メルセデスベンツが日本での販売好調が続いていて強さを見せている。メルセデスベンツと言えば高級車メーカーとしてのイメージが強く、決して安いクルマではないが、なぜここまで強さを発揮しているのか。
今や日本メーカーにも驚異の存在となっているメルセデスベンツの強さについて考察していく。
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日本で5年連続輸入車ナンバーワン
メルセデスベンツの日本での販売が好調をキープしている。JAIA(日本自動車輸入組合)発表のデータによれば、2019年度(2019年4月~2020年3月)の乗用車の販売台数は6万4539台となっていて5期連続で輸入車ベストセラーに君臨している。
特筆すべきは輸入車におけるシェアで、22.2%となり、これは2019年度に販売された輸入乗用車の5台に1台以上はメルセデスベンツということになる。
2019年度にメルセデスベンツで最も販売台数が多かったのがCクラス。2018年にビッグマイチェンを受けて大きくリフレッシュされ魅力アップ
2位VWが4万5537台(シェア:15.66%)、3位BMWが4万4231台(同:15.21台)、4位アウディが2万5191台(同:8.66%)であることを考えると2位VW以下に大きな差をつけていることがわかる。
モデル別にみると1位MINI、2位ゴルフ、3位Cクラスと続いているが、MINIはすべてのモデルの合計なので、実質的1位はゴルフということになる。
※JAIA発表データ
メルセデスベンツが強いのは、安くはないCクラスが堂々の3位に入っていること。また昔ながらのEクラス、Sクラスもライバルにことごとく勝っているのも強みだ。
実はメルセデスベンツが好調なのは日本だけでなく、世界的な傾向で、2019年の世界販売台数は9年連続で年間販売の記録更新となる245万6343台で、そのうちメルセデスベンツブランドが233万9562台を販売している。
驚異的な車種ラインナップ数
メルセデスベンツで驚かされるのはそのラインナップ数の多さで、日本で販売されているモデルは33車種となっている。
日本では日産、ホンダを凌駕し、トヨタの42車種に迫る勢いだ。トップのトヨタもOEM、兄弟車を含めての車種数だから、輸入車のメルセデスベンツのラインナップが充実しているかは明らかだ。
SUVのラインナップも充実しているなか、ゲレンデの愛称で親しまれた旧型をオマージュしたデザインのGクラスも安定して売れている
さらにメルセデスベンツはハイパフォーマンスモデルのAMGを58モデルに設定しているのも凄いことだ。トヨタはGRを11モデルに設定しているから合計すると、メルセデスベンツがトヨタをも凌駕することになる。
そのトヨタも2020年5月以降に車種整理をすることを明言している。それに対しメルセデスがまだまだランナップを増強する可能性は高い。
昔はセダン、ワゴンに設定されていたAMGモデルだが、現在はフルラインナップ状態になっているほど設定車種を拡大。写真はAMG A35 4MATIC
そして特筆すべきは、日本導入のタイミングだ。かつては1年遅れなどが当たり前だったが、現在はどんどん短くなり、そのタイムラグがなくなってきている。これにより、日本のユーザーがニューカーをホットなうちに手にできるようになったのは大きいと思う。
日本メーカーが海外で先行発売し、そのモデルの日本導入が数年遅れるケースが出ているのとは対照的だ。これはメルセデスベンツ日本の頑張りもあるが、日本マーケットが重要視されていることを示している。
GLAとほぼ同じサイズながら3列シート7人乗りモデルを選ぶことができるGLBは2020年7~8月に日本で販売開始される。またまたラインナップを増強
ユーザーのすそ野を広げることに成功
メルセデスベンツと言えば、世界の高級車メーカーとして認知されている。日本でメルセデスが昔から憧れの対象となってきたのも高級車メーカーとしてのブランドイメージを確立しているからだ。
そのメルセデスベンツにとって大きな転機となったモデルとして1982年に本国デビュー(日本導入は1985年)したW201を挙げないわけにはいかない。W201は190シリーズのことで、日本では『小ベンツ』などとも呼ばれたモデルだ。
日本では1985年から販売を開始した190E。ベンツ初の小型セダンは多くのファンを生んだ。1993年にCクラスとバトンタッチ
日本での販売も好調で、高額の高級車しかなかったメルセデスを頑張れば手が届く高級車として大きく認知させた功績は大きい。これは日本だけでなく世界的に見ても大貢献。
この190シリーズが1993年デビューのCクラスとなり現在に至るまで、メルセデスベンツの主力モデルとなっている。
ユーザーのすそ野を広げたという点では、3代目Aクラス、初代CLAの果たした役割は大きい。
初代、2代目で苦戦したAクラスは先代の3代目でハッチバックにコンセプトチェンジ。スポーティかつユーティリティ性の高さ、買い得感の高い価格で大人気
Aクラスは初代、2代目とも苦戦を強いられてきた。初代のエルクテストの影響で発売が延期になったことも大きいが、何よりもユーザーがAクラスにメルセデスベンツとしての魅力を感じなかったのが要因と思われる。
3代目Aクラスについては、初代、2代目のハイトワゴンというコンセプトと決別し、Cセグメントのハッチバックとして生まれ変わった。これが奏功して、メルセデスの販売面を大きく底上げしたことは言うまでもない。
いっぽうCLAは小さな高級車ということがウケて、セダンに加え派生モデルを続々と登場させてメルセデスベンツの新たな世界を構築した。
高級車メーカーとしてイメージが定着しているメルセデスだが、失敗もあったが、ブランドイメージをキープしたまま、下へのラインナップ拡張することができたのが大きい。
2013年に本国での発売した直後に日本導入されたCLA。コンパクトなプレミアムセダンとしてメルセデスの新たな価値観を提案したモデルで、派生車も多数
絶大なる信頼感
メルセデスベンツが日本でも強い理由に、ベンツ=ハイクォリティ、ベンツ=安全というイメージが定着している点も見逃せない。ハイクォリティなクルマ、安全なクルマはいっぱいあるが、メルセデスベンツ推しの人は多い。
丸4灯ヘッドライトで登場して衝撃を与えた2代目Eクラス。しかしメルセデスらしくないコストダウンによりクォリティが下がり大ピンチ
Mクラスは1998年から日本で販売を開始。ベンツが作った街中、オフロードともに快適に走れるSUVとして鳴り物入りでデビューしたがクォリティが低くて低迷
盤石に見えるメルセデスベンツにもピンチはあった。
2代目Eクラスはクォリティが著しく低下し、メルセデスらしくないと指摘されたモデルだ。当時はアウディがハイクォリティを追求していたこともあり、メルセデスのブランドイメージを大きく傷つけてしまった。
1998年から日本で販売を開始したMクラスはメルセデスベンツが初めてドイツ以外で生産したモデル(アメリカで生産)として話題になったが、こちらもクォリティ面で大きな問題を抱えていた。
メルセデスベンツは、1つのモデルをじっくりと改良して熟成させる手法を常套手段としていたが、フルモデルチェンジ並みに改良したマイナーチェンジモデルを投入するようになったことで、魅力が長続きするようになった。
現行Cクラスは2018年に6500箇所にも及ぶ大幅改良を受けたし、Eクラスも大幅改良モデルがすでに発表されているので、日本にも近いうちに導入されるだろう。
Eクラスの大幅改良モデルはすでに本国で発表されている。Cクラスに負けず劣らず改良を施していて、そう遠くない時期に日本導入されるだろう
この大幅改良による熟成という点では、最大のライバルであるBMWはもちろんVW、アウディをも凌駕している。
当然現代のクルマとしては必須の最新安全装備も頻繁に改良&アップデートされているので、ユーザーのメルセデスベンツに対する信頼感は絶大なのだ。
日本車との価格差が小さくなった
これはメルセデスベンツだけではなく、輸入車全体に言えることでもあるが、1990年代に比べて輸入車と日本車の価格差が小さくなっている。
搭載されるエンジンなどが違うため単純比較はできないが、メルセデスベンツのC、EクラスセダンをレクサスIS、GSと比べてみる。
Cクラスは489万~686万円 ISは480万1297~651万7500円、Eクラス(4MATIC除く)は734万~875万円、GSは588万8056~860万2407円というように、このクラスの価格帯のモデルを選ぶユーザーにとっては充分許容範囲の差と言える。
ラインナップ豊富で、クルマのイメージもいいメルセデスが価格的にもターゲットの範囲内に入るとなれば、日本で販売を伸ばしているのはある意味当然なのかもしれない。まさに日本車にとっても驚異の存在となっている。
Cクラスは2018年の大幅改良で安全装備もアップデートするなど常に魅力的な存在であり続けている。価格もレクサスISとあまり変わらないのも人気の要因
【メルセデスベンツの主要モデルの価格(AMG除く)】
■Aクラスハッチバック:337万~410万円
■CLAクーペ:446万~539万円
■Cクラスセダン&ワゴン:489万~668万円
■Eクラスセダン&ワゴン:734万~1159万円
■Sクラスセダン:1192万~2449万円
■GLA:422万~543万円
■GLC:700万~787万円
■Gクラス:1192万~1623万円
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