MG RV8の80%は日本へ輸入された
執筆:John Evans(ジョン・エバンス)
【画像】80%が日本へ輸出されたMG RV8 MGB GTとMGFも 全54枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
AUTOCAR英国編集部がMG RV8へ試乗したのは、1993年だった。「時代錯誤な面もありますが、不思議と好感が持てます」。と、当時の印象が結論づけられている。
リアのサスペンションはリーフスプリングで、ブレーキはドラム式。ウッドとレザーのインテリアは、まさにオールドスクール。一方で前後のトレッドは広く、エンジン制御システムは現代的なものが載っていた。
インジェクション式の3.9L V型8気筒エンジンは、オールアルミで192psと32.4kg-mを発生。FRで、クワイフ社製のLSDも組まれていた。確かに好感が持てそうだ。
MG RV8を特に好んだのが日本人。1992年から1995年に製造された約2000台のうち、80%の1600台ほどが日本へ輸出されている。海を渡ったMG RV8の多くにはエアコンが載り、ボディはウッドコート・グリーンという色で塗られた。
日本人が乗り飽きた頃、英国人が逆輸入。800台ほどが戻ってきており、現在の中古車市場で流通している。
MGがRV8を作ろうと考えたのは、ローバーのヘリテージ部門がMGBのボディシェルをレストア用に再製造したのがきっかけ。マツダMX-5(ロードスター)の登場で、2シーターのオープンスポーツカーという需要があることは明白だった。
ローバーも独自モデルを作ろうと考え、1990年代版のMGBを開発するに至る。V8エンジンを搭載しつつ、可能な限りMGBの部品を利用する方向で設計が進められたが、結果的に用いられたのは全体の5%程度。見える部分としては、左右のドアくらいだ。
ドアはMGBと同じ 5速MTは2種類ある
開発費用の上限は、500万ポンド。結果としてMG RV8には古いMG譲りのリーフスプリング・サスペンションとドラムブレーキが採用されている。
一方、同時期のTVRキミーラは、RV8と同じV8エンジンの4.0L仕様を搭載。前後に独立懸架式のサスペンションとディスクブレーキを備えていた。価格もRV8より安価で、優れるライバルとしてしばしば比較された。
英国ではRV8の評価は振るわなかったものの、日本市場は大歓迎で迎えてくれた。ローバーにとっては、予想外のうれしい反応だったに違いない。そのおかげで現在の英国では、里帰りした状態の良いMG RV8を選べる。
日本仕様の場合、整備履歴や所有履歴を辿ることは少々困難。ウッドコート・グリーンという色も英国人にとっては魅力に欠け、英國仕様より価格はわずかに安い。
新車時に英国人が買ったRV8は、オックスフォード・ブルーやナイトファイア・レッド、ルマン・グリーン、ブリティッシュレーシング・グリーン、ブラックといった、多彩な色で仕上げられている。人気は高いが、数は少ない。
RV8の5速MTには、2種類が存在する。初期型のRV8に乗っていたMTは、ローバーSD1の改良版で、LT77S型と呼ばれる。生産が進み、途中からR380型と呼ばれるユニットに置き換わった。
MTの違いを見極めるのは簡単。LT77S型の場合はリバースが左側にある。R380型では右下だ。
詳しく見るほどに、他にも多くの特長を発見できるMG RV8。今という時代だからこそ、好感を持つ読者も多いのではないだろうか。
専門家の意見を聞いてみる
ウィリアム・デ・ラ・リヴィエール:ビーチ・ヒル・ガレージ社代表
「MG RV8は、フリルの付いたレザーシートに、ウッドパネルのダッシュボードを備えた、ラグジュアリーなモデル。多くのオーナーが屋根付きのガレージに保管し、晴れた日にしか運転していません」
「エンジンとトランスミッションは信頼性が高いですし、亜鉛メッキされたボディも錆びにくい。組み立て品質も高いといえます」
「もしパワーが欲しいなら、英国にはECUのリマッピングをしてくれる店もあります。400ps近くまでは可能なようですが、リーフスプリングのリアサスは、そこまでのパワーを受け止めきれません」
「著しく安い例には注意が必要でしょう。先日、同僚が掘り出し物を見つけたといって、安いRV8を購入しましたが、まだ修理は終わっていません。すべてのRV8が、大切にされてきたわけではないようです」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
低圧と高圧の潤滑系統の状態を保つため、少なくともエンジンオイルは毎年交換したい。粘度は10W-40で、半合成以上の高品質なオイルが良いだろう。購入前にエンジンオイルの状態チェックは忘れずに。
エンジンを始動して、エグゾースト・マニフォールドからの排気漏れがないか確認する。
冷却系
アルミ製のエンジンだから、腐食を防ぐためにも高品質なクーラントが不可欠。オーバーヒートは避けたい。アイドリング状態で、温度が上昇しすぎないか確認する。
吸気マニフォールドのボルトから、クーラントが滲んでいないか確かめる。エキスパンション・タンクや、ラジエターの下部が湿っていないかも確認したい。
トランスミッション
可能なら、牽引された過去がないか確かめたい。トランスミッション内に牽引状態では動作しないフルードポンプがあり、長距離牽引してしまうと内部を破損する恐れがある。
クワイフ社製のLSDは、フルードの状態を確かめたい。推奨品はシルコリン社の全合成で、75W-90 GL5という、トランスミッション用フルードだ。
ステアリング、サスペンションとブレーキ
ステアリングラックのマウントにヒビがないか検査したい。サスペンションのスプリング、ショックアブソーバー、ブッシュ類の劣化状態も確かめたい。多くのMG RV8は、アップグレードされているようだ。タイヤの製造年もチェックポイント。
ボディ
フロントガラス周辺のピラーの付け根などに、サビが浮いていないか確認する。ソフトトップの劣化具合も確かめたい。
インテリア
シフトノブの状態を確かめる。多くの場合、木製ノブに交換されているようだ。ダッシュボードは日光でヒビ割れしやすい。レザーシートのクリーニングなど、ある程度コストを見ておいた方が気持ち良く乗れるはず。
英国ではいくら払うべき?
1万500ポンド(157万円)~1万6999ポンド(254万円)
英国の場合、日本からの並行輸入のMG RV8が中心。状態が良いとはいえないものも含まれる。
1万7000ポンド(255万円)~1万9999ポンド(299万円)
正規ディーラー車が含まれるが、走行距離はまちまち。内装が仕立て直されていたり、エアコンやパワーステアリングが備わるものも。
2万ポンド(300万円)以上
ブリティッシュレーシング・グリーンのMG RV8など、色がある程度選べるようになる。状態もかなり良いはず。執筆時、1万6000kmの走行距離のMG RV8を、2万3995ポンド(359万円)で見つけた。
知っておくべきこと
MG RV8の部品入手で困っているなら、mgv8parts.comというサイトがオススメ。英語だが、バンプストップなど希少な部品も見つかるだろう。
テールライトはもはや出てこないようだが、サイト運営社は再生産を思案中。手頃な価格で作ってくれる企業を探しているようだ。
英国で掘り出し物を発見
MG RV8 登録:1995年 走行:7万7200km 価格:2万4950ポンド(374万円)
英国で新車時に売れた、ブリティッシュレーシング・グリーンのMG RV8。エグゾーストとサスペンションが改造され、ソフトトップは新品。ミニライトのアルミホイールも新しいという。
インテリアにはシミ1つない様子。ワークショップでの作業明細も一式残っている。パフォーマンスにも期待できる1台だ。
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みんなのコメント
これだけのハイトルクのエンジン積んだら、アクセル暴れるだろうなあ・・・
ステアリングがくそ重い車です。