この記事をまとめると
■ポルシェ550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークス・クーペがオークションに登場
ポルシェ初の4WDは959じゃない! 高額すぎて71台しか作られなかった「ヤークトワーゲン」とは?
■落札予想価格は550万~750万ドル(約7億8650万~10億7250万円)
■ポルシェミュージアムでも見ることのできない貴重な1台
わずか4台が制作されたといわれる550のクーペ
まさかここまでの伝説的なヒストリーを持つ、歴史的にも重要なミュージアムグレードのモデルがオークションに姿を現すとは……。
RMサザビーズのモントレーオークションのカタログを見ながら、あるページで思わずページをめくる手が止まってしまった。それは出品車がポルシェワークスのモータースポーツ活動に、非常に重要な役割を果たしたモデルであり、通常ならばポルシェミュージアムに所蔵されるべき価値を持つものであったから。550万ドルから750万ドル(約7億8650万円から10億7250万円)という予想落札価格も、あながち客寄せのための根拠のない数字とはいえないのだ。
そのモデルこそが、ここで紹介する1956年式のポルシェ550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークス・クーペだ。
1950年代を迎えた頃、ポルシェは自らスポーツ・レーシングカーを設計することを決断する。それこそが550スパイダーであり、1953年のル・マン24時間レースでは、空力を意識してスパイダーボディにハードトップを組み合わせた仕様で出場。クラス優勝、総合でも15位という戦績を残している。
そして、同年のパリサロンで550スパイダーは正式に発表され、約100台がデリバリーされた。このなかには4台のみとされるアメリカ向け仕様の1台を1955年に手にしたジェームス・ディーンも含まれていたが、彼はわずか1か月ほどでその550スパイダーによって事故死したことは有名な話だ。
一方、モータースポーツシーンでの550スパイダーは、その間にも変わらず圧倒的な強さを見せつけていた。1953年には135馬力の最高出力を発揮する、4カムシャフトの新型1.5リッターエンジンが搭載され、その戦闘力をさらに向上。1954年のミレミリア、同年のル・マン24時間ではいずれもクラス優勝を勝ち取っている。
そして1956年シーズンを前に製作されたのが、前でその名前をあげた550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークス・クーペ。それは4台が製作されたという550Aプロトタイプの最後の1台(シャシーナンバー550A-0104)をベースとしたもので、姉妹車ともいえる550A-0103とともに数えきれないほどの技術的な改良が施された。
そのスタイリングは、スパイダーから流麗なファストバッククーペに進化し、スペースフレームや4輪独立型のサスペンションも採用。結果、550A-0104はクラス優勝を果たすに至ったのである。
その後このモデルは、アメリカのカスタマーを転々とするなかで、スパイダーボディに戻されたりした時代もあったが、現在では1956年のル・マン24時間レースのときのスタイル、そしてコンディションに完全に修復されている。
550スパイダーのなかにあった美しいファストバッククーペ。ミュージアムでも見ることのできないこの1台の価値は相当に大きい。
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