この記事をまとめると
■自動車の軽量化手法として第二次世界大戦以降からアルミニウムボディが用いられ始めた
超高級車って普通に運転できるもの? 庶民じゃ味わえない数千万円クラスの運転感覚とは
■当初はレーシングカーによく採用され、同じ鉄フレームより100kg近く軽くできた
■鉄も進化してきており、必ずしもアルミがいいという状況ではなくなりつつある
なんか凄そうに聞こえる「アルミボディ」の魅力とは
車両の軽量化は、動力性能、運動性能の向上以外に、燃費性能(二酸化炭素の排出)に関しても大きく効いてくることから、自動車メーカーにとっては喫緊の課題となっている。しかし、重量軽減のため、やみくもに軽量化を図ることができないことも事実である。自動車は、走る、曲がる、止まるの基本運動3要素を十二分に満足させるため、その骨格となる車体をしっかりと作っておかなければならないからだ。つまり、車体には強度、剛性が必要不可欠ということである。
車両の軽量化を図るため、車体の基本骨格(現在であればモノコックボディ)やパネル類(フェンダーやドア、ボンネットなど)は軽く仕上げたいが、ボディ材として使用する鉄板の厚みを薄くしてしまうと、今度は肝心の強度、剛性が得られなくなってしまう。
では、どうすればよいのか? 歴史を振り返ると、使用素材という例でこの答を知ることができる。鉄より軽い素材で車体を構成する手法で、この素材がアルミニウムだった。ちなみに、アルミニウムが発見されたのは19世紀初頭で、製錬技術の進歩により、20世紀に入ると航空機で使われるようになっていた。
自動車で積極的に利用されるようになるのは、これより半世紀ほど経った第二次世界大戦後のことで、発端となったのは、やはり軽さがスピードに直結するレーシングカーでのことだった。よく知られた例で言えば、1960年のアルファロメオ・ジュリエッタSZが挙げられる。標準モデルは鉄製ボディだったが、アルミボディに換装したモデルがレースに投入され、勝ちまくる強さを見せていた。それもそのはずで、標準の鉄製ボディ車より100kg以上も軽く仕上がっていたのだから。
クルマ好きの間でアルファロメオのアルミボディ車は有名な話で、ジュリエッタSZ以降もジュリアTZ、ジュリアスプリントGTAなどの存在がよく知られている。GTAは1966年から1969年まで、4年連続でETC(ヨーロッパ・ツーリングカー・チャンピオンシップ)のタイトルを獲得する圧倒的な強さを見せていた。
普及しないのはやっぱりコストの面が大きい
さて、車両(車体)の軽量化に対して大きな効果のあるアルミボディだが、量産車のメカニズムとして広く普及しないのには大きな理由がある。
なんといっても製造コストが高価なこと。そして、成形がむずかしいこと。また、ヘコミやパネル変形の修復作業が難しい(手間がかかる)ことなどが挙げられる。鉄の比重7.8に対しアルミの比重は2.7で重量比に置き換えればアルミは鉄の35%と大きな優位性を持っている。
もちろん、アルミ板材が鉄板材と同等の強度を得るには肉厚を上げなければならず、製品としての重量比較は比重比較のように極端な関係にはならないが、それでも軽量化に関するアルミ材の優位性は変わらない。
実際、ある程度車両コストの増大が容認されるスポーツカーや高級車では、アルミボディ(ホンダNSX、ジャガーXJなど)を積極的に採用したモデルもあり、軽量化の視点で目に見える効果が得られている。ただ、軽量化という視点では、鉄板材でも超高張力鋼板、超々高張力鋼板が実用化され、これまでの鉄板材より軽量に仕上げることが可能となっているため、アルミ材が絶対的に優れているという状況ではなくなってきた。
やはり、自動車に関してアルミ材の使用で大きな問題となるのは、製造、修復も含めてコストの一点に尽きると言ってよいだろう。
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鉄よりも脆くなる