開閉ができるので便利だ。
スムーズで上質な走り
さて、いよいよその走りについてだが、アクセルを踏むとリニアに加速していくのだが、そこにぎこちなさや唐突さといったものが一切なく、ごく自然にスピードが上がっていく。かといって、決してレスポンスが鈍重でストレスを感じるようなことはない。
もちろん、そのスペック(最高出力218PS、最大トルク300Nm、0-100Km加速7.5秒)からわかるとおり、それほど強烈な動力性能を持ち合わせているわけではないが、1.9tを超えるボディを実にスムーズでありながらもキビキビと走らせるよう手なづけられている。これには、長年にわたりBEV市場をけん引してきた日産の技術力によるものだと感心させられた。
また「アリア」は、EV専用プラットフォームの恩恵でサイドメンバーのスパンを狭められたこともあり、ホイールベースが長いにも関わらず最小回転半径が5.4mと同じ19インチタイヤを装着したエクストレイルの5.6mよりも小さい。このおかげもあり、実際、狭い都心の道路や駐車場などで取り回しのよさを実感することができた。
なお、ドライブモードは、センターコンソールに配置されたスイッチで「SPORT」、「STANDARD」、「ECO」の3モードを選択することが可能。スポーツタイプのクルマではないため、モードを切り替えても加速力などに劇的な変化があるわけではないが、走るシチュエーションや気分で選ぶといいだろう。
さらに、日産でおなじみのアクセルペダルだけで走りをコントロールできるe-Pedalも備わっている。ただ「アリア」の場合、実はリーフなどのように停止まで行なえる「e-Pedal」ではなく、発進、加速、減速までの「e-Pedal Step」となり完全停止までは行なえないので注意が必要だ。(※アクセルオフの減速後にクリープ走行が発生する為、停車時には必ずブレーキを踏む必要がある)
ただ、このe-Pedal Stepも慣れてしまうと、混雑した道路やスポーツ走行の際にとても便利で気持ちいいので、ぜひ試して欲しい。もっとも理想をいってしまえば、回生の強さを任意で細かく調整できると、さらによかったかも知れない。
そして走行中にいたく感激したのが、音の静かさだ。もちろんエンジン音がしないため、通常のBEVならどうしても聞こえてきそうな風切り音やロードノイズ、モーターの音などが、かなりのレベルで抑えられている。
聞けば、前出の遮音対策されたタイヤやカーペットのほか、ガラス、さらにはモーター(巻線界磁式)の音までも抑制したというのだから驚く。これも「アリア」に上質さが感じられるゆえんのひとつなのではないだろうか。
試乗の最後には、スカイラインに搭載して話題となったプロパイロット2.0を高速道路で試してみた。これは、従来のGPSのみのプロパイロットの精度が10~15mに対し、さらに準天頂衛星システム「みちびき」の測位情報も受信することで精度を50cmほどにまで正確性を進化させたというもの。
実際に使ってみると、最初こそステアリングから手を離すのにドキドキしたが、カーブなどでも減速をしてくれたりとオンザレール感覚で安心していられる上、車線変更をともなう追い越しなどもこなしてくれるので頼もしかった。
ちなみに、高速走行をしてみてわかったのだが、低速ではあまり気にならなかった乗り心地に関する腰砕け感というか突き上げ感のようなものを感じた。
これは、まだあたりの付いていないサスペンションのせいなのか、吸音スポンジのタイヤもしくは2WDという駆動方式が原因なのか定かではないが、少し気になったポイント。たぶん、この後登場してくる本命である4WDモデルのe-4ORCEとともに、改善されるのではないかと思っている。
さて今年2022年は、トヨタがスバルと共同開発した「bZ4X」が発売され、もうすぐ日産からは「サクラ」、三菱は「eKクロス EV」という軽のBEVも登場予定となっており、まさに日本のBEV市場のエポックメイキングとなる年。
そんな中「アリア」は、そのデザインや走り、機能など、すべてにおいてシンプルで上質さのわかる大人たちを魅了するモデルとして、その役割を果たしていくのではないだろうか。
■関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/ariya.html
取材・文・撮影/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
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