4月22日、クロアチアで開催されているWRC世界ラリー選手権の2023年シーズン第4戦『クロアチア・ラリー』は、デイ2のSS9~16が行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRTのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が前日の総合2番手から首位に浮上した。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合6番手につけている。
前日21日(金)に競技がスタートした今季最初のフルターマック(舗装路)イベントは、中日のデイ2に突入。この日は首都ザグレブの南西部に設定された4つのステージを午前と午後、ミッドデイサービスを挟んで各1回走行する行程で争われた。デイ1は雨による路面コンディションの変化があったが、デイ2は朝から晴天が広がり終日ドライコンディションが保たれた。
ヌービル「皆が優勝を夢見ていた。チームに謝りたい」/WRC第4戦クロアチア デイ2後コメント
■ラリーリーダーが午前中にデイリタイア
SS17~20が行われるラリー最終日を前に総合トップに浮上したエバンスは、前日の競技終了時点では、首位ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)と5.7秒差の総合2番手だった。迎えたデイ2ではオープニングステージとなったSS9でライバルに遅れを取り、その差が10.5秒に拡大する。
続くSS10でもわずかにギャップを拡げられたエバンスだったが、直後のSS11でヌービルが戦線を離れたことから新たなラリーリーダーとなった。
ここまで快走を続けてきたヌービルは、今大会の新ステージとなったSS11の右コーナーでラインがふくらみ、アウト側の茂みの中あったコンクリートブロックに左リヤをヒット。反動で半回転したあとフロントを立ち木にぶつけコースオフを喫した。アクシデントの後、ベルギー人ドライバーは再始動を試みたが、左リヤのホイールやサスペンションが壊れておりサービスまで戻ることができないと判断した。この結果、開幕3戦の全ラウンドで表彰台を獲得してきたヌービルはここでデイリタイアとなっている。
前年のチームメイトの戦線離脱により総合3番手から2番手に浮上したオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)は、午前中のループを終えた時点でエバンスから22.6秒遅れていた。しかし、日中のサービスを経て迎えた午後のループではウェールズ人を捉えるべく猛追を開始。SS13を2番手タイムでパスし、エバンスとのギャップを6.7秒削る。さらに、続くSS14では今大会2度目のステージベストを記録し、その差を12.5秒とした。
このままエバンスとタナクによる一騎打ちの展開になるのかと思われたが、タナクはSS15で突如ペースダウン。また、デイ2最後のステージでもトップから14.4秒遅れてしまう。この原因はハンドブレーキの不具合にあり、不運なトラブルにより追撃の手を緩めざるを得なくなった。ライバルの“失速”によってふたたびリードを拡げたエバンスはラリー1初優勝の期待を胸に、25.4秒のギャップを持って最終日の4SSを迎えることとなる。
「長い一日だったが、良い順位を得ることができた」とエバンス。
「オット(・タナク)が何かしら問題を抱えたことで少し余裕ができたけど、自分としては満足できない状況だった。このラリーではトラブルを避け、道の上に留まり続けることが大事だ。明日もリスクを管理しながら、いい走りをしなくてはならない」
■ホイールトラブルとペナルティで遅れたオジエが順位を挽回
トップ2台と同様に、チームメイトであるヌービルのデイリタイアによって順位をひとつ上げたエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)は、路面上に掻き出された大量のグラベルによって自信を失いながらも、故クレイグ・ブリーンの追悼カラーをまとうクルマを総合3番手でSS16まで運んだ。彼はSS13でハーフスピンを喫した後、2番手のタナクに40秒近いタイム差をつけられたが、最後のステージで約10秒取り戻したことで、その差は30秒ちょうどとなっている。
ラッピに続いたのは、今季2戦2勝でドライバーズランキング首位に立っているセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)だ。39歳のフランス人はクルーの安全を確保する規定に違反したことで金曜日の夕方に1分間のタイムペナルティを受け、総合7番手からのスタートとなった。また、今朝はロードセクションで発生した技術的な問題を解決するためにチェックインが遅れ、さらに10秒のペナルティが課されている。
しかし、2021年大会の王者はそれらを鬱憤を晴らすかのように好ペースを披露し、SS12とSS13で連続ベストをマーク。さらにSS16でもステージ優勝を飾り、この日4つのSSで最速となったチームメイトのカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)や勝田貴元、さらにはMスポーツ・フォードWRTのピエール-ルイ・ルーベを上回る総合4番手のポジションを得ている。
ラリー1勢の後方ではWRC2クラス首位を守るヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)が総合8番手につけた。11.5秒遅れてニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が続き、WRC2“現王者”エミル・リンドホルム(シュコダ・ファビアRSラリー2)がクラス3番手となっている。
クロアチア・ラリーの最終日となる23日(日)のデイ3は、サービスパークが置かれているザグレブの北側エリアで2本のステージを各2回走行する。SS17からSS20、計4本のSSの合計距離は54.48km。リエゾン(移動区間)も含めた一日の総走行距離は374.52kmだ。なお最終ステージのSS20は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが付与される“パワーステージ”に指定されている。
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