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三輪車と侮るなかれ! モーガン 3ホイーラーで味わう唯一無二の硬派な魅力【Playback GENROQ 2020】

掲載 更新 5
三輪車と侮るなかれ! モーガン 3ホイーラーで味わう唯一無二の硬派な魅力【Playback GENROQ 2020】

Morgan 3 Wheeler

モーガン 3ホイーラー

コーナリング性能はクーペを凌駕!? アストンマーティン ヴァンテージ ロードスターが魅せる「洗練度」

由緒正しき、禁断の1台

ハンドビルドにこだわるモーガンを象徴するモデルが3ホイーラーだ。フォルムはほぼそのままに現代の技術を落とし込んだ最新モデルがついに登場した。S&S製2.0リッターエンジンとマツダ製5速MTを搭載した3ホイーラーを堪能してきた。

「一度その魅力に触れてしまったら、凡庸なスポーツカーには戻れない」

近頃はキャンプがブームなのだという。都会の駅の真上にそびえ立つタワマンでこの上なく便利な暮らしを享受している現代の男子が、たまに少しばかり野性的な時間を過ごすというのはバランスが良いのかもしれない。

だがあなたがやっているそのキャンプとやらは、果たして本物だろうか? 高い道具をしこたま買い込んで一泊の代金が高級ホテルと同じくらいになってはいないか? 「キャンプ場にウーバーイーツ来てくれないかなぁ」なんて星空の下でスマホを覗き込んでばかりいないか?

これと同じことがクルマの世界でも起きている。「ハイ、メルセデス」といえば何でも言うことを聞いてくれる執事のようなSUVに飽き飽きしてスポーツカーを買ってみる。ところがペダルは2個しかなく、ACCも賢く、スマホとの連携もバッチリで、実はスポーツ的な要素は何もなかった、というオチだ。

「冷凍マンモスのDNAから生まれたクローンのような、この上なく由緒正しい1台」

生易しいキャンプの世界に絶望した今どきのアウトドア男子が目指すのはブッシュクラフトと呼ばれるキャンプスタイルだ。サバイバルナイフ一本で薪を作って火を熾し、動物を絞め皮を剥ぎその肉を喰らう。

クルマの世界でブッシュクラフトに相当するワイルドな世界観を持ち合わせているのは戦前のヴィンテージカーか、新車ならばモーガン 3ホイーラー以外には存在しない。

バイクの世界には車輪をひとつ追加して3輪車にしてしまえば、映画イージーライダーの世界よろしく「ノーヘルでオッケー」と喜んでいる人がいる。けれどモーガンのそれは4輪車から1輪を取り去ってしまった変わり種ではない。1910年創業のモーガン社の歴史年表的には3ホイーラーの方が先。つまり21世紀に突如として誕生したように思われている3ホイーラーは、実は冷凍マンモスのDNAから生まれたクローンのような、この上なく由緒正しい1台なのである。

「このスタイルは伝統的なものなので好き嫌いを論じるべきものではない」

2011年に復活したモーガンの3ホイーラー。そのパワートレインは車体前方から、バイク→クルマ→バイクのような構造になっている。剥き出しのエンジンは見ての通りのVツインで、これはハーレーダビッドソンのチューニングパーツも手掛けるアメリカのS&S製のユニットとなる。2.0リッターVツインの背後に備わる5速MTのギヤボックスはマツダ製のロードスター用。そこからプロペラシャフトが伸び、ファイナルユニットからコッグドベルトを介してリヤの1輪を駆動する。

車体の形状は張り出したフロントタイヤのおかげで頭でっかち尻すぼみに見えるが、これは伝統的なものなので好き嫌いを論じるべきものではない。クルマが思いっきりクラシカルにコスプレしている感じなので、乗り手も「毒喰らわば皿まで」の精神でコスプレすると、100年くらいタイムスリップできて面白い。

「体感馬力は82psの5倍くらいには感じられる。つまり、けっこう速い」

モーガン 3ホイーラーのコクピットは、マクロ的に観てもミクロ的に寄ってもまるで戦前の軽飛行機の如し。ゴーグルを頭に掛け、ジャケットの襟を立てて狭いシートにすっぽりハマると、スタジオジブリっぽい見た目が完成する。ダッシュ中央にあるスターターボタンを押し込むと、電子制御燃料噴射式であるにもかかわらず、ずいぶんともったいぶってからVツインが爆ぜはじめる。

「いつかはアメリカンバイクにも乗ってみたい!」と思いつつ原付免許しか持たず、まるで実現する気配のない筆者のような人間にとっては、またとないハーレー疑似体験だ。

Vツインのパワーは「たったの82ps」しかない。けれど車重も500kgちょっとしかないのだ。しかも上半身剥き出し、フロントウインドウも実質ナシなので体感馬力は82psの5倍くらいには感じられる。つまり、けっこう速いのである。

「本当のスポーツドライビングの世界がモーガン 3ホイーラーにはある」

しかもギヤがクロスしているのかすぐにシフトアップをせがんできて左の手足が忙しない。走行風は寒く、今の季節は花粉も容赦ない。夏は拷問に違いないし、秋だって暑いか寒いかのどちらかだろう。冬は言わずもがな。だがしかし、現代人が忘れてしまった、もしくはハナッから知らない本当のスポーツドライビングの世界がモーガン 3ホイーラーにはある。フェラーリやポルシェなら、FSWの100Rに死ぬ気で飛び込んだ瞬間にしか味わえない格闘のようなシークエンスが、タウンスピードのレベルで体感できるのだ。

ではコーナリングはどうか? すばらしく良くなっている。筆者は復活初期の個体にも試乗したことがあるのだが、まったく曲がりたがらない手ごわいシロモノだったという記憶しかない。しかもアシは硬く、パイプシャシーは剛性感がいまひとつで印象が良くなかった。ところが現行型はかなり改良が加えられており、しなやかにロールし素直に曲がるようになっているではないか。

「このクルマこそ禁断にして究極の1台だ」

しかもリヤの駆動輪がひとつしかないということは、4輪に例えるとロック率100%のLSDが入っているに等しいのである。だから鼻先を軸にしたドリフト定常円旋回など朝飯前。ウエットのサーキットを攻めたら、ゲップが出るくらいドリフトを楽しめること間違いなしだ。

口さがない人は3輪で何の快適装備もないのに800万円(たぶん乗り出し価格はもっとする)は高い! なんて言う人もいるだろう。けれどモーガン 3ホイーラーの真のポテンシャルを知ってしまったら、もう普通のスポーツカーでは満足できなくなるだろうし、価格もリーズナブルに感じるだろうし、納期が長くても黙って待てるはず。このクルマこそ禁断にして究極の1台だ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

モーガン 3ホイーラー

ボディサイズ:全長3290 全幅1740 全高1105mm
ホイールベース:2390mm
車両重量(Dry):585kg
エンジン:S&S製V型2気筒
総排気量:1979cc
ボア×ストローク:108×108mm
最高出力:51kW(69ps)/5200rpm
最大トルク:129Nm(13.2kgm)/2500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後カンチレバー
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ドラム
タイヤサイズ:前4.00/19 後175/65R15
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:7秒
車両本体価格:781万円

※GENROQ 2020年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

5件
  • モーガン本社のアナウンスでは、この3ホイーラー
    今年夏に33台の限定仕様車を製造して、全ての生産を終えるとのこと。
    しかしそのアナウンスメントの終わりに、いずれ戻ってくる!とのコメントが…
    次期3ホイーラーがどうなるのか定かではありませんが…(もしやEVか!?)
  • その昔、この車を速く走らせるには「手が3本必要」と言われていた。

    復刻前の『3ホイーラー』には、ハンドルに「スロットル」「進角(点火タイミング)」「チョーク」の3つのレバーが付いていた。

    まず、チョークは基本始動時に使うだけなので、コレはいい。

    問題は、スタートしてから。

    まず右手でスロットルレバーを開いて行く。エンジンの回転数が上がってスピードに乗って来ると、そのままの点火タイミングではパワーが出ないから、左手で点火時期を早める操作をすると同時に、やはり左手でシフトアップを行う。

    次に、前方にコーナーが迫ってきた場合、今度はまず右手のスロットルを戻すのだが、高回転向けに早まった進角のままのエンジンは早々愚図りだすから、その音を感じたら左手で点火時期を遅らす操作をしながらやはり左手でシフトダウン、同時にハンドル操作を行う・・・

    足でアクセル操作なんて、夢のようだ!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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