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アウディ A8とS8、ハイエンドサルーンの現在地。ラグジュアリーとスポーツを内包する最上級サルーンの格式とは

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アウディ A8とS8、ハイエンドサルーンの現在地。ラグジュアリーとスポーツを内包する最上級サルーンの格式とは

ラグジュアリーとスポーツ性能は一見相反するものに見える。しかしアウディにとってはそうではないようだ。それはA8とS8のハンドルを握り、2台とじっくりと向き合えば見えてくる。(Motor Magazine 2022年9月号より)

進化した走りと使い慣れたしつらえで、車内は極上の空間
前後の意匠をアップデートするとともに、マイルドハイブリッドなどを装備して最新の排出ガス規制に適合させる・・・。最近のアウディは、この手の、どちらかといえば地味な内容のマイナーチェンジを施したモデルが少なくない。

アウディ A8が3年大幅アップデート。新型S8とともに、トラディショナルなプレミアムサルーンの理想を極める

ところが、いざ乗ってみると、乗り心地や静粛性が格段に向上していて目を見張らされるケースがほとんど。要は排出ガス規制対応に乗じてクルマの本質的な部分の熟成を図っているのだが、A8とS8もその例に漏れなかった。いや、ブランドのフラッグシップに相応しく、その進化の歩幅は飛び抜けて大きかったというべきだ。

マイナーチェンジの内容は前述のとおり、シングルフレームグリルのデザインをより存在感の強いものに改めたことが主な相違点。プレスリリースでは48Vマイルドハイブリッドシステムの装備が大きく扱われているが、日本仕様のA8は、2018年に第4世代に生まれ変わったときから全モデルがMHEVとされていた。

細かいところでは、プレディクティブ アクティブサスペンション搭載モデルのドライブセレクトに用意されていたショーファーモードが、「コンフォート+」という名に改められた。これはカメラで路面を読み取り、エアサスペンションや電磁アクチュエーターの設定を瞬時に制御するものだが、初めて世に出たのは第4世代がデビューしたタイミングで、S8に標準装備、A8にオプション設定となる点も従来型と同様である。

ところが、実際に試乗してみると、前述のとおり目覚ましい進化を遂げていたのだ。

たとえばA8は、路面のゴツゴツ感を一切伝えない足まわりのしなやかさはそのままに、従来型でやや気になった車輪の位置決め精度が格段に改善されて、スッキリとしたハンドリングを手に入れていた。高速道路ではフラット感が物足りなかったコンフォートモードが、ボディを穏やかに水平な姿勢に保つようになったことも新型の美点。これならハーシュネスとフラット感を天秤にかけて、コンフォートとオートを行ったり来たりする手間も省けるはずだ。

静粛性も大幅に高まった。とくに印象的なのが低速走行時の静けさ。一方、高速道路でのロードノイズはもう少し抑えて欲しかったが、これは試乗車が21インチタイヤをオプション装着していたことと関係がありそうだ。

インテリアのしつらえは基本的に従来型と同じ。目新しさはないものの、それゆえに心が安らぎ、ゆったり寛げる空間といえる。リアシートの居住性にも大きな不満はない。それどころか、後席のみ座面にソフトなクッションを用いるといった、きめ細やかな心配りが認められた。

S8はスポーツ志向だが最上級車の品格は健在だ
もう1台のS8は、エンジンをかけた瞬間からスポーティモデルであることを強く意識させる。エキゾーストノイズがA8より明らかに勇ましいのだが、かといってフラッグシップサルーンの品位を汚すほどうるさかったり下品だったりはしないのでご安心を。アイドリング時の鼓動がA8より力強い点もS8の特色だ。

乗り心地はA8よりもソリッド。後席のクッションもA8とは違って前席と変わらない硬さだが、それでもサルーンとして使うことに躊躇を覚えない快適性だ。この辺の二面性というかスポーツサルーンとしての奥深さが、S8のもうひとつの特徴といえる。

しかし、快適性に対するほんのわずかな犠牲が、ワインディングロードではこの上ない喜びをもたらしてくれる。ダイナミックモードを選べばコーナリング中のロールは最小限に留められ、レスポンスのいいハンドリングを味わえる。

そんなときに、腰高感を一切感じさせることなく、むしろコーナリングのたびに車高が沈み込んでいくかのような安定感を示すのがアウディならではの美点。したがって、ある程度までペースを上げたときに「ああ、これ以上は楽しくないだろうな」とサジを投げるのではなく、「もっとコーナリングを楽しみたい」と思わせてくれるのだ。

BMWで例えるなら、(先代の)M760iよりもアルピナB7に近いといえば、わかっていただけるだろうか。

こうした基本的なキャラクターはA8にも共通するが、ハンドリングのレスポンスは、さすがにS8に一歩及ばない。つまり、快適性を重視するか、コーナリングの喜びを求めるかで、チョイスは分かれるはず。ちなみに、どちらを選ぶか問われれば、個人的にはA8のパフォーマンスで十分以上と感じたので、快適性に優れるA8を選ぶことだろう。

昨今はSUVやミニバンをサルーン代わりに使うケースが少なくないが、やはり本物のセダンには風格と格式の点でかなわない。積極的な走りを楽しめるところも、背が高いモデルには求め得ない魅力だ。端正なスタイリングと心地いいスポーツ性を備えたA8とS8には、そうしたラグジュアリーサルーンの本質がギッシリと詰まっているように思う。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

アウディ A8 60TFSIクワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:5190×1945×1470mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3996cc
●最高出力:338kW(460ps)/5500rpm
●最大トルク:660Nm(67.3kgm)/1850-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・82L
●WLTCモード燃費:8.0km/L
●タイヤサイズ:265/40R20
●車両価格(税込):1635万円

アウディ S8 主要諸元
●全長×全幅×全高:5190×1945×1475mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2260kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3996cc
●最高出力:420kW(570ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2050-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・82L
●WLTCモード燃費:8.2km/L
●タイヤサイズ:265/35R21
●車両価格(税込):2050万円

[ アルバム : アウディのハイエンドサルーンA8/S8の現在地 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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