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【試乗】日産セレナ e-POWERは、電気による力強い走りと高い静粛性が光るミニバン

掲載 更新 4
【試乗】日産セレナ e-POWERは、電気による力強い走りと高い静粛性が光るミニバン

日産は2023年4月20日、ミドルサイズミニバン セレナに電動モデルの「e-POWER」が加わった。すでに2万5000台以上が受注された話題のクルマを試乗する機会を得たため、レポートする。

まずは売れ筋グレード「ハイウェイスターV」からチェック
新型セレナ e-POWERのグレード構成は全部で4つ。親しみ深いプレーンな印象をもつ「X」と「XV」、売れ筋モデルの「ハイウェイスターV」、そしてe-POWER専用の最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」だ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

その中で今回、試乗できたのは、ハイウェイスターVとルキシオンの2台。まずはハイウェイスターVからハンドルを握った。実はこのグレード、現在の受注状況ではe-POWERモデルの中で約8割を占めている。最も注目度の高い1台だけに、その完成度が気になるところだ。

乗り込んですぐにわかるのが、先代モデルから大幅に向上したインテリアの上質感。同社のアリアやサクラといったBEVに通ずるデザインが特徴だ。運転席に乗り込んだ時の圧倒的な開放感は、サイドウインドウが前方に向かって下がっていくセレナの伝統に則ったものだが、新型にもしっかり継承されているのが嬉しい。

さて、セレナ e-POWERを始動する。ハンドル左奥にあるイグニッションを押すと、眼前のディスプレイにはノートやアリアと同様に、バンダイナムコのサウンドクリエイターによって制作されたオープニングアニメーションが流れる。バッテリー残量が充分に残っていたので、ここでエンジンが目覚めることはない。当然のように、室内は静かなままだ。

セレナでは初めて、スイッチ式電制シフトを採用している。まるでゲームをスタートさせるようにDレンジに切り替えてアクセルを軽く踏むと、するすると滑らかに走り出した。コンパクトクラスのノートe-POWERでは少し気になった、走り始めた時に聞こえる車両接近通報装置の音は、セレナでは耳を澄ませないと聞こえないほど静かだ。

走り出してアクセルを少し深めに踏むと、エンジンが目覚めてバッテリーへ発電を始める。先代モデルから排気量が200ccアップした新開発の1.4L e-POWERエンジンは非常にジェントルで、振動や唸り音がしない。このあたりですぐに先代モデルからエンジンの静粛性が大幅に進化したことがわかる。ラジオや音楽をかけて運転していると、エンジンがかかってもその存在に気づくことは難しいだろう。

最大トルク315Nmを発生するe-POWERは、いつでもレスポンスよく反応する
新型セレナ e-POWERの駆動モーターは、最大315Nmのトルクを発生する。電気モーターはいつどこでアクセルを踏んでも、この315Nmのトルクを路面に伝えることができるため、アクセルの踏み込みに対してレスポンスよく反応してくれる。

一方で、これまでのe-POWER車に感じたような鋭い加速力は感じなかった。ただし開発者によれば、それは意図的な制御によるものだという。

新型セレナでは、クルマ酔いのしにくさを開発の主眼のひとつにしていて、体が揺られにくいように加減速をなめらかになるように開発したとのこと。確かにその効果をどの席に座っても感じることができた。揺すられ感はなく、フラットな乗り心地を実現していた。

粛々と走り出してからほどなく、クルマのペースを上げても静粛性の高さは健在だった。必要に応じて発電のためにエンジンが始動するがやはり、エネルギーモニターを確認しないと気づかない。エンジンまわりの効果的な吸音材の配置に加え、フロントウインドウに採用した遮音ガラスが効いているようだ。

試乗会場を出て少し進むと、勾配のきついワインディングロードが現れた。ここで光るのが新型セレナのハンドリングの良さだ。日産のミニバンで初採用のラックピニオン式電動パワーステアリングは、ノートやエクストレイルと比べてはっきりと軽い操舵力にも関わらず、しっかりした手応えが感じられる。そのフィーリングは、とても質感が高い。

ワインディングでも、乗り心地はクリーンですっきりとした印象を保つ。ハイブリッド車によくある車体の重さを良い意味で感じさせず、段差やマンホールを乗り越えた時も嫌なショックは感じない。ただし、3名乗車だったため相対的に後ろが軽かったこともあり、時折リアから伝わる微振動が気になったことはお伝えしたい。

次に席替えをして、ハイウェイスターVの2列目シートに座る。セレナ e-POWERに待望の「スマートマルチセンターシート」が装備された。実は先代のe-POWERモデルには装着できなかったため、待っていた人も多いのではないだろうか。これによって、新型セレナe-POWERはルキシオンを除き8人乗りが設定できるようになった。

広々とした室内空間はセレナの特筆ポイントのひとつ。Mクラスミニバンでトップの後席空間は、一度ぜひ体験してほしいところだ。バッテリーがあるとは思えないほど、シートアレンジが自由自在なのもセレナe-POWERの魅力のひとつだ。

プロパイロット2.0を採用する最上級グレード。運転席が特等席かもしれない
次は、新型セレナ e-POWERにのみ設定される最上級グレード「ルキシオン」に試乗した。

ルキシオンは12.3インチの大型ナビゲーションや、スマートキーのボタン操作によって無人の状態で車両を動かすことができるプロパイロットリモートパーキングに加えて、高速道路でハンズオフ走行が可能なプロパイロット2.0まで標準装備する豪華仕様だ。この試乗を、先に乗ったハイウェイスターVとの違いに触れながらレポートする。

エクステリアに関しては、ほとんどハイウェイスターVとの違いを見つけることができなかった。フロントのフェンダーフィッシャーがダークサテン塗装されているのと、ルキシオンの名前が刻まれたエンブレムがリアに装着されている程度。あとはプロパイロット2.0の採用によってルーフに専用のアンテナが装着されている程度だ。

一方で、インテリアに目を向けると違いは明確だった。もちろんデザインは共通だが、インパネまわりの高級感は1クラス上に感じた。ノートとノート オーラのような雰囲気の違いを確認することができた。

クロスステッチ加工されたドアトリムや、大型のセンターコンソール、木炭のような黒い木目柄のインストゥルメントパネルといった「上級アレンジ」の数々は、いずれもルキシオン専用。シックで落ち着いたインテリアは、先進性も伴ったモダンな雰囲気を漂わせていた。

始動から発進までの振る舞いは、ハイウェイスターVと同様の印象で、こちらも音を出さずになめらかに走り出した。しかし、幹線道路に出て少しペースが上がってきた時に、ハイウェイスターVとの大きな違いを感じる。それは車速を上げた時の静粛性の高さだ。

ルキシオンにはフロントガラスに加えて、フロントドアガラスにも遮音ガラスが採用されている。この効果が絶大だった。風切り音や対向車とすれ違った時の音が、先ほどのハイウェイスターVと明らかに抑えられていた。また、ルキシオンには専用のブリヂストンのタイヤが装着され、これによってロードノイズもより静かに感じた。

次に再び席替えをして、2列目に座った。走り出すとやはりハイウェイスターVよりひとクラス上の上質感を感じた。静粛性の高さはもちろんのこと、ルキシオンにはキャプテンシートが採用されているのだが、これが快適だった。ちなみにキャプテンシートの採用によってこちらは7人乗りのみの設定となる。ただし、こちらもハイウェイスターVと同様にリアまわりの微振動が気になった。このあたりは今後に期待したいところだ。

ルキシオンだけが備える先進性には、選ぶ価値が十分にある
高速道路では、ルキシオン最大の特徴であるプロパイロット2.0の真価を試すことができた。

プロパイロット2.0は、ナビゲーションと連動したルート走行を行い、状況に応じて同一車線内のハンズオフ走行を可能にする機能だ。この機能を初搭載したのはスカイライン、2番手のアリアに続き、セレナが3車種目となる。

実は筆者はこのたび、プロパイロット2.0は初体験。日産のコマーシャルで松たか子さんが驚いていたような反応はできるのだろうか。

まずACCをセットすると、始動音とともにACCモニターが緑色で表示される。その後10秒経たない程度で画面が青色に変化した。ここがハンズオフ可能になった合図だったが、筆者はこれを知らずにその後もしばらくハンドルに手を添え続けてしまった。なぜならハンズオフが開始された時に、音による知らせがなかったからである。

しばらくして、手を恐る恐る離すと、不安感をまったく感じさせずにクルージングが続いた。思わず「すごい」と声に出してしまった。時折、前方に注意を呼びかける警告が出たが、その反応が正確なことにも驚いた。新型セレナに搭載するプロパイロット2.0のドライバー監視モニターはAピラーに配置される。これによって、視認性を高めるだけでなく、マスク装着時の認識性能を向上している。

もっとも感心したことは、ハンズオフができることではなく、クルージング時の正確なアシスト性だ。

車線内をビシッと捉えてトレースしていく様子は、なにより安心感がある。セレナの操安乗心地/制動性能実験グループの主担を務める松井氏によると、プロパイロット2.0を背の高いミニバンに採用するにあたって、走行中のドライバーへの安心感や車体の安定感を特に重視したという。その効果を実際に感じることができた。

ルキシオンは、ハイウェイスターVと比べて特に運転したときの満足感が大きかった。前席の高い静粛性に加えて、ルキシオンでしか得ることのできない先進機能を味わうのは、ハンドルを握る者の特権だ。

今回は試乗会の参加だったため、燃費性能や長距離走行の快適性などを体験することができなかった。一方で、短い時間ながらもセレナe-POWERの進化ぶりを大いに感じることができた。特にエンジンの存在を感じさせない静粛性と、気持ちの良いハンドリングはぜひ実際に試乗して確認していただきたい。

今回のセレナe-POWERは、歴代モデルたちが持っていたセレナならではのユーティリティの高さや運転のしやすさに加えて、ひとクラス上の上質感と、世界でもトップレベルの先進安全装備を持ち合わせている。実際に、新しいセレナを注文する人の中には、オデッセイやエスティマなどのLクラスミニバンからの乗り換えも少なくないという。

そしてこの魅力の増した新型セレナe-POWERを、存分に味わいたいのならば、ぜひルキシオンを選択したいところである。

[ アルバム : 日産 セレナ e-POWER はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • 日産はトヨタのようにエンジンとモーターを上手く制御する技術がない。
    イーパワーは妥協の産物で高速燃費が悪い欠点の多いシステム。
    ものがわかる人はノアやヴォクシーを選ぶ。
  • ドッカン加速(120km)
    離すとドッカン減速(20km)
    事故増
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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