Volkswagen T-Roc × T-Cross
フォルクスワーゲン T-Roc × T-Cross
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個性派コンパクトSUV兄弟、ベストバイを探る:T-Roc編
コンパクトSUVが人気だ。とりわけ日本と欧州、アジア圏では猛烈な勢いでシェアを伸ばしている。取り回しやすくて自由度が高く、開放的なパッケージのコンパクトSUVは、いまやハッチバックに代わる“ザ・ベーシック”と呼べる存在となった。つまり、ベーシックカーづくりの王者といえるフォルクスワーゲンの主戦場ということになる。
T-Roc(ティーロック)に加え、T-Cross(ティークロス)を2021年3月2日に国内での本格販売をいよいよスタートしたいま、2台のコンパクトSUVを日本で展開するフォルクスワーゲンが、それぞれの棲み分けをどう考えているのかは気になるところ。コンパクトカーのメートル原器、ゴルフを作ったフォルクスワーゲンの作る現代的コンパクトSUVの2モデルの個性を、自動車ジャーナリストの山田弘樹はどう見たか。前編・後編に分けてレポートする。
ゴルフに代わる新定番になりえるか
気がつけばフォルクスワーゲンで「T」のイニシャルで始まるクルマは、いつの間にかSUVカテゴリーを意味するようになっていた。日本ではラインナップから外れてしまったがその頂点には「トゥアレグ」があり、そこから「ティグアン」「T-Roc」「T-Cross」という序列になっている。
ということで今回は、2017年に欧州デビューしながらも、ようやく日本上陸を果たした「T-Roc」を、2020年に先行して導入された弟分「T-Cross」と比べながら、フォルクスワーゲンにおけるコンパクトSUVの魅力を紹介してみることにしよう。SUVブームがすっかりスタンダードな選択として定着してきた今、T-Rocは“コンパクトSUV界のベンチマーク”になり得るのか? もっと言えばゴルフに変わる新定番になり得るのか? そんな視点をもって、インプレッションしてみたいと思う。
シロッコの現代的解釈といえるスタイル
というのもT-Rocは、ゴルフ(といっても7代目だが)の骨格をベースとしたSUVである。ちなみにT-Crossは、ポロがベースとなっている。T-Rocのスリーサイズは、全長4240(ゴルフ比-25mm)×全幅1825(同+25mm)×全高1590(同+110)mm、ホイルベースは2590(同-45)mmと、ゴルフに対して単純にひとまわり大きくなっているのではない所が面白い。
つまりユーティリティだけを考えれば「ティグアン(全長4500×全幅1860×全高1675mm、ホイールベース:2675mm)」の方がルーミーであり、T-Rocはクーペスタイル風のコンパクトSUVといえる。いわばディスコンしてしまったクーペ版ゴルフ「シロッコ」の、現代解釈といえるディメンションになっている。
日本で展開するのはディーゼルのみ
このキャラクターを踏まえると、T-Roc(とT-Cross)の魅力はとてもわかりやすい。日本仕様のエンジンは、2.0リッターの排気量を持つ直列4気筒TDI(150ps/340Nm)のみで、駆動方式はFWD。ここに7速DSGを組み合わせる。
グレードはベーシックモデル「TDI Style(16インチ)」から始まり、装備の充実に応じて「TDI Style Design Package(17インチ)」「TDI Sport(18インチ)」「TDI R-line(19インチ)」となっていく。ちなみに今回試乗したのは215/65R17サイズのタイヤを履いた「TDI Style Design Package」だった。
若々しく躍動的なキャラクター
17インチタイヤを履いたT-Rocの走りを端的に表すならば、それは“若さ”と“ポジティブさ”が魅力だと筆者は思う。いや、今の若者がすんなりT-Rocを新車で買えるとも思えないので、むしろいつまでも若くありたいオジサン向けと言えるだろうか? ターゲットはずばり、私を含めた40代後半以上のミドルエイジだろう。
まずその室内に乗り込んでみると、フォルクスワーゲンらしいスクエアな意匠のインパネの中に、整然とモニターやスイッチ類が並べられているのがわかる。試乗車はソフトパッドの中にブルーのパネルがインストールされており、若々しくもクリーンな印象。弟分のT-Crossも同様に樹脂製パネルを使っているが、こちらはソリッドのマット塗装になっている分だけ質感も高く、さほどのコストダウンを意識させない。
重厚さを感じさせる乗り心地
走らせてみるとその乗り味には、価格相応の質感や重厚さを感じ取ることができる。パワーユニットがディーゼルだから、メカニカルノイズは微かだが室内にまで入ってくる。とはいえ静粛性も決して低いわけではなく、これがTSI(ガソリンエンジン車)なら、きちんとその上質感を味わえたのではないかと思う。またボディにも適度な剛性感があり、少し硬めのサスペンションでも初期をしなやかに動かして、その乗り心地をきちんと確保している。
ただこの重厚感にはちょっと不釣り合いなほどステアリングレスポンスが良いことには、少なからず違和感を抱いた。特に高速巡航時にはステアリングをそこそこきちんと保持していないと、ノーズがチョロチョロと動いてしまう。またカーブを走ると、思った以上にクルマが曲がり過ぎる。感覚的にはフロントのキャスターが立っているかのような印象だ。
街中を泳ぐようにクルーズできるT-Roc
そんなときはスポーツモードに入れるか、ACCをアクティブにして電動パワステの抵抗を強めるのも、本筋ではないけれどひとつの手だった。ちなみにACCはアシストの介入が非常に黒子的で、言わなければ気づかないドライバーもいそうなほど少しずつ、じわーっと操舵支援してくる。よって自動運転寄りの強いアシストを期待する向きには少々物足りないのだが、それこそ入っているのか入っていないのかわからないくらいの自然なアシストで、安定性を維持することができる。
なぜフォルクスワーゲンがこんな風に足まわりをセットしたのかは、街中での俊敏性に重きを置いたからではないかと思う。背が高く見晴らしのよいコンパクトSUVで、スイスイと街中を泳ぎ回る。そのためにはステアリングを切って素早く反応するこの特性が非常に有効である。またここにアイドリング+αの領域から最大トルクを発生できるディーゼルエンジンの特性と、7速DSGのダイレクトなレスポンスが加わることで、大きくアクセルを踏み込むことなくスマートなアーバンクルーズが可能となる。
あちこち探検したくなるスニーカー
そんなT-Rocに乗っていると、前のめりというか、前向きな気持ちであちこち探検したくなる。前述の通りディーゼルユニットはそのメカニカルノイズが完全に遮断されているわけではなく、低回転域ではゴロゴロと響くし足裏にもその振動を微かに伝えてくる。しかしこうした雑味など気にせず、グイグイ走らせて楽しむ。高速道路を矢のように駆け抜けるというよりは、スニーカーを履いて街中を駆け巡るような使い方が、T-Rocには似合っている。
願わくば「R-line」に標準となるDCC(アダプティブ・シャシー・コントロール)が、どのグレードにもオプションで用意されれば言うことはない。そうすれば高速巡航時はダンパーがその減衰力を高めて高速安定性を確保し、街中ではこうした軽快な身のこなしを両立してくれるはずだからである。
(後編:T-Cross編に続く)
REPORT/山田弘樹(Kohki YAMADA)
PHOTO/峯 竜也(Tatsuya MINE)
【SPECIFICATIONS】
フォルクスワーゲン T-Roc TDI Style Design Package
ボディサイズ:全長4240 全幅1825 全高1590mm
ホイールベース:2590mm
車両重量:1430kg
エンジン:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
最高出力:110kW(150ps)/3500-4000rpm
最大トルク:340Nm/1750-3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション:前マクファーソンストラット(スタビライザー付) 後トレーリングアーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/55R17
燃料消費率(WLTC):18.6km/L
車両価格:405万9000円
フォルクスワーゲン T-Cross TSI 1st Plus
ボディサイズ:全長4115 全幅1760 全高1580mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:1270kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:999cc
ボア×ストローク:74.5×76.4mm
最高出力:85kW(116ps)/5000-5500rpm
最大トルク:200Nm/2000-3500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット(スタビライザー付) 後トレーリングアーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/45R18
燃料消費率(WLTC):16.9km/L
車両価格:337万9000円
【問い合わせ】
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
TEL 0120-993-199
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みんなのコメント
高速のオンザレール感とか一度乗れば良さは分かると思うんだが、それでもDISられるんだな